茶飲み話[95]
「上手の手から水が漏る」という。どんなに上手な人でも、時には失敗をするというたとえである。この人の場合、それとは少し違って、自分のしたことを正直に自慢しただけのことだったのだろう。自民党の塚田一郎国土交通副大臣である▼今月1日、福岡県知事選の麻生派の推薦候補の集会で応援演説に立ち、本州と九州を新たに結ぶ下関北九州道路について、安倍総理と麻生財務大臣の地元事業だと紹介。その上で「首相とか副総理が言えないので私が忖度した」として、自ら国直轄の調査とすることを決めたと明言した▼周囲からの批判に驚き、2日には発言を撤回し謝罪したが、立憲民主党など野党は一斉に塚田氏の辞任を要求している。3日の衆院内閣、厚生労働両委員会で塚田氏は、「大勢が集まる会だったので、われを忘れて事実と違う発言をした」などと釈明。「説明責任を果たし職責を全うしたい」と辞任を否定している▼安倍総理も続投させる方針だというが、国民民主党の原口一博国対委員長は「予算と事業の私物化だ。安倍政権のおごりそのもので、副大臣の地位を利用して選挙を有利に進めようとしていると言われても仕方がない」。立憲民主党の辻元清美国対委員長は「政権ぐるみで政治を私物化している可能性がある。撤回して済む話ではない」と語っている▼かつては「あの大臣がいたからこの道路ができた」、「新幹線の駅はあの大臣のおかげ」などという話がまかり通っていた。しかし、いまはそんな時代ではない。塚田氏の発言は、国の予算編成に当たって、安倍総理や派閥の親分である麻生副総理の思いを忖度し、利益誘導したのであり、それを大衆の前で、ついつい自慢して見せたということである▼それにしても、野党が批判を強めているとはいうものの、参議院選挙が目前に迫ってなお互いに小さな違いを強調し反目しあうばかりで、安倍政権を喜ばせている弱小野党である。今度もまた、森友・加計学園問題などと同様に、ガタガタ騒いでみるだけのことでしかないのでは・・・。(良穂)[2019/4/4]