茶飲み話[11]

 すべて水に流す─ケンカを収める庶民の知恵であり、日本人の寛容さのひとつである▼今、マスコミでは1964年の東京オリンピック開催や新幹線開業から“50年”でにぎわっている。だがもうひとつの50年もある▼1964年12月7日、アメリカ合衆国空軍大将のカーチス・ルメイ氏に日本政府が勲一等旭日大綬章を贈った日だ。日本の航空自衛隊の育成に功績があったからという。航空自衛隊入間基地で浦茂航空幕僚長から本人に手渡された▼ルメイ氏は、太平洋戦争末期、東京大空襲など日本焦土化作戦や広島・長崎への原爆投下を指揮した人物。ベトナム戦争では「石器時代に戻してやる」と豪語し、北爆を推進したことでも知られる▼多くの市民を無差別に殺戮することは、人道に反する罪であり、国際法違反である▼国民の批判に対し、当時の佐藤栄作首相は「過去は過去。功績に報いる」と叙勲の理由を語り、小泉純也防衛庁長官も「功績と戦争当時の事情は別」と水に流してしまった。本来、勲一等旭日大綬章や文化勲章の“親授”は、天皇が直接手渡すのが通例だ。昭和天皇にどのような思いがあったのか、知る由もない▼来年で戦後70年。今なお多くの方が原爆症や戦争の惨禍が残した傷に苦しめられている。水に流してはいけない歴史だ。(道)[2014/11/07]