茶飲み話[88]
自分の都合のいいように強引に理屈をこじつけることを牽強付会(けんきょうふかい)という。「牽強」も「付会」も、道理に合わないことを無理にこじつけることを意味する。安倍政権になってからの国会は、牽強付会が大手を振ってまかり通っている▼今臨時国会の最大の焦点である「外国人労働者受け入れ拡大」に向けた出入国管理法改正案の審議で、野党議員の質問に対する安倍総理や山下法務大臣の対応はまさにその典型である。安倍総理は「移民政策ではない」と言い張りながら、原則禁止とされている「単純労働」への外国人労働者の受け入れを画策していることは明らかである▼「特定技能1号」について「一定の専門性、技能を有する外国人」などとしているが、その基準がどうなっているのか、単純労働とはどのような仕事なのかについては何ら明言していない。また、受け入れの規模・人数についても定かではなく「法案が成立してから省令で決める」という▼さらにひどいのは、低賃金や虐待労働で失踪者が続出している「技能実習生」を巡る現状について、具体的な改善策を全く示していないことである。当初、山下法相は失踪動機について「より高い賃金を求めて失踪する者が約87%」と答弁していた。法務省入国管理局が失踪した技能実習生から聞き取りをした資料の中で「より高い賃金を求めて」という選択肢はなかったにもかかわらず、国会提出の資料を書き換えていたのである。これではまともな審議ができるはずがない▼雇用・労働にかかる重大問題なのに担当の厚生労働省にはまったくお呼びがかからないのも不思議である。そんな中で衆院法務委員会理事の平沢勝栄議員は、「この問題は議論したらきりがないんです。いくらでも問題点が出てくるんです」と捨て台詞のような言葉を発している。とにかく議論せずに決めてしまえ、あとはどうにでもなるということなのか▼政府与党は7日までに可決・成立させるとしている。いざとなればいつも通り腕ずく、力ずくで押し通してしまうつもりだろう。真剣な議論を通じてキメ細やかな法律にしなければ、近い将来大きな禍根を残すことになるだろう。良穂[2018/12/4]