茶飲み話[81]

 異常高温の夏が終わっても、冷めやらないのが“サマータイム”導入をめぐる議論である。2020年の東京オリンピックに向けて、暑さ対策の一環として導入する案が、この秋の臨時国会に提出されるかもしれない▼サマータイムとは「夏時間制度」とも呼ばれ、太陽が出ている時間帯を有効に使うことを目的に、標準時間を1時間早める制度である。起床・就寝、労働時間などは変わらなくても、明るい夕方の時間が1時間増えることになり、その時間を有効活用しようという考え方である▼夕方の照明や朝の冷房用の電力等が節約されることで、電力消費削減にもつながるという。もちろんデメリットも少なくない。コンピュータプログラムの変更や航空・鉄道等のダイヤ変更、交通信号機の調整などの手間・コスト増、残業時間の増加、 時間変更による混乱の可能性などである▼現在、イギリスを含むヨーロッパ、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドなど70カ国以上が導入している。日本でも米軍の統治下にあった1948年から51年まで実施していた。しかし、残業時間の増加や主婦の労働過重等が指摘されたことなどもあって、1952年4月にサンフランシスコ講和条約が発効し独立国となったのに伴って廃止された▼54年前の東京オリンピックは、「晴れの日」が多い10月10日から24日の開催であった。今回、なぜ酷暑の7月24日から8月9日になったのか。ここにもアメリカの影があったようだ。アメリカは、秋にはメジャー―リーグやNBA(バスケットボール)がポストシーズンに入る。そのため視聴率がとれなくなり、テレビ局の収益が激減することから7~8月開催にこだわっているという▼最も過酷なマラソンは女子が8月2日、男子は9日の午前7時スタート。サマータイム導入なら午前6時スタートとなる。アメリカのテレビ局の都合でオリンピックの開催日程や競技時間が決まり、そのために日本が右往左往する。一体誰のための、何のためのオリンピックなのだろう。本稿執筆中に、米軍のオスプレイ5機が10月1日から、東京の横田基地に正式配備されるというニュースが飛び込んできた。(良穂)[2018/8/23]