茶飲み話[26]
「貧すれば鈍する」という喩え(たとえ)がある。貧乏すると日頃は利口な人でも才覚が効かなくなり、カネ欲しさ、モノ欲しさのあまり、みみっちいこともしかねないという意味である。もともとは「貧すれば貪する」で、貪る(むさぼる)という字をあてていた。近頃、そんな喩えを彷彿(ほうふつ)させるような出来事がやたらと目につく▼日本列島が疑心暗鬼に陥った「耐震偽装建築設計」の事件から10年、今度はマンション建築の基礎にかかる「くい打ち偽装」が世間を騒がし、廃棄処理したはずのトンカツやコロッケが息を吹き返し、普通の鶏肉が高級ブランドに厚化粧して店頭に並んでいる。まさに「どうせ消費者にはわかるものか」と高をくくり、信用を笠に着て金儲けに走る卑劣な行為、消費者に対する裏切り以外の何ものでもない▼しかも、そうした不正を行っていたのは、それなりに世間に名の通った企業であり、いずれもかなり以前から行なっていたようだという。事件発覚後の記者会見などで、それら経営陣から出てくる言葉は「二度と起こらないよう指導を徹底する」とかで、「トップは知らなかった」ふりをする。さらに追求が進むと、「企業としての順法精神にかけていた」とくる。これでは、いくら経営陣が居並んで慇懃無礼に頭を下げて見せても開き直りとしか映らない。不祥事を起こしてしまったときに、経営陣居並んでの頭の下げ方を指導するコンサルタントがいるという噂さえ、まんざらジョークとはいえなくなってくる▼「内を省みて賤(いや)しからず」、経営陣は消費者と従業員のために、社会の公器としての企業に誇りを持ち、まじめにやってほしいものだ。とはいうものの、安倍総理の片腕ともいわれる大臣の「口利き疑惑」や、頻発する自民党国会議員の絶対多数にあぐらをかいての傲慢さや知識・認識不足からくる不規則発言、道徳を無視した行い等々、政権末期を暗示しているようなあれやこれやを見せつけられれば、「とてもじゃないが、まじめになんかやってられないよ」と開き直りたくなるのも無理ないか。(良穂)[2016/02/19]