茶飲み話[108]
9か月後に迫った東京オリンピックをめぐって、国内のオリンピック関係者が、またもめている。今月16日、国際オリンピック委員会(IOC)が、猛暑下での開催に懸念がある東京五輪のマラソンと競歩について、会場を札幌に変更すると伝えてきた。IOCは変更理由として、大会期間中の札幌の気温が東京より5~6度低いことを挙げている▼ドーハで開催された世界選手権で、暑さ対策としてマラソンと競歩を深夜スタートにした。それでも気温30度超、湿度70%以上の過酷な条件となった女子マラソンでは、出場者の4割超が途中棄権し、改めて東京五輪での暑さ対策の重要性が高まっていた▼そこでIOCのトーマス・バッハ会長と、東京五輪組織委員会の森喜朗会長が電話協議し、札幌への変更を決めたという。蚊帳の外に置かれた小池百合子東京都知事は「唐突な形で発表された。このような進め方は多くの課題を残す」などとする談話を発表し、徹底抗戦の構えのようだ▼東京都はすでに300億円をかけて、コースの遮熱舗装やミストシャワー設置などを行っているし、沿道の商店街などはレースの盛り上げ体制を準備している。マラソンのチケットは売り出され、都内中心にホテル予約をしている遠方からの観戦者も少なくない。そんな状況の中での「通告」だから、小池都知事にとっては怒り心頭だろう▼昨年8月23日付けの本欄は、要約次のような話題を供している。『54年前の東京オリンピックは10月10日から24日の開催であった。今回、なぜ酷暑の7月24日から8月9日になったのか。最も過酷なマラソンは女子が8月2日、男子は9日。一体誰のための、何のためのオリンピックなのか』―と。今回のドタバタは、そんな懸念を丁寧に解消せずに準備を進めてきた結果と言えるかもしれない▼それにつけても、東京開催に伴う費用は、当初の7000億円を大きく超えて3兆円に達するという。招致をめぐる賄賂疑惑も浮上している。オリンピックの崇高な理念を逸脱し、経済目的に堕した東京オリンピック。繰り返されるゴタゴタの裏には、JOC、五輪組織委員会、東京都それぞれの無責任体質と権益をめぐるおどろおどろしい人間模様が見え隠れする。(良穂)[2019/10/21]