茶飲み話[82]

 今月の20日に投開票される自民党の総裁選挙。安倍首相と石破茂元幹事長の一騎打ちとなる模様だが、早々と立候補を表明し「正直、公正」をキャッチフレーズに戦うと宣言した石破氏。これに対する自民党内の反応が実に噴飯ものだ▼石破氏は、森友・加計問題などに対する安倍首相の政治姿勢を批判して、「正直、公正」を打ち上げたのだろう。それに対して党の内部から「安倍総理大臣に対する個人攻撃だ」とする声が上がり、吉田博美参議院幹事長が「個人攻撃ととられるような発言を控えるよう求めた」という▼石破氏は「別に人を批判するつもりはまったくない。そういうふうにとらえる方がいるなら、変えることだってあるだろう」と語り、一度はキャッチコピーを取り下げるかに見えた。しかしその後、選挙公約を公開した記者会見で「正直、公正」のフレーズを堅持すると表明し、それを貫いている。当然だろう▼おかしいのは、自民党の方である。政党とは、政策的にも心情的にも共感する人たちの集りである。政策面では両者の間に大きな違いがあるとは思えない。だとすれば、どれだけ多くの国民の信頼や共感を得られる党にするかが争点の一つとなり、互いの人となりを含めた「ちがい」を強調するのは当たり前のことである▼森友・加計問題などに対する安倍首相の政治姿勢には、自民党内にも批判の声がくすぶっている。にもかかわらず、神様のように高潔で、正直・公正な党運営・国会運営を行っているのだから、それを批判・攻撃するのはけしからんということなのか。ここにも権力に媚びる自民党議員の本音が見えてくる▼翻って、野党はどうか。参議院選挙まで1年を切っても、「力合わせ」への動きが見えてこない。立憲民主党と国民民主党は「希望の党」発足時の民進党分裂の傷がまだ癒えていないといい、「是々非々」の国会対応を標ぼうする国民民主党と、与党への対決姿勢を強調する立憲民主党との溝が埋まらないという▼ “薩長同盟”ならぬ“立・国同盟”に、本気で汗をかく人物もいない。誰のための政治なのかの原点を忘れ、いつまでも違いを強調しあっていては、敵を利するだけである。そんな野党では、遅かれ早かれ国民から見放されてしまう。(良穂)[2018/9/3]