茶飲み話[40]
「大山鳴動して鼠一匹」という▼大きな山が音を響かせて揺れ動くので大噴火でも起こるのかと思いきや、小さな鼠が一匹チョロチョロと出てきたという意味で、大騒ぎした割には何のこともなかった場合などに使われる。先ごろ行われた安倍総理とロシアのプーチン大統領による首脳会談、日本側にとってはまさに「大山鳴動して鼠一匹」だった▼安倍総理はプーチン大統領を地元山口県長門市の温泉旅館に招いて会談した。「個人的な信頼関係を築いた」と自負する安倍総理、経済協力をテコに領土問題を動かし、悲願の平和条約締結に道筋をつけたい考えだったのだろう。これについて、長年ロシア(旧ソ連)関係に携わってきた元国会議員の鈴木宗男氏は、あちこちのテレビに出演し、1956年の日ソ共同宣言にある「平和条約締結後に歯舞諸島、色丹島の引き渡しをスタートラインとして具体的な協議に入ることができれば合格だ」とまくしたてていた▼しかし、プーチン大統領は到着予定を2時間40分も遅れたうえ、3時間10分にも及ぶ安倍総理との首脳会談では、肝心の北方領土については何ら譲歩の姿勢は見せなかったようだ。会談後の記者会見で安倍総理は「4島における特別な制度の下での共同経済活動について交渉を開始することに合意した」として、それが「平和条約締結に向けた一歩になる」と強調した。しかし、これについてもプーチン大統領は「ロシアの主権の下での経済協力」を譲らず、「平和条約締結に向けた一歩」になるというのは、どうも安倍総理の「勝手読み」のようである▼結局、日露首脳会談は、功を焦る安倍総理の独りよがりだけが空回りし、経済協力の約束を食い逃げされた形で目新しい成果は何も望めなかったということではなかったのか。それにつけても「ファーストネームで呼び合う仲」を強調していた安倍総理が、記者会見の場で「ウラジミール」と呼びかけるのに対してプーチン大統領は、終始「アベ」をくりかえしていたのは滑稽というほかない。(良穂)[2016/12/21]