「ジェンダー平等って何・・・」 ~よさこいの夏~

(今回のお達者さん)
高知県退職者連合   副会長   山中   千枝子
(千斗枝グローバル教育研究所   代表)

小学生の頃、いじめられっ子だった私は、人の前にでることが嫌いだった。人の前に立って自己主張をするといじめられると、そう思っていた。

大学2年生の時、高知県人会の会長になった。同じ県にある2つの大学の高知県人会と3校合同で、よさこい祭りに参加することになった。当時、よさこい祭りは8月10日と11日の2日間の開催。私たちは、大学別に練習をし、8月9日、高知で合同練習。10日と11日の祭りに参加した。

その頃は、どこの隊も同じよさこい鳴子踊りの曲を使い、すこしアレンジして踊っていた。私は、どうしても人前で踊りたくなくて地方車の陰で見ていた。その時、他の大学から参加していた1人の学生が「ドラムを叩いてみないか」と誘ってくれた。休憩時間に教えてもらい、本番に地方車に乗ってドラムを叩いた。曲と踊りとドラムが一体になり祭りの盛り上げるのに感動しながら叩いた。3つ目の競演場でスタンバイしていると、ふいに「何をしているんだ」と大きな声がした。高校の先輩だった。「早く降りてこい」というので、ついて地方車を降りた。「女だてらに・・・」話はここからはじまった。「女は地方に乗ったらいかん。ドラムを叩くなんてもってのほか。男のすることや。ようわきまえておけ」矢継ぎ早に言う。「お前のために言うがぞ」と捨てぜりふ。
かなりショックをうけたが、仕方がなく踊り子隊の後ろをついて歩いた。休憩時に冷たいお茶を配るのを手伝っていると、先輩が近づいてきた「そうそう、お茶を入れたり、配ったりが女のすること。よう気が付いた」彼は、あぜんとしている私を振り返ることなく離れていった。見渡すと、お茶の世話をしているのは女性、座って休んでいるのは男性。ドラムを教えてくれた学生が「ごめんね。ドラムはすごく上手やったけんど、ドラムやエレキギターは男のすること、女はせられんがよね」と言った。そんな時代だった。
大学を卒業するまでは、それでも、よさこいに加わっていた。

中学校に就職をして日教組に入った。(その当時はほぼ全員が組合に入っていた)組合が別れて日教組高知が活動はじめたとき、日教組として何をしたい」と聞かれ、「よさこいをやろう」と提案をした。小・中学生がよさこい祭りに参加すると生活が乱れると言われていた時代。祭りの中で子どもたちを見守っ

ていこうという私の提案を受け入れてくれて、日教組高知のよさこいへの取り組みがはじまった。曲は、中学生が作り、踊りは数人でわいわいいいなが振り付けた。子どもたちから退職した高齢者までのよさこい祭り。学級の子どもたちや保護者が競演場に応援に来る。「せんせーい」と言って追いかけてくる。踊っている私たちと競演場にいる人たちが一体となり祭りを盛り上げる。そこには、子どもだから、高齢者だから、女だから、男だからという隔てはなかった。日教組高知のよさこい祭りへの参加は、10年あまり続いた。

高知県国際交流課が主催する高知に在留している外国の人たちに高知の文化を知り参加してもらい、外国へ発信していく「こうちくらぶ」のよさこい祭りへ参加するチームに踊りのボランティアで参加した。
3年間は県の事業で行い、県の事業終了後、ボランティア数人と「よさこい国際交流隊」として受け継いだ。今年30年を迎える。一貫して「国際交流 和と輪」を繋いでいる。一度だけ分裂しかけたことがある。その時言われた一言が、今でも頭のどこかに住みついている。「国際交流でなく、よさこいを楽しみたい」「女が仕切れるわけがない」「女がすることじゃない」。黙って聞いていた数人が声を上げた。
「私たちは国際交流がしたくてずっとこの隊にいる」「国際交流は楽しい」「今のままでがんばりたい」「私はちえちゃんについていく」。17年ほど前のことだ。「よさこい国際交流隊」は、たくさんの笑顔で継続している。

50数年ほど前に、女は・・・と言われたことを思い出した。30年経っても、40年たっても人の意識は変わらないだろうか・・・。

ジェンダーギャップ指数の2024年度の順位等が発表になった。
146か国中118位。2023年度が250位からぐんと良くなったように見える。しかし、G7 での男女共同参画では、参加国最下位。下から2番目の国と比較しても、数値は大きな隔たりがある。単なる数字合わせをしても抜本的な解決にはならないだろう。
20歳の時に「女は、ドラムをたたいたらいかん」と地方車からおろされたときから、世の中の意識は変わったように見える。はたしてそうだろうか。何かにつけ、言葉や態度の端々に「おんなやろうが」「おんなだてらに」」「おんなのくせに」・・・その裏で、男性も含めすべての人たちが生きにくいだろうと思うことが多々ある、自分の周りをじっくり、ゆっくり見直し、なぜ j ジェンダー平等にならないのか検証したい。
今年も、「よさこいの夏」がはじまった。
私の夏は、よさこいではじまり、よさこいで終わる。