茶飲み話[63]
日本中央競馬会(JRA)は政府の要請を受けて、昨年の12月28日からギャンブル依存症対策の一環として、家族からの申告に基づきインターネットによる馬券販売を停止している。同居する家族が申請書に診断書を添えてJRAに提出し、JRAが認定すれば本人の同意なしでもネットでの馬券販売を停止する仕組みである。今後ネット販売に限らず競馬場や場外馬券売り場などへの適用を検討するという。政府は、パチンコでは12月からすでに実施しているといい、4月からは競輪やオートレースなどにも拡げたいとしている▼一昨年の臨時国会最終盤で、自民・維新・公明の一部などによって強行可決された「IR推進法」には、「ギャンブル依存症対策を求める付帯決議」が付けられた。そのため、この制度導入は、今年の通常国会でカジノ賭博場設置を柱にした統合型リゾート施設(IR)推進法を、何としても成立させたい政府・与党の対策法制定前の「実績づくり」の一つであることは明らかである▼しかし政府・与党の関係者が、この程度のことで実効的な依存症対策ができると思っているとしたらとんでもない間違いである。ギャンブル依存症の根深さ、恐ろしさを過小視しすぎているといわざるを得ない。そもそも依存症に罹った本人や家族の中で、どれほどの人がそんな厄介な手続きをしてまでギャンブルへのアクセスをやめよう、やめさせようとするだろうか。ともすればそのことが原因となって深刻な家庭騒動に発展することさえ懸念される▼政府が昨年8月に行った「観光先進国の実現に向けて」と題するパブリックコメントの集約結果が12月半ばに公表された。それによれば提出者数1,234人のうち、829人(67.1%)がカジノ解禁に反対している。また、IR導入による経済効果には93.5%(1,155件)が否定的な見方をしており、効果的だとする意見はわずか5%(62件)にすぎない▼安倍政権がこうした多数世論に耳を貸さず、強引にカジノ賭博を合法化しようとしている背景には一体何があるのだろうか。トランプ大統領との密約説や対日経済要求、アメリカ巨大資本の暗躍などがあると指摘する向きもある。日本の良き伝統を壊し、善良な市民の心を蝕むカジノ賭博。安倍政権のそんな悪しき経済振興策に与(くみ)する為政者や経済人の心がおぞましい。(良穂)[2018/01/05]