茶飲み話[54]
共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が15日朝、参議院本会議で自民・公明・日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した。法務委員会審議を中途半端に打ち切って、本会議で採決するという暴挙である。マスメディアが「奇策」などと報じているが、奇策というより議会制民主主義の否定以外の何物でもない▼「無理が通れば道理が引っ込む」という。道理にかなわない不正が平気で通用するならば、道理にかなった正しいことが行われなくなるという意味である。安倍政権の周辺ではあれやこれや、こうしたことが常態になっているようだ▼今回の強行採決も、このままでは「加計学園問題」への世論や野党の追及がさらに厳しくなり、都議会議員選挙への影響や、安倍内閣への疑惑や傷口の広がりが懸念される。それを避けるため、リスク覚悟の強硬策だったとする説がもっぱらである▼加計学園問題で「総理のご意向」などとする文書を「出所不明の怪文書」と言い放ち、文書の存在を明言した前川前文科事務次官の人格まで貶める発言をしていた菅官房長官。複数の職員の証言などで風向きが変わってくると、一転して「文科省調査の結果」を盛んに強調し、責任を文科省に押し付ける▼責任を押し付けられた形の松野文科大臣。これまた官房長官の使いっ走りのように唯々諾々と従っていて、大臣としてのプライドもなければ、配下の職員を守ろうとする気概のかけらさえ感じられない。「卑怯・未練」とか「女々しい」という言葉は、この人たちのためにあるのかもしれない▼ちなみに「無理が通れば道理が引っ込む」にはもう一つ、「いくら道理を説いても聞き入れてもらえない場合は、黙って引っ込んでいる方が身の安全」という意味がある。幹部人事を内閣人事局に握られているため、安倍内閣からどんな不条理を押し付けられても抵抗できないのは、文科省だけではなく全省庁に及んでいるようだ▼そういえば、義家文科副大臣は「文科省の内部文書が存在すると職員が内部告発して明らかにした場合、国家公務員法(守秘義務)違反に問われる可能性がある」と、恫喝ともとれる発言をしていた。一強多弱政治による閉塞感が続く中で、共謀罪法は7月11日から施行される。(良穂)[2017/06/16]