茶飲み話[30]

 こんな話、茶飲み話にはそぐわないとは思いながらも、どうにも筆を執らずにはいられない▼千葉県内の建設会社とUR(都市再生機構)との間に生じたトラブルで、補償交渉の「口利き」の見返りに、建設会社側から秘書ともども多額の現金を受け取り、接待を受けていたとされる甘利明前経済財政担当大臣の「金銭授受疑惑」である。甘利氏は1月末の記者会見で「2回にわたって100万円の現金を受け取った」ことを認め、大臣を辞任した▼また、この会見では「自ら精査して事実関係を明らかにする」とも述べていたが、その後の週刊誌などの報道によれば、受け取った金額は甘利事務所の2人の秘書を含めて1200万円にも上るという。甘利氏は大臣辞任直後から「睡眠障害」とやらで「自宅療養1ヵ月」の診断書を提出して国会には姿を見せず、5カ月近く経った今なお雲隠れしている。野党の追及から逃れるための安倍政権の「甘利隠し」と指摘する声もあるが、まんざら的外れでなないだろう▼国会議員の歳費(給料)は「労働の対価ではない」との理由で、病気療養中でも服役中でも支払われる。月額130万円余の歳費に期末手当が635万円、あわせて年額2000万円ほど。このほかに「文書交通費」が月額100万円。合計して年に3200万円ほどが議員個人の口座に振り込まれる▼それとは別に、政党交付金が議員一人当たり約4000万円、立法事務費月額65万円。3人まで国費で賄われる公設秘書の給料は勤務年数によって異なるが、おおよそ一人当たり年収600万円から1000万円。なんだかんだで、議員一人当たり年間1億円ほどの税金がつぎ込まれている▼年金・医療・介護・生活保護などの給付は減額され、税金と保険料は値上げが続く。高齢者や社会的弱者は息も絶え絶えだというのに、重要政策を担当する大臣のスキャンダル。安倍総理の任命責任を含め、閣僚を辞任しただけで済む話ではない。(良穂)[2016/05/09]