茶飲み話[90]
高齢単身者が増加するなかで、身元保証を代行する民間サービスが広がっている。身寄りがないため身元保証人を確保できず、医療機関や介護施設に入院・入所できない高齢者が増え続けているからである▼福岡市を拠点に全国11か所で事業展開している一般社団法人「えにしの会」は、入会金5万円と月会費3千円、身元保証サービス費25万円を支払えば、入院・入所時に保証人を代行してもらえる(西日本新聞)という。全国に100ヵ所ほどある他の事業所も似たり寄ったりで、こうした料金が支払えないために、利用したくてもできない高齢者が少なくない▼厚労省の研究班が2017年、医療機関約1300施設から回答を得た調査では、「身元保証人を求める」との回答が65%。ベッド数が20床以上の病院では約90%。保証人を求める医療機関のうち8・2%は保証人がいないと「入院を認めない」としている▼介護施設についても同様である。厚労省の委託調査によると、回答した約2400施設のうち、身元保証人がいない場合に介護施設の約31%が入所を拒否していた。これらについて厚労省は、診察や治療の求めがあった場合「正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とした医師法違反に当たるとの見解を示している▼とは言うものの、ビジネスチャンスと見て悪質な手合いもこうした代行事業に入り込んでいる。退職者連合は3年前から、低所得高齢単身女性に関する政策・制度要求の中で「高齢者が安心して病院・福祉施設等に入院・入所できるようにすること」、「保証人の有無にかかわらず入院を受け入れるよう、国は医療機関に対し法令遵守を徹底すべき」だとして厚労省や内閣府、地方自治体に要請し続けている▼厚労省は、その趣旨に沿った内閣府消費者委員会の建議を受けて、医療機関や介護施設に改善を指導するよう全国の都道府県に通知しているという。しかし、地方自治体の現場での歩みは遅々として進んでいない。まだまだ低所得高齢単身者は増え続けるだろう。人生100年時代などと言われても、“地獄の沙汰も金次第”では高齢者の不安は募るばかりである。良穂[2019/1/21]