第9回幸せさがし文化展入賞者のご紹介(8)
第8回
所 属 NTT労組退職者の会奈良県支部協議会
賞 俳句の部「佳作」
夜桜見物で感動し平和を詠む
今回幸せさがし文化展の俳句の部に思いがけず佳作にお取り上げ頂き夢のようです。これぞ本当に身に余る幸せを頂きました。先の句は、地元の堤防の千本桜が開花し、夜桜を見に行ったときのものです。
雪洞が灯り、そぞろ歩きにつれて見上げれば幾重にも重なる花の上に丸いお月様がこうこうと輝き、その影が川面に映り、えも言われぬ幻想的な雰囲気を醸していました。その時、ふと思い出したのが、大阪の空襲を逃れて大和の親戚を頼り、一家疎開したことです。昭和20年、終戦の年の3月半ば頃で私が丁度10歳、3年生の時でした。以来、そのまま居ついて今年で満80歳になります。「平和な世なればこそ、今夜のような素晴らしい光景に会えるんだ」としみじみ感じた次第です。
傘寿まで残った俳句
俳句との縁は、NTTを退職後、知人の紹介で地元の10人余り句会に足を踏み入れたのが始まりで、かれこれ20数年になります。「仕事を辞めたらあれもしたい。これもしたい」と逸る心にいろいろなことを遍歴し、夢中になってみましたが、寄る年波で「目が疎くなる、根気がなくなる、中途半端な作品ばかりが溜まる、捨てられないなど、終活を始めねばならない時期にこれではいけない」と思い、後期高齢を期に少しずつ整理し始め、傘寿には俳句のみを残すことになりました。
俳句はいい事ずくめなのですが・・・
俳句のPRみたいになりますが、これだけは生涯杖になるように思っています。材料は、紙と鉛筆だけ。どこででも考えられる。文字の数は17文字ですが、その中に季語が入るので自分で作り出す文字は12文字のみ。費用要らずで、かさ張らず荷物にならず、その上、頭の体操にもなるので、認知症予防まで期待できます。また書き残すことで日記代わりにも。このように俳句はいい事ずくめなのですが、難点は、一朝一夕に上手にならないことです。
毎月一回の句会には、各自作品を持ち寄ります。無記名で各自が選者となって共感できる句を選ぶ平等主義です。自分が「これは」と思って出した句が一点も入らず、間に合わせに作った句が良かったりします。何年たってもどきどきです。
年に1、2回吟行で同じものを見て作句して披露するのですが、十人十色の目の付け所、言葉と季語の使い方や組み合わせの違いなど、多種多様があってとても楽しく勉強になります。
四季を味わい心豊かな八十路歩みたい
平素は「自分の見た感動を自分の言葉で、平易に第三者に伝わるように作ること」と先生方は言われますが、わずか17文字に省略するのに苦労します。見たままの説明では写真と一緒で「それがどうしたの?」と身も蓋もないものになるし、感情をこめて省略すると「独り善がり」で、他人様には何を言っているか分からない難しい句になってしまいます。
自分では上手に言葉を選んで苦心して推敲し「これでよし」と思って出してみても、誰も採ってくれない憂き目にも。何気なく自然に「平凡かな」と思った句が選に入る。とても不思議なものです。自分の見た、思った感動を他人様に上手く伝えるための言葉紡ぎですね。「灯台下暗し」で、自分の句の善し悪しが一番解かり辛いです。
逃げ水を追うは俳句のごときやも
「逃げ水を追うは俳句のごときやも」の句を作った事があります。俳句の尻尾を掴みたいと追っかけても、逃げ水のごとくかわされてしまいます。でも、めげずに追っかけるつもりです。暑さ寒さを友とし、花に遊び、鳥を詠み、巡り来る四季を十分に味わいたく、心豊かな八十路を歩みたいと願っております。
今回の事はこれからの励みになります。本当に有難うございました。