茶飲み話[74]
事実上の与野党全面対決となった新潟県知事選挙、自民党と公明党が支持した前海上保安庁次長の花角英世氏(60)が当選した。立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の5党と衆議院院内会派「無所属の会」は、元社民党県議会議員の池田千賀子氏(57)を推薦して闘ったが、3万7千票の差をつけられて惜敗した▼米山隆一前知事が女性問題をきっかけとして辞職したことに伴って行われたもので、前回(2016年)に続き、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働などを争点に、与野党全面対決の様相を帯びた選挙であった▼池田氏は森友学園、加計学園問題などを中心に、嘘と忖度と情報隠しに塗り固められた中央政治の現状を批判し、この選挙は「安倍政権への審判」と位置付けるとともに、原発問題では、国内全原発の廃炉を主張し、柏崎刈羽原発についても再稼働の是非を「県民投票などで決める」などと訴えた▼一方、新潟県副知事の経験もある花角氏は「私も原発は不安だ」として、再稼働に慎重だった米山前知事の路線を継承すると争点をぼかし、安倍政権への批判をかわすため「県民党」を掲げ、政党色を全く表に出さない戦術に終始していた。入れ替わり立ち替わり現地入りした自民、公明の幹部も街頭演説には立たず、「中央直結の県政」を餌に業界団体などを個別に訪問し、徹底して組織の引き締めに回っていたという▼その結果、自公支持層だけでなく原発再稼働に慎重な有権者や、人口減少に危機感を持つ無党派層にも支持が拡がり、接戦を制したというのがマスコミ評である。しかし、選挙戦最終盤では、池田陣営を誹謗・中傷するインターネットメールが、回り回って元県民の筆者のところにまで送られてくるなど、汚れた一面を垣間見せた選挙でもあった▼花角氏の当選確実が出た後、公明党の斎藤哲夫選対委員長が、「今回の選挙は、県民の生活や経済、地域の活性化が最大の争点だったので、安倍政権が信任されたというものではないと思っている」とNHKのインタビューに応えていたのが妙に印象的だった。(良穂)[2018/6/11]