茶飲み話[79]

 まさに「ご都合主義」とはこういうことをいうのだろう。国会会期末のドサクサに紛れて、突如として提出された自民党の「参議院選挙制度改革案」。議員定数を比例代表で4増、埼玉選挙区で2増の計6増とする内容だ▼3年ごとの改選数は比例で2、埼玉で1増える。来年夏の参議院選挙では、合区された「鳥取・島根」、「徳島・高知」の2選挙区で自民党の現職4人が改選を迎えることから、立候補できなくなる2人を比例代表で当選させるために、比例代表の定数を増やし、名簿の上位に優先枠を設けるという狙いが見え見えである▼現行制度は政党が比例名簿上の候補者に順位をつけない「非拘束名簿式」だが、国会に提出された自民党案には、上位2枠に限って「拘束名簿式」を導入することが盛り込まれている。現職議員を救済するために、世論に逆行して議員定数を増やすだけでなく、複雑で分かりにくい選挙制度をさらにわかりにくくしている▼参議院選挙区の「1票の格差」は合区によって2013年の最大4・77倍から2016年は3・08倍まで縮小された。それでも3倍を超えていた一昨年の参議院選挙を最高裁が合憲としたのは、来年(2019年)の選挙までに制度の抜本的な見直しを行い「必ず結論を得る」と公職選挙法の付則に定めた国会の議決を良としたからである▼参議院の選挙区で、人口の少ない県のみが単独では議員を出せなくなった合区の問題や、格差を3倍以内に抑えるために議員1人当たりの人口が最も多い県をどうするかなどは、だれが考えても悩ましい問題だろう。だからこそ「衆議院のカーボンコピー」と揶揄される「参議院のあり方」そのものを含めた選挙制度の改革のために、与野党が協力して知恵を出すべきなのだ▼参議院選挙が1年後に迫っても改革論議が進んでいないのは、国会の怠慢としか言いようがない。だからといって、3年前の改革をチャラにして、議席の維持を優先しようとするご都合主義丸出しの理不尽な自民党案では、国民の理解・納得が得られるはずがない。(良穂)[2018/7/3]