茶飲み話[100]
金融庁が6月3日に発表した「『高齢社会における資産形成・管理』報告書」の内容を巡って、あちこちから批判と戸惑いの声が上がっている。人生100年時代に向け、長い老後を暮らすための資産をどのようにして確保するかという問題などについてまとめられたものである▼働き盛りの現役期、定年退職前後、高齢期の3つの時期ごとに、資産形成のための心構えが示されている。それによれば、「公的年金の水準については中長期的に実質的な低下が見込まれているとともに、税・保険料の負担も年々増加しており、少子高齢化を踏まえると、今後もこの傾向は一層強まることが見込まれる」としている▼その上で、具体的な内容にも触れ、年金だけが収入の無職高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)の場合、家計収支は平均で毎月約5万円の赤字。蓄えを取り崩しながら20~30年生きるとすれば、現状でも1,300万円~2,000万円が必要になるとしている▼そのため、現役期は「少額からでも資産形成の行動を起こす時期」とし、生活資金を預貯金で確保しつつ、長期・分散・積み立て投資が必要だというのである。政府が「人生100年時代」をうたう半面、公的年金だけでは生活を維持することが困難だと言及したことについて、野党は「アベノミクスの失敗を国民につけ回すものだ」と猛反発し、国会での追及とともに夏の参議院選挙の「攻め道具」にすると息巻いている▼こうした批判に対して、麻生副総理兼財務大臣は6月7日、「一定の前提で出した単純な試算。あたかも赤字なのではないかと表現したのは不適切だった」と述べ、菅官房長官も「誤解や不安を招く表現だ。公的年金こそが老後の生活設計の柱だ」と釈明に追われている▼そうは言われても、政府に上から目線で「長生きしたいのなら2,000万円準備しろ」と決め付けられた多くの国民。とりわけ資産形成に間に合わない高齢者は、どうしたらいいのだろうか。戸惑いが広がるばかりである。(良穂)[2019/6/10]