「ジェンダー平等って何・・・」(4)~言い伝え、慣習、迷信から~

高知県退職者連合 副会長
高知県教職員友の会 顧問
山中 千枝子

「敷居を踏んだらいかん」「鴨居にぶらさがったらいかん」「畳のヘリを踏まれん」から始まって、「朝クモは殺したらいかん」「ミミズにおしっこをかけたいかん」「霊柩車が来たら親指隠せ」「迷いばしをしたらいかん」「役職は男の人が、女は裏方に」「大事なことはお父ちゃんが決める」「女は、でしゃばるな」「家事は女性が、男は外で仕事を」・・・。サーッと数えただけでも50数個でてくる。

 子どもの頃、「どうして・・・」と、何回か尋ねたことがあるが、返事はいつも「昔から決まっていること」。「それって本当のこと?」と聞くと、「昔からずーといわれていることだから間違いはない」という。
 学校でも、「女の子の仕事でしょう。男の子がするのはおかしい」ということが多々あった。そういえば、かつて修学旅行に引率していた時に、「男の子出てきて、机を動かして」「女の子出てきて、スリッパを片づけて」。「女の子は、机を拭いて、食器を片づけて」「男の子は、先にお部屋に帰ってお風呂に順番に入って」・・・。

 学校での、運動会の種目でも、男の子の種目・女の子の種目と分かれていた。私が小学生の頃は、男の子は竹馬競争、リム回し、マスト登り。女の子はおじゃみ、お遊戯と決まっていた。小学校の校長で赴任した20数年前に子どもたちの運動会の種目は、男の子・女の子の区別はなかった。5・6年生が1・2年生に熱心に・丁寧に教えていた。そんな上級生を憧れと尊敬のまなざしで見つめていた1・2年生の姿が忘れられない。

 30年ほど前、高知県人権啓発センターに勤務していた頃のことである。「男女共同参画(ジェンダー平等の前進である)のモデル校に支援に入ったことがある。廊下の掲示物を見て、まずびっくり。「お母さんとお父さんのぬり絵」が廊下の壁一面に張られていた。お母さんは、エプロンをかけて買い物かごを持っているし、お父さんはスーツにネクタイ姿で書類かばんを持っている。そして、子どもたちが、親への感謝の気持ちを書いている。お父さんやお母さんがいない子どもたちは、どうしたんだろうと悲しくなった。指定授業後の話し合いの開口一番、「Aくんは男の子なのに、包丁の使い方が上手」「Bちゃんは、女の子なのにお米がとげない」・・・。私は、「ちょっと待ってやね」と言いかけて、その言葉を飲み込んだ。そして、それからの話し合いを黙って聞いていた。結局、残念なことに最後まで指摘する人がいなかった。

「言い伝え、慣習、迷信」が現在も残っている社会。いくつ知っていますか?そして、子どもたちにどう伝えていますか。もちろん、その中には語りついでいきたい大切なことや生活の知恵がたくさんあります。でも、その半面、間違った刷り込みをしていることや差別につながることも数多くあります。日常生活の中で、知らず知らずのうちに、刷り込まれている社会意識。ジェンダー平等の視点にたち、何をどう伝え、どう見ていくのか、一緒に考えたいものです。