茶飲み話[68]

 中国の故事に「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」という成語がある。蜀(しょく)の武将・馬謖が諸葛亮(諸葛孔明)の指示に背いて敗戦を招いた。その責任をとって馬謖は処刑されることになるが、愛弟子の馬謖の処刑に諸葛亮は涙を流した。後に「馬謖ほどの有能な将を・・・」と彼を惜しむ意見もあったが、諸葛亮は「軍律の順守が最優先」と再び涙を流しながら答えたという(ウィキペディアから)▼1年前、森友学園疑惑の真っただ中で、安倍総理を頂点とする政権とのかかわりがないことを、体を張って守り抜いた理財局長の佐川宣寿氏。昨年7月、「適材適所」ということで国税庁長官に抜擢された。しかしその後、国民の前には全く声も発せず姿を見せることもなかった。7カ月たってようやく姿を現したと思ったら、いきなり「国会審議を混乱させた責任をとって国税庁長官を辞任し退職」だという▼途端に出るわ出るわ、改ざんされた森友学園と近畿財務局の土地売買交渉に関する財務省の決裁文書、安倍政権とのかかわりが類推される関係者の名前や文言などは、すべて削除され書き換えられていた。ページ丸ごと削除された個所もあるという。これについて、佐川氏の長官就任を「適材適所」と強弁していた麻生財務大臣。その舌の根も乾かぬうちに「書き換えは佐川の指示で財務省の一部の者がやった」と罪を押し付け、自身の責任回避に躍起である▼公務員としてのモラルをかなぐり捨て、国民や国会をだまし通してまで安倍政権を守るための盾(たて)となって奮闘していた「優秀な官僚」を、トカゲの尻尾切りにして「我が身を守ることが最優先」の安倍総理や麻生財務大臣。泣いて馬謖を斬った諸葛亮と比較しようとも思わないが、あまりにも醜く哀れにさえ見える▼それにつけても、わが国憲政史上まれにみる公文書の改ざん事件であり、議会制民主主義の否定である。何のための誰の指示によるものだったのか、徹底解明が求められる。同時に、公文書改ざんは本当にこれだけなのか。加計学園問題を含め安倍総理の周辺に絡む疑惑が多すぎて、その胡散臭さが気になってならない。(良穂)[2018/03/13]