茶飲み話[73]
「南北、ならびに米朝首脳会談の際に、拉致問題が前進するよう、私が司令塔となって全力で取り組む」-。4月22日に開かれた北朝鮮による拉致被害者家族会や支援団体「救う会」などが主催する『国民大集会』での安倍首相の言である▼安倍首相は、4月18日の米国フロリダ州のバームビーチで行われた日米首脳会談で、トランプ大統領が「朝鮮労働党・金正恩委員長との会談では拉致被害者を日本に戻すために最大限の努力をする」との約束を取り付けたことを強調。そのうえで「日米で緊密に連携し、拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく」と続けた▼首脳会談では見るべき成果がなかったことから、何とか支持率回復に利用しようという思いがあってのことだろう。これまでとはかけ離れた踏み込みに、拉致被害者家族の会の蓮池透さん(蓮池薫さんの兄)は、ツイッタ―で「司令塔?この期に及んで、どうやって?」と書き込み、安倍首相の発言を批判している▼権勢をもつ者に頼って威張ることを「虎の威を借る狐」という。虎が狐を食おうとしたときに、狐が「私は天帝から百獣の王に任命された。私を食べたら天帝の意にそむくことになる。嘘だと思うならついて来い」と虎に言った。そこで虎が狐の後についていくと、行き合う獣たちはみな逃げ出していく。虎は獣たちが自分を恐れていたことに気づかず、狐を見て逃げ出したのだと思い込んだ▼そんな逸話のように、相手がひれ伏してくれるならば万々歳だ。しかし、蓮池さんは「わざわざアメリカまで行ってトランプ大統領にお願いするというのは、自分たちがお手上げということの裏返しなわけですよ。それじゃまずいと思うし、トランプさんがどういう風にするのかまったく分からない」と疑問を呈している▼シンゾー、ドナルドとファーストネームで呼び合い、ゴルフを楽しむ仲だと安倍首相は誇らしげだが、これまでのあれやこれやを見てみると、藤子・F・不二夫さんの「ドラえもん」に登場するジャイアンにへつらうスネ夫の姿を彷彿(ほうふつ)する。虎の威を借りて「圧力、圧力」を連呼しているうちに、日本だけが置いてけぼりにならなければ良いが・・・。(良穂)[2018/4/25]