茶飲み話[34]
労使関係について興味ある数字が目にとまった。厚労省が民間事業所の組合員30人以上の5189組合(有効回答3215組合)を対象に行った「平成27年労使関係の交渉等に関する実態調査」である▼それによれば「労使関係は安定的に維持している」が49.7%、「おおむね安定的に維持している」の38.1%を合わせると、ほぼ9割の組合が「労使関係は安定している」と答えている。大企業ほどその比率が高く、1000人以上の事業所では9割を超えている▼もちろん、労使関係は安定しているに越したことはない。しかし、雇用労働者の4割近くを不安定雇用にし、仕事内容は同じでも、雇用・労働条件などで正規社員との間に明確な差別化が行われている中で、この数字は一体何を意味するのだろうか▼「過去3年間に団体交渉を行った」組合は67.8%。逆に言えば、3割を超える組合が3年間に1度も団体交渉を行っていないことになる。非正規社員について「労使間で話し合ったことがある」のは半数に近いが、その多くは労働条件について(35.3%)で、「パートの雇い入れ」に関しては23.6%でしかない▼こうした数字から透けて見えてくるのは、「労働組合に入れない労働者」をほとんど無条件で受け入れ、組合員比率が低下し、労使対等の原則が形骸化している労働の現場の姿ではないだろうか。わが国労働組合の推定組織率は17.4%。古くから組織率は労働組合の力をはかるバロメーターといわれているが、連合の頑張りにもかかわらず下落傾向に歯止めがかからない▼国家も企業も、労働者を粗末にしては発展も安定もあり得ない。安定した雇用の確保という一点で「緊張感ある労使関係の維持」を忘れたら、労働運動・労働組合は存在意義を失う・・・。(良穂)[2016/07/29]