茶飲み話[42]

 浜の真砂(まさご)は尽きるとも 世に盗人(ぬすっと)の 種は尽きまじ――。「たとえ海辺に無数にある砂がなくなるようなことがあったとしても、世の中に泥棒がいなくなるようなことはないだろう」という意味である。文禄3年に豊臣秀吉の手勢によって捕らえられ、京都三条河原で一族もろとも釜茹での刑に処された盗賊の首長・石川五右衛門の辞世の句といわれる▼このほど警察庁がまとめた2016年度の特殊詐欺事件による被害総額は406億3000万円で、前年比75億6800万円、率にして15.7%の減少だったという。「オレオレ詐欺」などの大口被害が5%減の166億円で7年連続の減少。パソコンやスマホをツールにした「架空請求詐欺」も16%、158億円減少している▼これについて警察庁は、「だまされた振り作戦での摘発や宅配便対策などの強化で、犯人側がリスクを回避しての結果ではないか」と分析している。しかし、2014年の565億円余りをピークに2年連続で減少したとはいえ、406億円といえば「とてつもない金額」であり、まだまだ高水準で推移していることに議論の余地はない▼オレオレや架空請求が減っているなかで、急増しているのが市役所などの担当職員になりすましての「還付金詐欺」。税金や医療費など取りすぎた分を払戻すなどの口実で、高齢者をATM(現金自動預払機)に誘導して現金を振り込ませる手口である。還付金詐欺被害は前年比67%、43億円も増え、件数でも55%、3682件も増えている▼相変わらず被害者の多くは65歳以上の高齢者(?)で、400万人増の1万1041件人、全体の8割近くに及んでいる。退職者連合は2013年から警視庁が進めている「特殊詐欺根絶アクションプログラム」に参加し、学習会などを行って啓発運動に取り組んでいる。特殊詐欺や悪質商法を業とする輩は知恵を絞って次つぎと新しい手を打ってくる。こちらも手をこまねいてはいられない。(良穂)[2017/02/02]