茶飲み話[133]世襲政治家がずらりと4人 ―自民党総裁選に思う―

 投票日まで残すところ3日となりました。市民連合と立憲野党の共闘がどれだけ成功するかとそればかり心配しています。私は9年間もの間、安倍・菅政権の強権政治の横行を許してきた要因の一つに、弱小野党の存在があったと考えてきました。その打破こそ、今度の総選挙の最低限の目標と自分なりに言い聞かせてきました。期待と不安の交差した複雑な心境とでも言ったらいいのでしょうか。それだけに「静岡の快勝」には飛び上がらんばかりのうれしさを感じました。

 ところで、この解散総選挙に先立ち行われた自民党の総裁選に一言。
 岸田文雄、河野太郎、高市早苗、野田聖子と、ずらり4人並んでテレビに映し出されたのを見て、「この4人、全部世襲議員じゃないか!」と強い違和感を覚えました。4人の発言などを聞いているうちに、まるで世襲議員じゃないと総理にはなれないぞ、なってはいけないぞと言われているような感に襲われ、胸くそが悪くなってスイッチを切りました。
 そして、放送タレントの松尾貴史が毎日新聞のコラムに政治家の世襲批判を書いていたのを思い出し、切り抜きファイルを繰ってみました。彼は、こう書いています。
 「親の資金力で留学をさせてもらい箔をつけて帰国すれば、コネクションで有名企業に就職し、退職したら親の事務所で秘書をやって、冠婚葬祭や地域の祭りに顔を出す。それでどういう正義や義憤を感じたり、意志があったりするのかを教えてほしい」
 こう述べたうえで、「彼らが親の選挙区を譲り受けるニュースが報じられるときに、メディアもサラブレッドなどと持ち上げるのを見ると、その報道機関には疑問も批判精神のかけらも感じられない」と批判しています。
 まったくそのとおりで、この4人も若い時から、親の七光りに守られて大した苦労なく当選回数を重ね、その回数の重さゆえに候補者となったに違いない。私が見たテレビ報道は、あれやこれやと賑やかではあったが、松尾流の批判報道は皆無で、まさにサラブレッド報道でした。
 世襲をすべて悪と決めつけるつもりはありませんが、百万党員を誇示する自民党の総裁候補が“すべて世襲”というのは、いささか異常と言うべきではないでしょうか。いや、異常と思っている党員や議員がいるに違いありません。しかし、それが表に現れてこない自民党の体質こそ、現代日本の執権政党失格を暗示していると断言してもいいのではないでしょうか。
 一日も早い退場を迫ろうではありませんか。

総評退職者の会 北岡孝義