茶飲み話[66]
過日この欄で、日本経済新聞の1月22日付トップ記事、『世界の賃上げに日本が取り残されている』について取り上げた。今度は社説の問題で・・・。2月1日付け同紙の社説は、生活困窮者自立支援法と生活保護法の改正問題について述べている▼政府が今国会に生活困窮者自立支援法と、生活保護法の改正案を提出する方針であることから、『生活保護の一歩手前の人への就労支援を充実し、自立を後押しするのが最大のポイントだ。長期間無職だったり、仕事が不安定だったりする人は多い。早くから支援すれば、生活保護に頼らないですむ人が増える。実効性ある仕組みを整えてほしい』―。こんな書き出しで始まるこの社説、問題は後段の生活保護法についてのくだりである▼『今回の改正では、生活保護費の半分近くを占める医療扶助も見直す。過剰な受診や投薬があるとされ、新たに指導員が病院に同行するなどの対策を講じる。だが、防止策としては不十分だ。受給者は、病院窓口での負担がない。本人に後で還付する仕組みを含め、ごく少額でも負担することを真剣に検討すべきだ』と述べている。まさに「生活保護受給者が窓口負担を免がれているのはけしからん」と言わんばかりの主張である▼生活保護受給者に窓口負担を求めるということは、たとえ少額であっても、それが払えないために病気になっても病院に行けない、そんな人が増えるということであり、「後で還付する仕組み」では間に合わないのである。そして社説は、『生活保護は病気や障害などで生活に困った人を守る「最後の安全網」だ。いたずらに保護費が膨らめば、制度維持は難しくなる』ーと脅し口調で締めくくっている▼生活困窮者、生活保護受給者が増えているのは、アベノミクスによる経済最優先の政治が続く中で、雇用・労働法制が骨抜きにされ、不安定雇用、低賃金が拡がっていることが最大の要因ではないのか。方向違いの政策で、いたずらに保護費を膨らませているのは政権・与党であり、そのことが制度の維持を難しくしているのである。よく読んでみればこの社説、生活困窮者、生活保護受給者の実情から目を逸らしたまま、社会保障給付費の押さえ込みに躍起になっている政府・与党の尻押し記事だったようだ。(良穂)[2018/02/05]