茶飲み話[78]
6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太の方針」、新たな在留資格創設による外国人労働者の受け入れ拡大が目玉の一つになっている。新在留資格では、各種試験で「即戦力になる」と証明し、「ある程度日常会話ができる」と確認できれば、最長5年の在留を認める。滞在中に「高い専門性」が認められれば、別の在留資格に移行し、在留期限がなくなり家族を呼び寄せることも可能となる▼対象業種は建設、農業、宿泊、介護、造船の五つを想定している。政府は、早ければ秋の臨時国会に関連法案を提出し、来年4月から実施したい考えだ。背景には深刻化する人手不足があるのだが、専門家の中には「これは移民容認政策で大転換だ」と指摘する向きもあるようだ▼移民を受け入れるとなれば治安の悪化や、民族や宗教上の争いにも発展する可能性もあり、国内には根強い反対論がある。もちろん、国内労働者の雇用・労働条件にも大きな影響を及ぼすことになろう。6月27日に行われた党首討論で、国民民主党の大塚耕平共同代表は、「政府は外国人の単純労働を受け入れない従来の方針を根本的に変えようとしているのか」と質した▼これに対して安倍首相は「移民政策には当たらない」とし、「移民政策とは、外国人を期限を設けず受け入れることで国家を維持する政策。そういう政策は採らない」と反論している。しかし、政府内にも「米国並みの移民政策でないだけで、事実上の移民政策だ」とする声もあるという。人手不足に苦しむ中小企業だけでなく大企業からも、新在留資格を歓迎する声が出ているようだ▼かつて、高度経済成長期と言われた時代にも、製造業の多くが安上がりな労働力を求めて、韓国や中国からの労働者受け入れを主張したことがあった。それが形を変えて今日の外国人労働者研修制度に繋がり、高度成長期の終焉とともに、不安定雇用、低賃金労働者を激増させている雇用・労働法制の緩和・改悪に繋がっている。労働力不足というのなら、外国人労働者を受け入れる前に、まずは国内労働者の雇用・労働条件を改善すべきだ。労働力売り手市場は労働運動・労働組合にとっては、絶好のチャンスであるはずだが・・・。(良穂)[2018/6/29]