茶飲み話[70]
今回はちょっぴり難しいAIとBIの話。AIはアーティフィシャルインテリジェンスの略で日本語では「人工知能」。BIはベーシックインカムの略で日本語訳は「基礎所得補償」とか、「最低所得保障」とでもいうのだろうか。国内でこの二つの言葉が頻繁に使われるようになったのは、政府が2016年6月に発表した「日本再興戦略2016」が発端になっているようだ▼「日本再興戦略2016」は、名目GDP600兆円に向けた成長戦略のために、人工知能(AI)やロボットの活用による「生産革命」を一つの課題に掲げている。すなわち、労働力人口が減少する中で、新たな有望成長分野を創出するために、労働力に替えて人工知能やロボットの積極的な開発・導入が欠かせないというである▼しかし同時に、それが幅広い産業分野に及べば、仕事がAI(人工知能)やロボットにとって代わられ、雇用や所得を奪われる労働者が多数出るのではないかとも指摘している。そこで登場するのがBI(ベーシックインカム)の考え方である。国民の最低生活を保障するため、一定の所得以下の国民一人一人に現金を給付するという施策である▼これについては多くの先進工業国で議論していて、スイスでは2016年に導入についての国民投票を行った。しかし、最低保証額を一人月額28万円に設定したことなどから、「高額すぎる」との批判にさらされ、あえなく否決された。フィンランドでは昨年5月から、対象者2千人に一人月額6万8千円を支給する実験を続けている▼わが国でBIを実施するとなれば、給付金額や対象者数、財源など検討課題は多い。一人月額7万円とした場合100兆円ほどの財源が必要で、各種社会保障財源を統合しても30兆円ほどにしかならず、70兆円は増税に頼らざるを得ないという論もある▼AIやロボットによる生産革命は急ピッチで進んでいる。労働者の犠牲の上に成り立つ日本再興戦略や経済発展などあり得ない。BI導入についての議論が重要であることに異論はないが、その前提となるのは「富の再分配」という確固たる理念でなければならない。(良穂)[2018/04/10]