茶飲み話[46]

 ♪泣き虫弱虫あわてん坊 みんな気のいい奴ばかり 働く仲間の希望はひとつ 十人十色の幸福さがし ♪優しさ真心思いやり 冬の衣を吹きちぎり 働く仲間は胡蝶のように 舞って四方に幸福さがしー。民間先行による連合の結成に向けて、全民労協が組合員から公募してつくった「幸福(しあわせ)さがし」である▼200編を超える応募作品のなかから最優秀に選ばれた前川喜美春さん(電機連合所属)の詞を、演歌作詞家の大御所・星野哲郎さんに補作していただき、当時NHK全国のど自慢コンクールでピアノ伴奏をしていた黒河内和夫さんに曲をつけていただいた。♪仲間の愛が輪になって~で始まる「連合歌」とともに官民統一連合の創立大会でも「愛唱歌」として採用され、今日に至っている▼『今日わが国は、21世紀を目前にして政治、経済、社会、文化など、あらゆる領域で大きな変化に直面しています。労働運動もまた、力と政策をもって新しい運動の道を切開いていかなければなりません。連合は、大会スローガンに~平和・幸せ・道ひらく~を掲げました。それは、自由と民主主義に基づく労働運動の基本を示し、国際社会との調和の中で、人間優先の福祉社会づくりを進める決意を明らかにしたものです』―。官民統一大会で連合は、「国民のみなさんへ」と題するメッセージの中で、このように謳いあげている▼しかし、時を同じくして日本列島は、ゼネコンのみならず名のある企業や銀行さえ、何かに憑(つ)かれたかのように土地を買いあさり、カネをつぎ込んでは転がし、金色の泡のなかで舞い上がっていた。やがてバブル経済が破綻し、土地価格が暴落し始めた途端に、企業も労働組合も凍て付いたように萎縮し、連合の「人間優先の福祉社会」に向けた新しい運動も、厚い扉に閉ざされてしまった▼「幸福さがし」の作者にはそんな時代の先が見えていたのだろうか。詞は4番で次のように締めくくっている。♪遠くの白百合ほしがって そばのタンポポ忘れてる 働く仲間の幸福さがし 明日こそはが ララ合い言葉。この歌が生まれて30年、多くの労働者が夢見た「十人十色の幸福さがし」とは何だったのか。もう一度「平和・幸せ・道ひらく」―、そんなロマンあふれる労働運動がほしい。(良穂)[2017/03/13]