茶飲み話[56]

 そもそも「空気を読めない人」なのか、それとも根っからの“自己中”なのか。7月28日、世論の集中砲火を浴びるなかで、ついに防衛大臣を辞任した稲田朋美衆議院議員。31日に行われた防衛省・自衛隊による大臣離任式とやらに出席した▼北朝鮮が大陸間弾道弾を日本近海にぶっ放すなど、周辺状況が不安定さを増しているさなかでもあり、企画した防衛省幹部は「辞退するだろう」と読んでいたようだったが、あにはからんや。ご当人は全く気にならない様子で出席し、防衛省・自衛隊の幹部を前に「風通しのよい組織文化を醸成し、連携強化を図り、一致団結して、いかなる困難な状況にも対応できるようにしてもらいたい」と宣うた▼そして、大臣辞任の引き金となった南スーダンに派遣された陸上自衛隊の日報問題については、「防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を揺るがし、結果として隊員の士気を低下させかねない点で重大かつ深刻なものであった」と、ご自分の責任には一言も触れず、防衛省事務次官や陸幕長が引責辞任したことにも全く無関心の態だった▼離任式の後、儀仗隊による栄誉礼を受け、職員らに見送られて防衛省を後にする際の言葉がまたふるっている。「みなさんは私の誇りです。これからも日本の安全保障のため、一緒に頑張りましょう」と満面の笑顔。しかしテレビ画面で見る限り、見送る職員はみな無表情で拍手していた▼民進党はそんな稲田氏を衆議院安全保障委員会の閉会中審査に出席させ、「日報問題」だけでなく、あれやこれやの責任を追及しようとしている。これに対して自民党の竹下国対委員長は、「(稲田氏は)大臣辞任という最も重い責任の取り方をした」と、国会の中だけでしか通用しない理屈でもって出席を拒否している▼稲田氏は辞任表明の記者会見で、「かねてより辞任の意向を安倍総理に相談していた」と口を滑らしている。稲田氏を閉会中審査に出せば、当人の問題だけでなく、総理の任命責任や「秘蔵っ子」をかばい続けた慰留責任も問われ、落ち目の安倍内閣の傷口をさらに広げることになりかねない。国民に向けて疑惑を晴らすことより、身内を忖度(そんたく)しての出席拒否なのだろう。何とも嘆かわしい。(良穂)[2017/08/02]