茶飲み話[36]
『長時間労働を是正します。同一労働同一賃金を実現します。非正規という言葉をこの国から一掃します。最低賃金を引き上げ、高齢者の就労機会の提供など課題は山積しています』―。労働組合が太平の眠りから覚めて、ようやく雇用秩序の回復や労働時間の問題などに本格的に取り組む気になったのかと思ったが、よくよく聞けばそうではなかった▼これは8月2日、第2次改造内閣の発足にあたっての記者会見で安倍総理が述べた言葉である。安倍総理はまた、9月2日には内閣官房に設置した「働き方改革実現推進室」の開所式で、「働き方改革にいよいよ着手する。長時間労働を自慢する社会を変え、かつてのモーレツ社員が否定される日本にしたい」とあいさつしている。本気でやる気があるのならやってほしいものだ。しかし安倍総理のいうことは、どれもこれも眉唾に聞こえて仕方がない▼そもそも「日本を企業が世界で一番活動しやすい国にする」として雇用・労働法制の緩和・改悪を推し進め、生涯派遣につながる労働者派遣法の改悪を強行し、残業代ゼロ労働や労働者の金銭解雇を可能にする労働法制の改悪を目ろんでいるのは一体誰なのか。不安定雇用労働者を増やし続けているのは一体誰なのか。働き改革というならば「非正規という言葉を一掃する」ではなく、「非正規雇用を一掃する」と言うべきなのに、わざわざ紛らわしい言い回しにしているのはなぜなのか▼ともあれ、厚労省をはじめ経産省や文科省など、9つの府省庁からの出向者40人に、連合の神津会長も参加する「働き方改革実現推進室」。月1回のペースで開催し、正規・非正規の雇用形態の違いだけで賃金格差をつけない「同一労働同一賃金」などについて、今年度中に「実行計画」をまとめ、来年の通常国会で関連法を改正する考えだという。「大山鳴動して鼠一匹」にならなければいいのだが・・・。(良穂)[2016/09/05]