観客とともに楽しむシニア・ボランティア、劇団「たんぽぽ」

(今回のお達者さん)
東京高退連 清水富夫さん(80歳)
(西多摩退職教職員協議会・劇団たんぽぽ副団長)

 

清水富夫さん

劇団「たんぽぽ」は、退職した教職員でつくる西多摩退職教職員協議会(退職協)のボランティア・サークルとして訪問公演活動をする平均年齢75歳のシニア劇団です。団員は現在25人。内訳は男性が10人、女性が15人です。団長は川向末男さん。訪問先は、都下の西多摩地域にある老人福祉施設、障がい者擁護施設、学童保育・保育園・小学校・地域老人会、子供会などです。
劇団結成のきっかけは、退職協の役員会で月1回集まるうちに、誰言うとなく「せっかく集まるのだから歌でも唄って楽しくやろう」ということになりました。学校の先生経験者が多いことから、子供たちと学芸会やクラス行事で歌を唄った人が多く、いろいろ唄うようになりました。そのうち「歌だけじゃつまらない。劇をやろう」となり、現役時代に学芸会で子供たちにやらせたオペレッタの楽譜や脚本を持っている人も出てきました。
 

「笠地蔵」を熱演する劇団「たんぽぽ」のみなさん。
(2011年11月、第30回公演、福生ユーアイビラ)

 

子ども達から贈られた「たんぽぽ」の劇団名

「折角やるのだから誰かに見せたい」ということなり、2005年12月、東京都西多摩郡日の出町にある「日の出福祉園」を訪問して初めてオペレッタ「笠地蔵」を公演しました。不安だった初公演を終えると「やればできる」の自信と観客が喜んでくれる「楽しみ」を実感しました。
劇団の「たんぽぽ」の名前は、その時に福祉園の子ども達から付けていただきました。こうした経緯で2006年2月、劇団として誕生しました。それから13年、年間3~4回の公演を行い、昨年で58回目となりました。公演を終えた時の充実感が次の活動を支えてくれました。団員も、先生以外の人も入ってきてくれており、内容が豊かになってきました。

舞台装置や衣装は、団員の手作り

悩みもありました。オペレッタなので歌が多く、しかも舞台装置や衣装、小道具などすべて自分たちで作らなければなりませんでした。でも団員には器用な人も多く、公演はどんどん発展していきました。またセリフを忘れたり、他人のセリフを言ってしまったり、舞台の上が大騒ぎになることもありました。
訪問公演の内容は「童話のオペレッタ」と「歌・ゲーム・アトラクション」を組み合わせて60分から70分にまとめ、コンパクトに楽しめる工夫をしています。オペレッタのレパートリーは、「笠地蔵」から始まり「泣いた赤鬼」・「裸の王様」・「夕鶴」の4本で、いずれも代表的童話の原作をオペレッタに脚色したオリジナル作品です。
アトラクションとしては、「南京玉すだれ」・「ゲーム」・「楽器演奏」・「朗読」などです。歌は「合唱」と「歌謡曲」を織り交ぜて「みんなで歌を」と歌唱指導をすることにしています。

「握手して見送る時が一番楽しい」

劇がフィナーレとなり、会場から出て行くお年寄りや子供たちに話しかけ、握手して見送る時、「それが一番楽しい」と団員のみなさんは口を揃えて言います。
学童の子供たちの目を見ると元気をもらいます。観客と目が合って互いに頷いたりもします。涙を流したり、笑ったりする顔に出会うと今でも励みになります。
団員の皆さんは、歌を合唱し、演技することで若さを持ち続けています。日本の平均年齢が男女とも80歳を越えましたが、まだまだと今後も体力の続くかぎり、精一杯、みんなが喜んでくれる芝居をしていきたいと思っています。

オペレッタ「裸の王様」のシーン。衣装は団員の手作り。
(2013年12月、第41回公演。奥多摩寿楽荘)