茶飲み話[23]
いささか旧聞に属するが、11月3日は「文化の日」▼1946年11月3日に「平和と文化」を基調とする日本国憲法が公布されたことから、48年に「国民の祝日に関する法律」によって「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日として祝日と定められた▼とはいうものの、この日は戦前から「明治節(その前は天長節)」として国民の祝日になっていた。それは、11月3日が明治天皇の誕生日であったことから、その聖徳を敬い、国民の心に深く刻み、長く称えようとの趣旨で1927年(昭和2年)に制定された▼「文化の日」は、それとは無関係に定められたといわれているが、「明治節に憲法公布の日をあわせた」との説もある。それについて、小説家や劇作家として著名な参議院議員・山本有三(本名は勇造)は回想録で、「憲法発布は11月1日の予定であったが、施行日がメーデーと重なるため11月3日に変更された」と記し、(日本政府は)11月3日を憲法記念日にしたいと強く主張したが、GHQが11月3日は絶対にだめだとして譲らず、「憲法記念日という呼称以外ならOK」ということになったと記している▼日本国憲法の基本は「平和主義・国民主権・基本的人権」であることは改めていうまでもない。しかし、その憲法の真柱がいま、大きく揺らいでいる。それも憲法改正を目ろむ安倍総理の思惑通り、筋書き通りなのだろうか。なぜならば、2012年に公表された自民党の憲法改正草案。第9条に「国防軍の保持」を明記し、衆・参両院議員の3分の2以上としている96条の憲法改正発議要件を過半数に緩めている▼加えて「表現の自由」を保障した21条では、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは認められない」としている。つまり、時の権力者の判断次第で表現の自由はたちまち否定されかねないのである。このような安倍総理の一連の政治手法によってもたらされる日本の進路に、限りない不安と不気味さを禁じ得ない。(良穂)[2015/11/27]