生き甲斐と楽しみをもらう施設訪問~マジックの演技を通して~
<今回のお達者さん>
岡山退職者連合
黒田日出国さん(76歳)
(日退教・岡山県退職教職員会)
きっかけは母が通うデイサービス施設の訪問
連合岡山退職者連合は、施設訪問ボランティア活動として会員の協力を得て琴の合奏、剣詩舞、安来節などを入所者の方々に披露し、楽しんでいただいています。私もマジックを受け持ち、訪問活動に参加しています。
私がマジックを始めたきっかけは、定年退職してデイサービスに通っている母の様子を初めて見に行ったことからです。
訪問した施設の利用者の皆さんが昼食後、それぞれ自由にくつろいでいました。突然の私の訪問にもかかわらず珍しさもあってか、皆さんの視線が一斉に私に集まり、自然と私と母の会話から皆さんとの会話に広がり、全体が打ち解けて和やかな雰囲気となりました。その日、母がデイサービスから帰ってきて利用者の方々が「『よい息子さんだね、また来るように言ってよ』と喜んでいたよ」と話してくれました。
年間20カ所以上の施設訪問でマジック披露
そこで私は「それならマジックでも習って、みんなに見せようか」と思いつくままに話したところ、「手先を動かすことは、ボケ防止にもなるし、みんな喜ぶし、それはいいわ」と嬉しそうに母が語ったので、すっかりその気になってしまいました。地元の新聞社が主催するカルチャースクールの「マジック講座」に通い、それからマジックのグループに入りました。月に2回、数人の仲間たちと勉強を始め、8年になります。
私のマジックは、母が通う施設と妻が勤務している保育園で演じさせてもらい、練習と披露の機会に恵まれてとても幸運でした。また地元のケーブルテレビでもニュースの中で度々取り上げられるなど、地域に知られるようになりました。今ではデイサービス、敬老会等の老人の集い、保育園、子ども会、障害者の作業所、病院をはじめ、珍しいところではお寺の講話のつなぎ、聴覚障害者の会など、年間20カ所以上の施設にボランティアとして招かれています。
演技の時間は約30~40分です。時には知り合いの腹話術やハーモニカの得意な人とともに行くこともあります。
「面白かったよ」「不思議だね」「また来てね」が嬉しい
悩みもあります。マジックがすべて思い通りに上手く行くとは限らないことです。いや、うまくいかないこと方が多いです。ネタを忘れたり、あがってしまい恥かくことも。ところがその失敗の方が多いに受けてが盛り上がることもあります。最近はわざと失敗をして喜んでもらうこともあります。そんなことで気楽にできるのも年のせいかなと思うようになりました。
訪問してとても嬉しいことは、利用者の方から帰り際に「面白かったよ」「不思議だね」「また来てね」と声を掛けていただくことです。ある施設では、施設長さんから「いままで一度も表情を変えたことがないのに、今日初めて笑顔を見ましたよ。本人も面白かったのかな。職員もみんなびっくりしていた」との感想もいただきました。また車いすに乗った利用者が、ネタのひとつのぬいぐるみのパンダを嬉しそうに撫でていたのも思い出します。
歳に負けず、マジックを続けたい
昨年末にテレビのイベントに出演した時のことです、芸が終わって司会者の方からインタビューを受け、「お上手ですねー、お歳はいくつですか」と尋ねられました。「“歳をとってもよくやるなー”というのが、司会者の本心。腕前よりも高齢であることを褒めているな」と直感しました。そんなこともあり「お呼びがある限り、気力がある限り、マジックを続けるぞ」と心に決めています。今年で私は喜寿を迎えました。