茶飲み話[41]

 現政権によって立憲主義の理念が踏みにじられている。立憲主義とは、国家権力の暴走で個人の自由や権利が奪われることがないよう、憲法によって政府の権力を制限する考え方である。そうした憲法の理念が、安倍政権の誕生以来、ことごとくないがしろにされている。昨年末の臨時国会でのカジノ賭博合法化法案を成立させるためだけで国会を再延長したことなどもその一つである。そしていままた政府・与党は、第193通常国会に「共謀罪」を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」を提案するとしている▼03年5月に国際組織犯罪防止条約を締結することが国会で承認されたが、その後国内法の整備が進んでいないため締結には至っておらず、世界187ヵ国が締結し、G8国では日本だけが未締結だという。安倍総理は「このままでは2020年のオリンピック・パラリンピックが開催できない」と言い、1999年に制定された「組織犯罪処罰法」を「テロ等組織犯罪準備罪」と呼称を変えて、何としても成立させると意気込んでいる▼しかし「共謀罪」は「国家権力の暴走によって奪われる国民の権利や自由を侵害する恐れがある」として、かつて3回廃案の憂き目に遭っている。だから政府は、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯や悪徳商法のような組織的詐欺事犯、暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯等共謀行為に限り処罰するということであって、国民の一般的な日常生活の行為が対象になることはあり得ないと説明している▼しかし、法律はいったん出来てしまえば、それを執行する者のさじ加減でいくらでも伸縮することをわれわれは多くの経験で知っている。対象をしっかりと限定しなければ特定秘密保護法などとと結びついて捜査権の乱用となり、盗聴や不当な職務尋問など、日本国憲法が保障する思想・信条や表現の自由、基本的人権の侵害にまで拡がるであろうことは目に見えている▼安倍政権は米国のトランプ大統領の虚言・迷言が日本に及ぼす悪影響を懸念しているが、われわれは、安倍政権の政治姿勢がもたらす国民生活への悪影響の方がもっともっと心配でならない。(良穂)[2017/01/16]