茶飲み話[35]
茶飲み話にしては、茶が苦すぎて、口元が歪んでしまいそうな話である。参議院選挙が終わるまで、政府・与党が選挙への影響を恐れて、ひた隠しにしていた2015年度のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金積立金の運用実績は、5兆3098億円の損失であった。事前に察してはいたものの「やはりそうだったのか」と、安倍政権の狡猾さと厚顔無恥にあきれかえるやら、腹が立つやら▼それだけではない。本年度に入ってからも、4―6月期は5兆2491億円の損失を出している。国内株式が2兆2574億円、外国株式が2兆4107億円、外国債券が1兆5193億円のそれぞれマイナスで、収益が増えたのは国内債券の9383億円のみであった。これについてGPIFの高橋則広理事長は、「5月の米国雇用統計が事前予想を大きく下回ったことや、市場予測と異なる英国のEU離脱投票結果を受けて急激に円高が進んだ」などと説明資料で述べている▼GPIFは2014年10月、比較的安定している国内債券中心の運用方針を見直し、多くの反対を押し切って、国内外の株式比率をそれぞれ25%に引き上げるリスク性の高い運用に切り替えた。年金積立金を株式市場に投入することで、株価引き上げを狙った安倍政権の景気対策の一環である。だから政府・与党は、「短期的には損失が出ても、今すぐ年金支給に影響が出るわけでなく、運用は長期的視点で見るべきだ」と繰り返している▼その一方で安倍総理は、本年2月、衆議院予算委員会で民主党(当時)議員の質問に対し、「株価下落で年金(積立金)運用が想定を下回る状況が長期に続いた場合、将来的に給付額を減額する可能性はある」と本音を吐露している。短期的に見れば年金支給には影響しないというが、いまでも支給額はじりじりと引き下げられている。政府・与党がいうように長期的視点で見れば、株価頼みの運用方針を変えない限り、公的年金への不安は弥(いや)が上にも増すばかりである。国民の暮らしを不安に陥れ、置き去りにしているアベノミクス、安倍政権による経済最優先の政策は、明らかに間違っている。(良穂)[2016/08/29]