年金、医療・介護の充実、安心で豊かな福祉社会づくりに取り組むと共に、生き甲斐づくり、社会貢献活動などを地域で取り組む退職者、年金生活者の組織です。

茶飲み話

茶飲み話 まあ、ゆったりと茶飲み話でも・・・。

 仲のいい友人や隣人とお茶をのみながら、ゆっくりとした時につつまれて交わす茶飲み話は楽しいものです。スローライフな私たちシルバーエイジの特権かも知れません。縁側で日向ぼっこをしながらいただくお茶のお供に、退職者連合のコラム「茶のみ話」で語らいに花を咲かせてはいかがでしょう。

茶飲み話[79]

 まさに「ご都合主義」とはこういうことをいうのだろう。国会会期末のドサクサに紛れて、突如として提出された自民党の「参議院選挙制度改革案」。議員定数を比例代表で4増、埼玉選挙区で2増の計6増とする内容だ▼3年ごとの改選数は比例で2、埼玉で1増える。来年夏の参議院選挙では、合区された「鳥取・島根」、「徳島・高知」の2選挙区で自民党の現職4人が改選を迎えることから、立候補できなくなる2人を比例代表で当選させるために、比例代表の定数を増やし、名簿の上位に優先枠を設けるという狙いが見え見えである▼現行制度は政党が比例名簿上の候補者に順位をつけない「非拘束名簿式」だが、国会に提出された自民党案には、上位2枠に限って「拘束名簿式」を導入することが盛り込まれている。現職議員を救済するために、世論に逆行して議員定数を増やすだけでなく、複雑で分かりにくい選挙制度をさらにわかりにくくしている▼参議院選挙区の「1票の格差」は合区によって2013年の最大4・77倍から2016年は3・08倍まで縮小された。それでも3倍を超えていた一昨年の参議院選挙を最高裁が合憲としたのは、来年(2019年)の選挙までに制度の抜本的な見直しを行い「必ず結論を得る」と公職選挙法の付則に定めた国会の議決を良としたからである▼参議院の選挙区で、人口の少ない県のみが単独では議員を出せなくなった合区の問題や、格差を3倍以内に抑えるために議員1人当たりの人口が最も多い県をどうするかなどは、だれが考えても悩ましい問題だろう。だからこそ「衆議院のカーボンコピー」と揶揄される「参議院のあり方」そのものを含めた選挙制度の改革のために、与野党が協力して知恵を出すべきなのだ▼参議院選挙が1年後に迫っても改革論議が進んでいないのは、国会の怠慢としか言いようがない。だからといって、3年前の改革をチャラにして、議席の維持を優先しようとするご都合主義丸出しの理不尽な自民党案では、国民の理解・納得が得られるはずがない。(良穂)[2018/7/3]

茶飲み話[78]

 6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」、いわゆる「骨太の方針」、新たな在留資格創設による外国人労働者の受け入れ拡大が目玉の一つになっている。新在留資格では、各種試験で「即戦力になる」と証明し、「ある程度日常会話ができる」と確認できれば、最長5年の在留を認める。滞在中に「高い専門性」が認められれば、別の在留資格に移行し、在留期限がなくなり家族を呼び寄せることも可能となる▼対象業種は建設、農業、宿泊、介護、造船の五つを想定している。政府は、早ければ秋の臨時国会に関連法案を提出し、来年4月から実施したい考えだ。背景には深刻化する人手不足があるのだが、専門家の中には「これは移民容認政策で大転換だ」と指摘する向きもあるようだ▼移民を受け入れるとなれば治安の悪化や、民族や宗教上の争いにも発展する可能性もあり、国内には根強い反対論がある。もちろん、国内労働者の雇用・労働条件にも大きな影響を及ぼすことになろう。6月27日に行われた党首討論で、国民民主党の大塚耕平共同代表は、「政府は外国人の単純労働を受け入れない従来の方針を根本的に変えようとしているのか」と質した▼これに対して安倍首相は「移民政策には当たらない」とし、「移民政策とは、外国人を期限を設けず受け入れることで国家を維持する政策。そういう政策は採らない」と反論している。しかし、政府内にも「米国並みの移民政策でないだけで、事実上の移民政策だ」とする声もあるという。人手不足に苦しむ中小企業だけでなく大企業からも、新在留資格を歓迎する声が出ているようだ▼かつて、高度経済成長期と言われた時代にも、製造業の多くが安上がりな労働力を求めて、韓国や中国からの労働者受け入れを主張したことがあった。それが形を変えて今日の外国人労働者研修制度に繋がり、高度成長期の終焉とともに、不安定雇用、低賃金労働者を激増させている雇用・労働法制の緩和・改悪に繋がっている。労働力不足というのなら、外国人労働者を受け入れる前に、まずは国内労働者の雇用・労働条件を改善すべきだ。労働力売り手市場は労働運動・労働組合にとっては、絶好のチャンスであるはずだが・・・。(良穂)[2018/6/29]

茶飲み話[77]

 日本では無許可の栽培や所持などが法律で禁止されている大麻草が、参議院議員会館の敷地内で見つかったという。6月21日の昼、議員会館の訪問者が雑草に交じって生えている大麻草4本を発見した。参議院議員会館の土地を管理する事務局担当者は、「このあたりで大麻草が発見されたのは初めてで、今後は議員に周知して敷地内に自生していないか確認したい」としている▼大麻(麻)の繊維は、日本では古くからしめ縄、神事のお祓いの大麻(おおぬさ)などに用いられ、種子などは嗜好品や医薬品などとしても使われてきた。大麻の葉を乾燥または液体化させたものがマリファナ、花から製造したものをガンジャ、樹脂をハシシなどといわれているが、それらが人間の精神等に害毒を起こすとして国際法上、流通や使用が制限されてきた▼日本では大麻取締法により、大麻草の花や葉の許可のない所持、輸入は医療目的であっても禁止されている。いったん大麻を使うと他のドラッグをも使用するようになり、他の薬物への入り口となる危険性があるからだという。以前は、七味唐辛子にも麻の実が入っていて、それを拾い集めて食べるのが楽しいという人もいたものだ▼大麻のせいではないと思うが、このところ政府の上級幹部や閣僚、自民党の大物議員のセクハラや品性のかけらも感じられないヤジや発言が後を絶たない。つい先ごろも自民党の二階幹事長が講演で、「このごろ子どもを産まない方が幸せなのではないかと勝手に考えている人がいる」[皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も発展する方向に向かうよう頑張ろう」とのたもうた。去年の11月には山東昭子参議院副議長が役員会で「子どもを4人以上産んだ女性を、厚生労働省が表彰することを検討してはどうか」と発言している▼いずれも庶民の生活実感からはかけ離れていて、雇用が不安定で結婚したくてもできない若者、子どもを産み育てたくてもそれができないご夫婦を激増させている原因の多くが、自民党の政策の欠陥にあることに気付いていないのだ。それにつけても、参議院会館の大麻種子が一体どこから来たものなのか、興味津津(きょうみしんしん)である。(良穂)[2018/6/27]

茶飲み話[76]

 国民感情を逆なでするような会見であった。加計学院の加計孝太郎理事長が6月19日、記者会見を開き、愛媛県新文書に書かれていた、面談時に安倍首相が「獣医大学いいね」と述べたとする件について、学園の渡邊事務局長が愛媛県や今治市に「虚偽の説明」を行ったことについて、あらためて正式に認めた。その上で、渡邉事務局長については月額給与の10%を6カ月間減給、自身も月額10%を1年間返納すると公表した▼渡邉事務局長が「安倍首相と加計理事長が面談したという嘘を言った」ことについて、加計理事長は「担当者から、事を前に進めるために言ったと報告を受けている」の一点張り。安倍首相との面談の事実を裏付ける愛媛県新文書の内容についても、「とにかく記憶にないし記録にない」との主張を繰り返すばかり▼さらに、安倍首相とは獣医学部新設の話をしたことはないかとの記者の質問に、「政治の話はいろいろ聞いたことがあるが、こちらの話なんかあまり興味ないと思う」と答えている。まさに獣医学部新設の実現が「虚偽の説明」からスタートしたことを認めつつ、事を前に進めるには「嘘を言うのは仕方がない」と言わんばかりの態度であった▼その上、責任の取り方が給与の返納で、森友公文書改ざん問題についての麻生財務大臣のやり方とソックリで、会見はたったの25分で打ち切り。察するに加計理事長が今頃になって会見を開いたのは、「腹心の友」や自身への追及を避けるため、大阪北部地震が起きた翌日というタイミング、そして通常国会の会期末、加えてサッカーW杯の日本代表の初戦の日で、大きなニュースや特集番組にならないことを狙ってのことだったのだろう▼政府・与党は、加計問題についてはこれで幕引きにしたいとしているが、自民党や公明党の国会議員や支持者のみなさんは、本当にこれで一件落着だと思っているのだろうか。とりわけ「誠実・清潔・正義の党」を売り物にしている公明党や、支持団体の創価学会のみなさんはどうなのか。「加計屋も安倍屋も互いに悪よの~」で済まされる話ではない。世の中の不正・理不尽に目をつむり、政治の私物化を許すような政党や政治家にこの国を任せてはおけない。(良穂)[2018/6/20]

茶飲み話[75]

 北朝鮮の非核化をめぐって、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長によるシンガポール会談が行われた。北朝鮮の非核化による朝鮮半島のみならず東アジア全体の平和と安定は、わが国にとっても極めて重要な問題である。会談結果についての評価は様々だが、新たな歴史の幕開けの一歩となることを期待したい。同時に日本と北朝鮮の間にはもう一つ、「日本人拉致」の問題が未解決のまま横たわっている▼これについて安倍首相は「虎の威」を借りて解決への糸口を見出そうと、トランプ詣(もうで)を繰り返してきた。米朝トップ会談の後「トランプ大統領の尽力で交渉への糸口はほぐれた。私自身が金委員長と直接会って解決したい」との意思を明らかにし、9月にロシアで開かれる国際会議の場での会談を模索しているというが目途は立っていない▼北朝鮮は長年、拉致への関与を否定してきた。しかし、2002年9月に平壌で行われた日朝首脳会談で、金正恩委員長の父親・金正日朝鮮労働党総書記が小泉純一郎首相に対し,「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走って事件を起こした」として拉致への関与を認め、謝罪し、再発防止を約束した。そして、2004年5月に行われた2回目の会談で、5人の拉致被害者の帰還が実現した▼日本政府が認定している拉致被害者は17人。もちろん「特定失踪者」を含めると、こんな小さな数字ではない。しかし北朝鮮側はその後、このうち男性6人、女性7人の計13人については公式に認め、5人が日本に帰国しており、残り12人については横田めぐみさん、田口八重子さんなど「8人は死亡、4人は入国自体が確認できない」として「問題は解決済み」とする態度を崩していない▼子供のころ夜遊びが過ぎると「人さらいがくるぞ」と親に戒められたものだ。そんなおぞましいことが隣国の、しかも国家機関の手で実際に行われていたと思うと、いまさらながらに空恐ろしさを覚える。北朝鮮が普通の国として国際社会の仲間入りをしたいなら、忌まわしい「誘拐強盗」の過去をきっちりと清算することが先決だ。(良穂)[2018/6/18]

茶飲み話[74]

 事実上の与野党全面対決となった新潟県知事選挙、自民党と公明党が支持した前海上保安庁次長の花角英世氏(60)が当選した。立憲民主、国民民主、共産、自由、社民の5党と衆議院院内会派「無所属の会」は、元社民党県議会議員の池田千賀子氏(57)を推薦して闘ったが、3万7千票の差をつけられて惜敗した▼米山隆一前知事が女性問題をきっかけとして辞職したことに伴って行われたもので、前回(2016年)に続き、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働などを争点に、与野党全面対決の様相を帯びた選挙であった▼池田氏は森友学園、加計学園問題などを中心に、嘘と忖度と情報隠しに塗り固められた中央政治の現状を批判し、この選挙は「安倍政権への審判」と位置付けるとともに、原発問題では、国内全原発の廃炉を主張し、柏崎刈羽原発についても再稼働の是非を「県民投票などで決める」などと訴えた▼一方、新潟県副知事の経験もある花角氏は「私も原発は不安だ」として、再稼働に慎重だった米山前知事の路線を継承すると争点をぼかし、安倍政権への批判をかわすため「県民党」を掲げ、政党色を全く表に出さない戦術に終始していた。入れ替わり立ち替わり現地入りした自民、公明の幹部も街頭演説には立たず、「中央直結の県政」を餌に業界団体などを個別に訪問し、徹底して組織の引き締めに回っていたという▼その結果、自公支持層だけでなく原発再稼働に慎重な有権者や、人口減少に危機感を持つ無党派層にも支持が拡がり、接戦を制したというのがマスコミ評である。しかし、選挙戦最終盤では、池田陣営を誹謗・中傷するインターネットメールが、回り回って元県民の筆者のところにまで送られてくるなど、汚れた一面を垣間見せた選挙でもあった▼花角氏の当選確実が出た後、公明党の斎藤哲夫選対委員長が、「今回の選挙は、県民の生活や経済、地域の活性化が最大の争点だったので、安倍政権が信任されたというものではないと思っている」とNHKのインタビューに応えていたのが妙に印象的だった。(良穂)[2018/6/11]

茶飲み話[73]

 「南北、ならびに米朝首脳会談の際に、拉致問題が前進するよう、私が司令塔となって全力で取り組む」-。4月22日に開かれた北朝鮮による拉致被害者家族会や支援団体「救う会」などが主催する『国民大集会』での安倍首相の言である▼安倍首相は、4月18日の米国フロリダ州のバームビーチで行われた日米首脳会談で、トランプ大統領が「朝鮮労働党・金正恩委員長との会談では拉致被害者を日本に戻すために最大限の努力をする」との約束を取り付けたことを強調。そのうえで「日米で緊密に連携し、拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく」と続けた▼首脳会談では見るべき成果がなかったことから、何とか支持率回復に利用しようという思いがあってのことだろう。これまでとはかけ離れた踏み込みに、拉致被害者家族の会の蓮池透さん(蓮池薫さんの兄)は、ツイッタ―で「司令塔?この期に及んで、どうやって?」と書き込み、安倍首相の発言を批判している▼権勢をもつ者に頼って威張ることを「虎の威を借る狐」という。虎が狐を食おうとしたときに、狐が「私は天帝から百獣の王に任命された。私を食べたら天帝の意にそむくことになる。嘘だと思うならついて来い」と虎に言った。そこで虎が狐の後についていくと、行き合う獣たちはみな逃げ出していく。虎は獣たちが自分を恐れていたことに気づかず、狐を見て逃げ出したのだと思い込んだ▼そんな逸話のように、相手がひれ伏してくれるならば万々歳だ。しかし、蓮池さんは「わざわざアメリカまで行ってトランプ大統領にお願いするというのは、自分たちがお手上げということの裏返しなわけですよ。それじゃまずいと思うし、トランプさんがどういう風にするのかまったく分からない」と疑問を呈している▼シンゾー、ドナルドとファーストネームで呼び合い、ゴルフを楽しむ仲だと安倍首相は誇らしげだが、これまでのあれやこれやを見てみると、藤子・F・不二夫さんの「ドラえもん」に登場するジャイアンにへつらうスネ夫の姿を彷彿(ほうふつ)する。虎の威を借りて「圧力、圧力」を連呼しているうちに、日本だけが置いてけぼりにならなければ良いが・・・。(良穂)[2018/4/25]

茶飲み話[72]

 ♪これも愛 あれも愛 たぶん愛 きっと愛~、女優であり歌手でもある松坂慶子さんの「愛の水中花」の歌い出しである。安倍首相と官邸、関係省庁がひた隠しにしていた疑惑・疑問が、一斉に噴き出してきた。森友学園への国有地の異常な値引き売却に絡む財務省の呆れた舞台裏であり、防衛省のイラクやスーダンへの自衛隊派遣部隊の日報隠蔽であり、安倍首相の「腹心の友」が経営する加計学園の獣医学部新設にかかる「首相案件」問題などなどである▼野党議員の厳しい追及に、これら疑惑・疑問の舞台に立つ安倍首相もその他の役者も、みんな「知らぬ、存ぜぬ」で押し通そうと躍起である。そんなやり取りを見ていると「愛の水中花」の歌い出しを換骨奪胎(かんこつだったい)し、♪これも嘘 あれも嘘 たぶん嘘 きっと嘘~と、口ずさみたくなる▼そういえば、このところテレビ画面に見る安倍首相の鼻が、どんどん伸びているような気がしてならない。まさかイタリヤの児童文学作品「ピノキオの冒険」のピノキオのように、嘘をつくたびに鼻が伸びる、そんなことではないと思うのだが・・・▼これら疑惑・疑問については徹底的な真相解明が必要だ。しかし始末が悪いのは、森友学園問題も、加計学園の獣医学部新設も、自衛隊の海外派遣部隊の銃器使用による駆けつけ警護も、既成事実が先行してしまっていることである。そのあたりに、国会審議の間は不利な情報は徹底的に隠し通し、既成事実をつくってしまえば「あとは何とでもなる」という安倍政権の姑息な手法が透けて見えてくる▼そんな折も折、財務省事務次官のセクハラ疑惑や、厚生労働省健康局長の部下職員に対する不適切メールなど、芸能雑誌記者が喜びそうな、”下ネタまがい”の問題まで飛び出してきた。「愛の水中花」は歌いだしのあとに、♪だって淋しいものよ 泣けないなんて そっと涙でほほを 濡らしてみたいわ 一人ぼっちの部屋の ベッドの上で~と続いている。野党の追及で国会運営はままならず、内閣支持率が目に見えて下がっていく中で、今は安倍首相もそんな気持ちでいるのかも・・・。(良穂)[2018/04/13]

茶飲み話[71]

 認知症高齢者が増え続け、それに起因する自動車運転事故をはじめ、近年さまざまな事故が多発している。2007年に愛知県大府市で、徘徊中の男性が列車にはねられて死亡した事故をめぐり、JR東海が家族に720万円の損害賠償を求めて争われた裁判があった▼一審の名古屋地裁は「目を離さず見守ることを怠った」と男性の妻の責任を認定。長男も「事実上の監督者で適切な措置を取らなかった」として、2人に原告側の請求通り720万円の損害賠償を命令。2審の名古屋高裁は「20年以上男性と別居しており、監督者に該当しない」として、長男への請求は棄却したものの、妻の責任は一審に続き認定し、359万円の支払いを命じた▼これに対して最高裁は2016年3月、「家族に賠償責任があるかどうかは生活状況などを総合的に考慮して決めるべきだ」として、「賠償責任なし」の逆転判決を下した。しかし、同時に判決文には「法定の監督義務者に該当しない場合であっても、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には、損害賠償義務を問うことができる」と記されている▼その後、認知症高齢者にかかる事件・事故の裁判等で、家族に対する監督責任を軽くしているのではないかとの被害者側の指摘もあるが、家族が過剰な賠償責任が負わされるという心配がなくなったわけではない。名古屋高裁の判断によって、むしろ増大したといえよう▼退職者連合はこうした事態を想定し、国に対し「認知症対策基本法」の制定を求めるとともに、認知症高齢者に起因する損害について「家族に過剰な賠償責任を負わせない方策」の検討を訴え続けている▼一方で、神戸市や神奈川県大和市などは、独自の救済制度作りを行っている。神戸市は納税者一人当たり年間400円増税し、それを原資にして2019年度中に発足させるという。神奈川県大和市は2017年から、自治体として公費で保険会社と契約し、最大3億円が支払われる保険に加入している▼2025年には認知症高齢者は700万人に達するという。一刻の猶予もならない。国がやらないのなら自分たちでやるしかない。地方自治体にこうした動きが広まることを期待する。(良穂)[2018/04/11]

茶飲み話[70]

 今回はちょっぴり難しいAIとBIの話。AIはアーティフィシャルインテリジェンスの略で日本語では「人工知能」。BIはベーシックインカムの略で日本語訳は「基礎所得補償」とか、「最低所得保障」とでもいうのだろうか。国内でこの二つの言葉が頻繁に使われるようになったのは、政府が2016年6月に発表した「日本再興戦略2016」が発端になっているようだ▼「日本再興戦略2016」は、名目GDP600兆円に向けた成長戦略のために、人工知能(AI)やロボットの活用による「生産革命」を一つの課題に掲げている。すなわち、労働力人口が減少する中で、新たな有望成長分野を創出するために、労働力に替えて人工知能やロボットの積極的な開発・導入が欠かせないというである▼しかし同時に、それが幅広い産業分野に及べば、仕事がAI(人工知能)やロボットにとって代わられ、雇用や所得を奪われる労働者が多数出るのではないかとも指摘している。そこで登場するのがBI(ベーシックインカム)の考え方である。国民の最低生活を保障するため、一定の所得以下の国民一人一人に現金を給付するという施策である▼これについては多くの先進工業国で議論していて、スイスでは2016年に導入についての国民投票を行った。しかし、最低保証額を一人月額28万円に設定したことなどから、「高額すぎる」との批判にさらされ、あえなく否決された。フィンランドでは昨年5月から、対象者2千人に一人月額6万8千円を支給する実験を続けている▼わが国でBIを実施するとなれば、給付金額や対象者数、財源など検討課題は多い。一人月額7万円とした場合100兆円ほどの財源が必要で、各種社会保障財源を統合しても30兆円ほどにしかならず、70兆円は増税に頼らざるを得ないという論もある▼AIやロボットによる生産革命は急ピッチで進んでいる。労働者の犠牲の上に成り立つ日本再興戦略や経済発展などあり得ない。BI導入についての議論が重要であることに異論はないが、その前提となるのは「富の再分配」という確固たる理念でなければならない。(良穂)[2018/04/10]

茶飲み話[69]

 何をどのように考えようと個人の自由である。しかし、それを口にしたり行動で表すとなれば、そこには当然責任が伴ってくる。そんな当たり前のことが分かっていない国会議員がいたことに驚く。自民党の和田政宗参議院議員(宮城県選挙区)である▼氏は3月19日、森友学園への国有地売却に関する決裁文書改ざんについての参議院予算委員会の集中審議で、「太田理財局長は民主党政権時代に野田首相の秘書官だった。増税派だからアベノミクスをつぶすために、安倍政権を貶める(おとしめる)ために、意図的に変な答弁をしているのか」と詰め寄った▼これに対して太田理財局長は、「私は公務員としてお仕えした方に一生懸命お仕えするのが仕事なんで、それをやられると、いくらなんでもそんなつもりは全くありません。それはいくらなんでも・・・、それはいくらなんでもご容赦ください」と怒りを抑え、声を震わせて応えていた▼和田議員の質問は、安倍政権擁護のお先棒を担ぐために自分勝手な想像だけで論旨を組み立て、安倍総理周辺からの”受け”を狙ったことは見え見えである。加計学園問題での文科省前事務次官の前川喜平氏に対する仕打ちを見ても、安倍首相を守るために、与党議員が権力を笠に着て官僚を誹謗中傷し貶める(おとしめる)手法は、お取り巻き議員の常道手段になっているようだ▼和田議員はそのあと、「党にも官僚にも嘘をつき、答弁がふらふらする太田理財局長、理財局、財務省官僚には、何らかの意図があるのではとの疑問すら感じる状況」-。「太田理財局長には申し訳ないが、あそこまで言わなければ財務省の調査は真剣にならない」と、わけのわからないことを言っている▼集中審議に臨む与党議員がこんな状態では、安倍政権に本気で真相解明を図る気持ちがあるとは思えない。改ざん前の文書に安倍昭恵夫人の名があったことについて太田理財局長は、「首相夫人だから・・・」と、暗に忖度(そんたく)が働いたことを認めている。真相究明のために佐川前理財局長の証人喚問も重要だが、見え隠れする「首相夫人の影」をはっきりさせなければことは収まらない。(良穂)[2018/03/20]

茶飲み話[68]

 中国の故事に「泣いて馬謖を斬る(ないてばしょくをきる)」という成語がある。蜀(しょく)の武将・馬謖が諸葛亮(諸葛孔明)の指示に背いて敗戦を招いた。その責任をとって馬謖は処刑されることになるが、愛弟子の馬謖の処刑に諸葛亮は涙を流した。後に「馬謖ほどの有能な将を・・・」と彼を惜しむ意見もあったが、諸葛亮は「軍律の順守が最優先」と再び涙を流しながら答えたという(ウィキペディアから)▼1年前、森友学園疑惑の真っただ中で、安倍総理を頂点とする政権とのかかわりがないことを、体を張って守り抜いた理財局長の佐川宣寿氏。昨年7月、「適材適所」ということで国税庁長官に抜擢された。しかしその後、国民の前には全く声も発せず姿を見せることもなかった。7カ月たってようやく姿を現したと思ったら、いきなり「国会審議を混乱させた責任をとって国税庁長官を辞任し退職」だという▼途端に出るわ出るわ、改ざんされた森友学園と近畿財務局の土地売買交渉に関する財務省の決裁文書、安倍政権とのかかわりが類推される関係者の名前や文言などは、すべて削除され書き換えられていた。ページ丸ごと削除された個所もあるという。これについて、佐川氏の長官就任を「適材適所」と強弁していた麻生財務大臣。その舌の根も乾かぬうちに「書き換えは佐川の指示で財務省の一部の者がやった」と罪を押し付け、自身の責任回避に躍起である▼公務員としてのモラルをかなぐり捨て、国民や国会をだまし通してまで安倍政権を守るための盾(たて)となって奮闘していた「優秀な官僚」を、トカゲの尻尾切りにして「我が身を守ることが最優先」の安倍総理や麻生財務大臣。泣いて馬謖を斬った諸葛亮と比較しようとも思わないが、あまりにも醜く哀れにさえ見える▼それにつけても、わが国憲政史上まれにみる公文書の改ざん事件であり、議会制民主主義の否定である。何のための誰の指示によるものだったのか、徹底解明が求められる。同時に、公文書改ざんは本当にこれだけなのか。加計学園問題を含め安倍総理の周辺に絡む疑惑が多すぎて、その胡散臭さが気になってならない。(良穂)[2018/03/13]

茶飲み話[67]

 4月1日から「無期転換ルール」が本格始動する。2013年に改正された労働契約法によって「有期契約が反復更新され、通算5年を超えたときは労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約に転換する」ことが企業に義務付けられたことによるものである▼非正規と総称される不安定雇用労働者は2,000万人を超え、雇用労働者全体の約4割を占めている。そのうちの約2割、400万人が本人の望まない、いわゆる「不本意非正規」だといわれている。そうした人たちにとって無期転換ルールの始動は、ちょっぴり朗報に聞こえるかもしれない▼しかし、手放しで喜んでばかりはいられない。「無期転換イコール正社員」ということにはならないからである。この法律の規定では雇用契約期間の変更だけで、賃金や昇進・昇格をはじめ、その他の雇用・労働条件を「正社員と同一」にすることにはなっていないからである▼すでに新ルールの適用を避けるため、有期契約が5年を超えないよう契約終了(雇止め)を行っている企業が続出しているという。また、賃金などの労働条件を変更せずに雇用期間だけを変える「無期限契約社員制度」や、勤務地や職務、労働時間などを限定した「限定社員制度」を作って対応する企業も少なくないという▼な~るほど、安倍総理が「この国から非正規という言葉を一掃する」と得意げに言っているのは、こういうことだったのか・・・。これでは非正規という言葉はなくなっても、低賃金労働者が構造的に位置付けられるだけであって、安心して働き続けることのできる条件づくりにはつながらない。働き方改革というなら、雇用形態によって賃金やその他の労働条件が大きく異なり、それを正当化している雇用・労働法制の立て直しこそ急務である。(良穂)[2018/02/05]

茶飲み話[66]

 過日この欄で、日本経済新聞の1月22日付トップ記事、『世界の賃上げに日本が取り残されている』について取り上げた。今度は社説の問題で・・・。2月1日付け同紙の社説は、生活困窮者自立支援法と生活保護法の改正問題について述べている▼政府が今国会に生活困窮者自立支援法と、生活保護法の改正案を提出する方針であることから、『生活保護の一歩手前の人への就労支援を充実し、自立を後押しするのが最大のポイントだ。長期間無職だったり、仕事が不安定だったりする人は多い。早くから支援すれば、生活保護に頼らないですむ人が増える。実効性ある仕組みを整えてほしい』―。こんな書き出しで始まるこの社説、問題は後段の生活保護法についてのくだりである▼『今回の改正では、生活保護費の半分近くを占める医療扶助も見直す。過剰な受診や投薬があるとされ、新たに指導員が病院に同行するなどの対策を講じる。だが、防止策としては不十分だ。受給者は、病院窓口での負担がない。本人に後で還付する仕組みを含め、ごく少額でも負担することを真剣に検討すべきだ』と述べている。まさに「生活保護受給者が窓口負担を免がれているのはけしからん」と言わんばかりの主張である▼生活保護受給者に窓口負担を求めるということは、たとえ少額であっても、それが払えないために病気になっても病院に行けない、そんな人が増えるということであり、「後で還付する仕組み」では間に合わないのである。そして社説は、『生活保護は病気や障害などで生活に困った人を守る「最後の安全網」だ。いたずらに保護費が膨らめば、制度維持は難しくなる』ーと脅し口調で締めくくっている▼生活困窮者、生活保護受給者が増えているのは、アベノミクスによる経済最優先の政治が続く中で、雇用・労働法制が骨抜きにされ、不安定雇用、低賃金が拡がっていることが最大の要因ではないのか。方向違いの政策で、いたずらに保護費を膨らませているのは政権・与党であり、そのことが制度の維持を難しくしているのである。よく読んでみればこの社説、生活困窮者、生活保護受給者の実情から目を逸らしたまま、社会保障給付費の押さえ込みに躍起になっている政府・与党の尻押し記事だったようだ。(良穂)[2018/02/05]

 

茶飲み話[65]

 『世界の賃上げに日本が取り残されている。大企業の賃上げ率は4年連続で2%を超えるが、主要7カ国で日本だけが2000年の賃金水準を下回る。(中略)このままではデフレ脱却の足取りも弱くなる』―。1月22日付日本経済新聞の一面トップ記事の書き出しである。普段の日経とはどこか調子の違う見出しに釣り込まれ、思わず読み進んだ▼『人手不足が続くなか、省人化投資による生産性向上の取り組みが相次いでいる。経営学のセオリーでは、従業員一人ひとりの生産性が上がれば、企業の収益力が高まり、対価としての賃金も上がる。だが、この生産性と賃上げの関係に異変が生じている。日銀によると、この5年間で日本の労働生産性は9%伸びた一方で、物価変動の影響を除いた実質賃金の上昇率は2%にとどまる。(中略)過去20年、デフレが続くなか、多くの企業が「人件費が増えると国際競争力が落ちる」と考え、賃上げを渋ってきた』と続く▼よくよく読んでみれば何のことはない。アベノミクスの失敗でデフレ脱却の実効が上がらず、3%の賃上げを経団連に要請している安倍政権への「提灯記事」ともいうべき内容だった。「多くの企業が人件費が増えると国際競争力が落ちると考え、賃上げを渋ってきた」とあるが、その元となったのは1995年、当時の日経連が発表した研究会報告「新時代の日本的経営」であり、それを歴代自民党政権が政策面で具現化してきたのである▼新時代の日本的経営のなかで日経連は、日本が国際競争に勝ち残っていくために、これからの雇用は「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」に分けて行うべきだと述べている。言い換えれば、「これからの雇用は必要最低限の管理職要員と技術開発要員などのエリートを確保したら、その他はすべて首切り自在の労働者にすべきだ」し、それにあわせて賃金体系なども整えるべきだとしているのである▼以来、歴代自民党政権は雇用・労働法制を緩和・改悪し、被用者保険にも入れない「安上がりな労働者」を増やし続けてきた。同じ仕事、同じ責任を持たされながら、雇用形態によって賃金も雇用条件も大きく異なり、それが正当化されている今日の雇用・労働法制の改善がなければ、安倍政権が言う「働き方改革」は「仏作って魂入れず」、口先のことでしかない。(良穂)[2018/01/23]

茶飲み話[64]

 昨年、静かなベストセラーになった「長生き地獄」という本(SB新書)。著者は松原惇子という人で、副題が「長生きが幸せの時代は終わった」である。はじめ書きの中で著者は「最近、長生きしたくないという声をよく聞くようになった。60代の人だけでなく、20代の人までが、本気で長生きを恐れているのには驚く。その理由は、仕事の不安、結婚して生活できるかの不安、年金の不安などで、長生きが幸せにつながらないからのようだ」と述べている▼自身が主宰するNPO法人で「あなたは長生きがしたいですか」というアンケート調査を行っている。回答者は50代から80代までの独居女性64人。そもそも長生きとは何歳ぐらいをイメージするかという問いには、90歳が28人、次いで80~85歳26人、95歳5人の順。それを踏まえて「あなたは長生きしたいですか」には、「長生きしたい」が9人、「したくない」が37人、「わからない」が18人だったという▼長生きしたくない理由としては、体力の低下、脳の老化、認知症、健康に自信がない、老人病院に入れられて恐ろしい、質の悪い長生きは辛い、自分のことができなくなってまで生きたくない、楽しいことがない、弱者にやさしくない社会、経済不安、1人が辛い・・・などなどである▼著者は「頼りにならない日本の福祉」についても指摘している。「65歳になり年金受給資格ができ、楽しみにしていた年金受給額を見て驚いた。満額貰えるはずの国民年金は削られて、悲しい数字が・・・。国を信じてはいけないと、昔友人から教わったのに、国を信じて国民年金を払い続けてきたわたしがバカだった」と述懐の弁▼そして「年金が減額になり、医療費がアップし、介護保険料が高くなり、サービス利用料も高くなる。入所条件は厳しくなり、施設利用料は高くなる。高齢者の身体は年々弱くなり、介護する人の手が足りなくなる。スマホ片手に平気で優先席に座っている今の若者たちが、将来高齢者の世話をする仕事に就くとはとても思えない。老人は汚いから捨てようと言い出しそうだ。こんなお先真っ暗な社会にしたのは誰? 政治家? 親? わたしたち国民か」と。首筋が寒くなるような厳しい指摘。一読の価値ある書である。(良穂)[2018/01/22]

茶飲み話[63]

 日本中央競馬会(JRA)は政府の要請を受けて、昨年の12月28日からギャンブル依存症対策の一環として、家族からの申告に基づきインターネットによる馬券販売を停止している。同居する家族が申請書に診断書を添えてJRAに提出し、JRAが認定すれば本人の同意なしでもネットでの馬券販売を停止する仕組みである。今後ネット販売に限らず競馬場や場外馬券売り場などへの適用を検討するという。政府は、パチンコでは12月からすでに実施しているといい、4月からは競輪やオートレースなどにも拡げたいとしている▼一昨年の臨時国会最終盤で、自民・維新・公明の一部などによって強行可決された「IR推進法」には、「ギャンブル依存症対策を求める付帯決議」が付けられた。そのため、この制度導入は、今年の通常国会でカジノ賭博場設置を柱にした統合型リゾート施設(IR)推進法を、何としても成立させたい政府・与党の対策法制定前の「実績づくり」の一つであることは明らかである▼しかし政府・与党の関係者が、この程度のことで実効的な依存症対策ができると思っているとしたらとんでもない間違いである。ギャンブル依存症の根深さ、恐ろしさを過小視しすぎているといわざるを得ない。そもそも依存症に罹った本人や家族の中で、どれほどの人がそんな厄介な手続きをしてまでギャンブルへのアクセスをやめよう、やめさせようとするだろうか。ともすればそのことが原因となって深刻な家庭騒動に発展することさえ懸念される▼政府が昨年8月に行った「観光先進国の実現に向けて」と題するパブリックコメントの集約結果が12月半ばに公表された。それによれば提出者数1,234人のうち、829人(67.1%)がカジノ解禁に反対している。また、IR導入による経済効果には93.5%(1,155件)が否定的な見方をしており、効果的だとする意見はわずか5%(62件)にすぎない▼安倍政権がこうした多数世論に耳を貸さず、強引にカジノ賭博を合法化しようとしている背景には一体何があるのだろうか。トランプ大統領との密約説や対日経済要求、アメリカ巨大資本の暗躍などがあると指摘する向きもある。日本の良き伝統を壊し、善良な市民の心を蝕むカジノ賭博。安倍政権のそんな悪しき経済振興策に与(くみ)する為政者や経済人の心がおぞましい。(良穂)[2018/01/05]

茶飲み話[62]

 高齢者や低所得者向けに、民間の空き家や空き部屋を賃貸住宅として活用する制度が、本年(2017年)10月25日からスタートした。4月に成立した「改正住宅セフティネット法」にもとづく制度である。これについては、退職者連合の男女平等参画推進委員会が、2014年から「低所得高齢単身女性問題に関する政策・制度要求」として、その実現を強く求めてきた▼要求内容は①国・地方自治体は、居住の継続が困難な状態にある低所得高齢者、とりわけ低所得高齢単身女性に対し、一定の質が担保された住居の確保と速やかな入居・転居を図ること、②国・地方自治体は個人情報に配慮し、常に低所得高齢者の住居の種別実態ならびに暮らしの状況把握を行ない、低所得高齢者、低所得高齢単身女性が安心して暮らせる住環境の整備をはかること、などである▼これに対して改正法では、空き家などの所有者が高齢者や低所得者などの入居を拒まない物件を自治体に登録し、それらの物件を国がインターネット上に開設した専用ページ「住宅セフティネット」で検索できるようにしている。制度を活用して住宅を決めた低所得者(月収15万8千円以下)には、月額最大4万円の家賃補助や、契約の際に必要な家賃の債務保証料を最大6万円まで助成する▼高齢者の生活支援などを行っているNPO法人などを自治体が「居住支援法人」に指定し、住宅情報の提供や見守りサービスの紹介、家賃の債務保証などの支援を実施。また、登録住宅として活用される空き家には、耐震改修やバリアフリーなどを行う場合、1戸当たり最大200万円の助成金が支給される▼2015年には593万世帯であった65歳以上の単身者世帯が、2035年には762万世帯に増加するという。生活保護受給は160万世帯を超えているが、その約5割が借家住まいであり、それに対して貸し手の6割が入居に拒否感をもっているという調査結果もある。制度はスタートしたばかりだが、自治体は積極的なPRを行い、実効あるものにしてほしい。(良穂)[2017/12/13]

茶飲み話[61]

 民間先行による労働界の統一で、通称「民間連合」が結成されたのは1987年11月、今年で30年を迎えた。そして2年後の1989年11月には、官民統一による「連合」が誕生した。官民統一連合の誕生は、日本の労働運動・労働組合の壮大な力合わせといわれ、「力と政策による新しい運動のスタート」として労働関係者だけでなく、政界・官界・経済界からも好感をもって受け止められた▼「力と政策による新しい運動」とは、それまでの労働4団体(総評・同盟・中立労連・新産別)が競合するなかで、総評系労働組合を根強く覆っていた極端な政治的イデオロギーや、「とにかく要求し闘いとる」といった運動スタイルから脱却。労働組合自らが「政策を立案し、提言し、実現させる力」をもった運動ということである▼官民統一から間もなく30年。連合の政策・制度要求は多岐にわたり、国民生活のあらゆる分野に及んでいる。国の政策決定の場への参加も、連合の役職員を中心に延べ240人を超えている。しかし「要求と提言は立派だが、それを実現させるための運動力に欠ける」と指摘する声もある。どんなに立派な政策や提言も、実現に結びつけるための力や運動がなければ絵に描いた餅に等しい▼連合が掲げる「労働を中心とした福祉型社会」や「働くことを軸とする安心社会」は、労働運動・労働組合の目的そのものである。しかし、それを具現するには、勤労国民が理不尽と思っているさまざまな問題や課題を素早く察知し、社会的共感を得られる運動として取り込むことができるかどうかである▼どちらかといえば、そうした運動は、自由にして民主的な労働組合にとっては苦手としてきた分野だったかもしれない。しかし、堀の外、塀の外の運動へ足を踏み出すことができなければ、いつまでたっても労働運動・労働組合への社会的共感と信頼は得られない。1996年2月、連合の初代事務局長・山田精吾さんは「経済闘争が難しいときは政策で取れ」という言葉を残して逝った。(良穂)[2017/12/12]

茶飲み話[60]

 「イヴァンカは 笑顔で稼ぐ 57億円」―。安倍総理は11月3日、海外の女性指導者らを東京に招いて開かれた国際シンポジウムに、トランプ大統領に先立って来日した大統領の長女・イヴァンカ大統領補佐官とともに出席。イヴァンカさんが設立にかかわった「女性起業家を支援する基金に5000万ドル(約57億円)を拠出する」と表明した▼マスメディアは、あたかもイヴァンカさんが運営する基金への拠出のように報じたが事実は違っている。イヴァンカさんの発案で本年7月に設立されたのは事実だが、彼女は「基金の運営・管理、資金調達には関与していない」という。運営しているのは世界銀行で、アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダ、中国、日本、韓国など13ヵ国が参加している。安倍総理得意のパフォーマンスだった▼「敗戦の 日を呼び覚ます 横田基地」-。羽田でも成田でもなく、米軍横田基地に降り立ったトランプ大統領。1945年8月30日、神奈川県厚木飛行場に降り立ったマッカサ―連合国司令長官と重ねてみた者も少なくなかったろう。トランプ大統領滞在の3日間、安倍総理は、「ドラえもん」のジャイアンにへつらうスネオのように、“おもてなし”に懸命だったが、進駐軍にへつらう昔日日本の姿にも似ていたと知る人はいう▼「アメリカの メディアも揶揄する おもてなし」―。安倍総理は「日米同盟」を強調するが、国家間の同盟とは対等な立場に立って成り立つもの。今回のトランプ大統領に対する安倍総理の対応は、同盟というより「隷属関係」に見えたのは筆者だけではあるまい。6日付けのワシントン・ポスト紙も「日本の指導者である安倍総理大臣はトランプ大統領の忠実な相棒を演じた」と揶揄している▼「ニッポンの 味がしたでしょ 独島エビ」―。トランプ大統領と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との晩さん会に元慰安婦の女性が招待され、竹島付近の海域で採れたエビを「独島エビ」として振る舞われたという。この「反日メニュー」、「アメリカ追随の日本とは一線を画している」という金正恩向けのメッセージだったのだろうか。それにつけても、トランプ大統領を迎えて、やけに存在感を見せつけた中国の、これからの動きが気にかかる。(良穂)[2017/11/13]

茶飲み話[59]

 思い起こせば7年前、トヨタ自動車の豊田彰男社長が大規模なリコール問題で米国議会下院に呼び出され「物づくりを実践するための最大のカギが人づくりであるという信念を持っている。従業員一人一人がどうすべきかを考え、改善を提案し繰り返す。それによってもっと良い車を作り出す。こうした価値観を共有し実践できる人材教育を進めてきた」と証言した▼その中で同氏は「(企業の)成長スピードが速すぎて人材教育が追つかなかった」「利益を重視しすぎる部分があったかもしれない」とも述べて、安全や品質を重視する姿勢がおろそかになっていたことを暗に認めている▼当時筆者は「これはトヨタ自動車だけに限ったことではない」として、日本を代表する製造業の多くが人件費削減のために長期雇用を減らし、短期雇用や派遣労働者依存を高めていることについて、系統的な教育や指導が困難になっていると指摘し、品質管理や技術の継承などへの悪影響を懸念し警鐘を鳴らしている▼いま世情を騒がせている大手自動車メーカーの無資格検査問題や、鉄鋼メーカーの底知れないほどの品質偽装などは、まさにその延長線上の問題である。それら企業にしてみれば、無意識のうちに「人の生命よりも会社の利益」が優先してのことだったのではなかっただろうか▼経済最優先の政治が続く中で、多くの職場で短期雇用者や派遣労働者が中心的な労働力として働らかされている。非正規といわれる彼らの多くは、年金や健康保険などの被用者保険には加入させてもらえず、会社の福祉施設さえ使わせてもらえない。そんな中で「人づくりだ」「価値観の共有だ」などといわれても、「なに言ってんだ」というのが率直な気持ちだろう▼それではエリートといわれる正社員はどうなのか。これまたコスト削減の度が過ぎて、健康障害や過労死といった問題が後を絶たない。愛社精神を持ちたくても持てない労働者、仕事に誇りを持ちたくても持てない雇用の仕組み。勤勉な労働者が積み上げてきたメードインジャパンへの信頼を損ねていることに、政治家も経営者も猛省すべきだ。(良穂)[2017/10/30]

茶飲み話[58]

 ♪村の渡しの船頭さんは/今年60のお爺さん/年をとってもお舟を漕ぐときは/元気いっぱい艪がしなる/それギッチラ ギッチラ ギッチラコ~。70歳以上の人なら、だれもが子供のころにオルガン伴奏でうたった経験があるに違いない。童謡「船頭さん」である▼1941年(昭和16年)に発表されたが、太平洋戦争突入直前であったことから、当初の歌詞には「60のお爺さんですら村のために、お国のために、一生懸命働いているのだから、君たちも早く立派な人間になってお国のために尽くしなさい」というメッセージが込められていたという。戦後になって歌詞の一部が改作され、歌い継がれた▼たしかに、戦後10年を経た昭和30年(1955年)頃の日本人の平均寿命は、男63歳、女67歳で、60歳といえば“りっぱな”お爺さんであり、お婆さんであったろう。しかし今では男81歳、女87歳で、100歳以上のお年寄りも67,824人もいる。この間に、サラリーマンの定年年齢も50歳代から60歳代前半に引き上げられ、65歳以上の高齢者は、総人口の4分の1に達している▼長寿は人類にとって永遠の願望であろう。戦後の日本は生活水準の目覚しい向上と、誰でも適切な医療や介護を受けることができるようになったこと、公的年金保険による所得保障が高齢期の生活を支え、長寿の生活をある程度可能にしたことは事実である▼しかしいま、安倍政権による方向違いの政策運営が、年金、医療、介護を柱とする社会保障制度を限りなく先細りさせ、雇用・労働法制を回復できないほどに劣化させている。そんなこんなで、安倍総理が世界を駆け巡って「わが国は世界に冠たる長寿国だ」などと吹聴してみても、庶民にとっては親の長寿も自分の長寿も素直に喜べない、そんな悲しい国になりつつあるようだ。(良穂)[2017/09/19]

茶飲み話[57]

 「先の国会での森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、さまざまな問題が指摘され、国民のみなさまから大きな不信を招く結果となりました。そのことについて、冒頭まず、あらためて深く反省し、国民のみなさまにお詫び申し上げたいと思います」―。安倍総理の記者会見の切り出しである▼8月3日に行われた第3次安倍改造内閣には、初入閣が6人、再入閣が7人、麻生副総理兼財務大臣や菅官房長官など5人が留任した。改造とはいうものの、安倍総理にとっては、春の国会でその無能ぶりをいかんなく発揮し、「疑惑・隠ぺい三昧」の安倍内閣の実像を国民の前にさらけ出した“戦犯”ともいうべき文科大臣、法務大臣、防衛大臣の首を切り、経験者と入れ替えただけのようである▼これでは「経済最優先の“仕事人内閣”だ」と自賛しても、国民の目には「リバイバル内閣」か、「疑惑隠ぺい内閣」にしか見えない。と思っていたら案の定、江崎沖縄・北方担当大臣が5日、地元・愛知県一宮市の支持者を前に「今後の国会答弁で立ち往生することのないよう、役所の答弁書を朗読する」「北方領土問題については素人。みなさんの知恵で色をつけてもらう」などと口を滑らせ、早々と馬脚を現した▼「さまざまな問題」に蓋をしようとしても、総理自身にまつわる森友学園、加計学園に関する疑惑は深まるばかり、陸自の日報問題の責任もあいまいなままである。「国会から求められればいつでも出て行って、丁寧に説明し国民の理解を得る」とは口先だけで、納得できる説明は全くしていない。支持率の低下は、そんな総理自身への国民の愛想尽かしであることは明らかである▼籠池夫妻と深くかかわり、森友学園の名誉校長になっていた昭恵夫人も、そして、若いころからの「腹心の友(刎頸の友の間違い?)」だという加計孝太郎氏も、いまだにだんまりを決め込んだままである。そんな中で「深く反省し、国民のみなさまにお詫び申し上げたいと思います」と甲高い声でまくし立てられても、「何を本当に反省しているのやら」と思わずにはいられない。(良穂)[2017/08/08]

茶飲み話[56]

 そもそも「空気を読めない人」なのか、それとも根っからの“自己中”なのか。7月28日、世論の集中砲火を浴びるなかで、ついに防衛大臣を辞任した稲田朋美衆議院議員。31日に行われた防衛省・自衛隊による大臣離任式とやらに出席した▼北朝鮮が大陸間弾道弾を日本近海にぶっ放すなど、周辺状況が不安定さを増しているさなかでもあり、企画した防衛省幹部は「辞退するだろう」と読んでいたようだったが、あにはからんや。ご当人は全く気にならない様子で出席し、防衛省・自衛隊の幹部を前に「風通しのよい組織文化を醸成し、連携強化を図り、一致団結して、いかなる困難な状況にも対応できるようにしてもらいたい」と宣うた▼そして、大臣辞任の引き金となった南スーダンに派遣された陸上自衛隊の日報問題については、「防衛省・自衛隊に対する国民の信頼を揺るがし、結果として隊員の士気を低下させかねない点で重大かつ深刻なものであった」と、ご自分の責任には一言も触れず、防衛省事務次官や陸幕長が引責辞任したことにも全く無関心の態だった▼離任式の後、儀仗隊による栄誉礼を受け、職員らに見送られて防衛省を後にする際の言葉がまたふるっている。「みなさんは私の誇りです。これからも日本の安全保障のため、一緒に頑張りましょう」と満面の笑顔。しかしテレビ画面で見る限り、見送る職員はみな無表情で拍手していた▼民進党はそんな稲田氏を衆議院安全保障委員会の閉会中審査に出席させ、「日報問題」だけでなく、あれやこれやの責任を追及しようとしている。これに対して自民党の竹下国対委員長は、「(稲田氏は)大臣辞任という最も重い責任の取り方をした」と、国会の中だけでしか通用しない理屈でもって出席を拒否している▼稲田氏は辞任表明の記者会見で、「かねてより辞任の意向を安倍総理に相談していた」と口を滑らしている。稲田氏を閉会中審査に出せば、当人の問題だけでなく、総理の任命責任や「秘蔵っ子」をかばい続けた慰留責任も問われ、落ち目の安倍内閣の傷口をさらに広げることになりかねない。国民に向けて疑惑を晴らすことより、身内を忖度(そんたく)しての出席拒否なのだろう。何とも嘆かわしい。(良穂)[2017/08/02]

茶飲み話[55]

 東京都議会議員選挙の自民党公認候補の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と、自衛隊の政治利用ともとれる発言をした稲田朋美防衛大臣。弁護士でもある稲田氏が、自衛隊員は選挙権の行使を除くほか、政治的行為が制限されていることを知らなかったとすれば、あまりにもお粗末である▼民進党など野党は「大臣としての資質に欠ける」と罷免を求めているが、本人は「誤解を招きかねない発言に関して撤回したい」と言い、安倍総理も「誤解と受け取られかねない発言」として謝罪したものの、防衛大臣は続投させる考えだという。これを受けて菅官房長官は、「(本人が)しっかりと説明責任を果たし、今後とも誠実に職務に当たってもらいたい」と記者会見で述べている▼安倍政権は、不祥事を起こすたびに「本人の説明責任」を常套句にしている。しかし、いったん口を衝いて出た言葉を撤回するというのも分かりにくい話だが、間違ったこと、世間の常識に反すること、法律に違反することなどをしてしまったあとで「しっかりと説明責任を果たす」と言われても、何をどうするというのだろう▼稲田氏の「とんでも発言」はこれが初めてではない。3月には、大阪の森友学園の訴訟問題には「一切関与していない」と強弁していたが、裁判所の記録が明らかになって嘘がばれ、発言を撤回し謝罪している。また、南スーダンにPKO派遣されていた陸上自衛隊の日報を「廃棄した」としていたが、実在していたことが明らかになって撤回・陳謝、「省内の特別監査を行う」などとのんきなことを言っていた。この件では、稲田氏が自衛隊から軽んじられ、信頼されていないとして「即刻辞任すべし」という声が少なくなかった▼安倍総理は稲田氏を将来の首相候補として育てたいと周囲に語っているという。ぬけぬけと嘘をつき、所管する役所の幹部からは軽んじられ、これほど不勉強な人物が将来の首相候補とは、安倍総理の目が曇っているのか、自民党に人材が枯渇しているのか。何とも嘆かわしい限りである。〝豊田真由子様”ならずとも「どうしてそんなことに、な~る~の~か~な~」「なるんでちゅか~」。(良穂)[2017/07/03]

茶飲み話[54]

 共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が15日朝、参議院本会議で自民・公明・日本維新の会などの賛成多数で可決・成立した。法務委員会審議を中途半端に打ち切って、本会議で採決するという暴挙である。マスメディアが「奇策」などと報じているが、奇策というより議会制民主主義の否定以外の何物でもない▼「無理が通れば道理が引っ込む」という。道理にかなわない不正が平気で通用するならば、道理にかなった正しいことが行われなくなるという意味である。安倍政権の周辺ではあれやこれや、こうしたことが常態になっているようだ▼今回の強行採決も、このままでは「加計学園問題」への世論や野党の追及がさらに厳しくなり、都議会議員選挙への影響や、安倍内閣への疑惑や傷口の広がりが懸念される。それを避けるため、リスク覚悟の強硬策だったとする説がもっぱらである▼加計学園問題で「総理のご意向」などとする文書を「出所不明の怪文書」と言い放ち、文書の存在を明言した前川前文科事務次官の人格まで貶める発言をしていた菅官房長官。複数の職員の証言などで風向きが変わってくると、一転して「文科省調査の結果」を盛んに強調し、責任を文科省に押し付ける▼責任を押し付けられた形の松野文科大臣。これまた官房長官の使いっ走りのように唯々諾々と従っていて、大臣としてのプライドもなければ、配下の職員を守ろうとする気概のかけらさえ感じられない。「卑怯・未練」とか「女々しい」という言葉は、この人たちのためにあるのかもしれない▼ちなみに「無理が通れば道理が引っ込む」にはもう一つ、「いくら道理を説いても聞き入れてもらえない場合は、黙って引っ込んでいる方が身の安全」という意味がある。幹部人事を内閣人事局に握られているため、安倍内閣からどんな不条理を押し付けられても抵抗できないのは、文科省だけではなく全省庁に及んでいるようだ▼そういえば、義家文科副大臣は「文科省の内部文書が存在すると職員が内部告発して明らかにした場合、国家公務員法(守秘義務)違反に問われる可能性がある」と、恫喝ともとれる発言をしていた。一強多弱政治による閉塞感が続く中で、共謀罪法は7月11日から施行される。(良穂)[2017/06/16]

茶飲み話[53]

 高齢者、とりわけ低所得高齢者が賃貸住宅などへの入居を断られるケースが後を絶たない▼そのため退職者連合の男女平等参画推進委員会は、政策・制度要求の中で、政府や地方自治体に対し、その速やかな改善を求め続けている。「居住の継続が困難な低所得高齢単身女性に対し優先的に公営住宅等への入居・転居を可能にすること」や、「入居時の身元保証人や身元引き受け人など家族にかわって必要な手助けを行う支援事業を推進すること」などである▼このほど、国が高齢者・低所得高齢者に空き家を紹介する制度を今年の秋からスタートさせるというマスコミ報道に接した。入居を拒まない空き家などの物件を自治体に登録してもらい、家探しに困っている高齢者らに情報提供したり、低所得の場合には家賃補助などを行う制度のようである。全国で急増している空き家の有効利用にもつながるとして国交省が力瘤を入れているようだ▼構想では、空き家の登録を受けた自治体が、業務委託しているNPO法人や社会福祉法人を通じて入居希望者の募集などを行い、入居を断られることの多い高齢者・低所得者のスムーズな家さがしを可能にする計画である▼高齢者が住みやすくするために空き家を改修する場合には、所有者に最高200万円の補助。入居者が低所得である場合には家賃を最高月4万円補助するほか、滞納した場合の債務保証料も最高6万円補助するという▼とにかく使い勝手の良い制度にしてほしいものだが、詳細は不明である。しかし、運動を続けてきた男女平等参画推進委員会にとっては一つの朗報であるに違いない。「終(つい)の棲家」の問題だけでなく「孤独死」の問題などもあり、低所得高齢者の問題はいまや見過ごしにできない社会的課題である。さらに運動を前進させ、「誰もが安心して老いることのできる社会」「生き生きと安心して暮らせる社会」にしたいものだ。(良穂)[2017/06/13]

茶飲み話[52]

 安倍政権がなんとも胡散(うさん)臭い。森友学園への国有地格安払い下げをめぐる疑惑も晴れぬ間に、今度は加計学園問題である。安倍総理の“腹心の友”が理事長を務める学園が、政府の国家戦略特区に指定された愛媛県今治市に新設する岡山理大の獣医学部をめぐる疑惑である。森友学園も加計学園も、直接的な利害関係者が安倍総理と極めて親しい間柄であったことから、二つ合わせて“安倍友疑惑”と揶揄されている▼いずれも国家権力の介在が疑われる内容であることから、国会でしっかりと事実解明すべきである。しかし、森友学園の方は追及する野党側の手詰まり感もあって、安倍総理も昭恵夫人も何とか逃げ切ったと思っているのだろう。過去のこととして受け止めているようで、多くの国民は消化不良状態である▼加計学園の問題も、関係者の間ではかなり前からくすぶっていた。文部科学省の事務次官を1月に退任したばかりの前川喜平氏が記者会見し、自身の在任中「総理の意向、官邸トップの意向などとする文書は本物であり、存在する」と暴露した。これに対して菅官房長官は「出所不明の怪文書」と切り捨て、松野文部科学大臣は「文書の存在は確認できなかった」と逃げ回っている▼いずれの疑惑も解明の壁になっているのは、官邸と役所が一体となって情報を隠し通していることである。さらに質(たち)が悪いのは、総理や昭恵夫人が「尊敬する人物」であったはずの森友学園の籠池前理事長や、今年1月まで官僚のトップであった前川氏を、安倍総理や菅官房長官などの官邸トップが徹底的にこき下ろし、マスコミを使って人格さえ貶(おとし)める喧伝をしていることである。“げにも恐ろしきかな国家権力”である▼この上、包み紙を変えただけの「共謀罪」の成立を許すようなことになれば、北朝鮮の弾道ミサイルにも匹敵する危険な玩具を安倍政権に持たせるようなものである。 “安倍友疑惑”を自ら晴らすこともできないこんな胡散臭い政権を、いつまでも勝手放題させておいてはならない。早いところみんなで力を合わせ、経済制裁ならぬ“政治制裁”を加えなければ・・・。(良穂)[2017/05/29]

茶飲み話[51]

 良くいえば「機を見るに敏」、悪く言うなら「悪乗り上手」。これが安倍総理の政治手法である。一昨年の国会では、中国船の領海侵犯をテコに集団自衛権行使容認を強行。今度は北朝鮮の核実験をめぐってアメリカと北朝鮮の軋轢が高まり朝鮮半島情勢が険しくなったとみるや、わが国の護衛艦によるアメリカ艦船護衛の実績づくりをさりげなく行い、その一方で憲法改正へのボルテージを上げている▼5月3日、憲法改正をめざす市民らの集会に寄せた安倍総理のビデオメッセージ。「東京オリンピックが開催される2020年の新憲法施行を目標に、改定項目として第9条1項と2項を残しつつ、3項に自衛隊を明文(化)すべきという考え方は議論に値する」と述べている。そして新憲法には「高等教育の無償化も盛り込むべき」だともいう▼憲法第9条の1項は「戦争放棄」、2項は「戦力の不保持」と「交戦権の不認」である。安倍総理は「国民の生命と財産を命がけで守ってくれている自衛隊が憲法上認知されていないのは不自然」だという。しかし第9条2項の「戦力の不保持」と「交戦権の不認」をそのままに、戦力としての自衛隊を明文化することは明らかな矛盾である。また「高等教育の無償化」は、かつて民主党政権が実現をめざしたが、自民党の反対で実現できなかった施策である▼安倍総理は、朝鮮半島情勢の成り行きと日本国内に及ぼす影響を心配する国民の心理を巧みについて、一気呵成に改憲への道筋をつけようとしているのだろう。そのためには世論の抵抗感を薄め、次の段階で「矛盾する部分」を削除する腹積もりに違いない▼もう一つ、改憲発言のボルテージを高めている背景には、共謀罪問題への議論の集中をかわし、政官あげて情報を隠している森友学園への国有地格安売却と、それに絡む総理夫人の直接・間接の関わりへの関心を逸らすなど、後半国会での議論を分散させる狙いがあるようだ。悪乗り上手な安倍総理の目論みははっきりしている。術中にはまらないようにしなければ・・・。(良穂)[2017/05/08]

茶飲み話[50]

 安倍内閣による長期政権が続く中で、国民を見くだすような閣僚の物言いや不祥事が相変わらず後を絶たない。加えて、南スーダンをめぐるPKOの問題や森友学園に対する国有地の格安売却疑惑と、安倍総理や総理夫人にかかわる「忖度(そんたく)の有無」など、政権にとって都合の悪い情報は、政・官一体となって隠し通すという異常な国会運営が続いている▼とりわけ閣僚の問題発言では、本年2月、金田勝利法務大臣(秋田2区)が「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改定案」に関する野党議員の質問に対し「国会提出後に議論すべきだ」と議論を封じるかのような発言をし、翌日「不適切だった」と発言を撤回・謝罪した。3月には稲田朋美防衛大臣(福井1区)が、大阪の森友学園の訴訟問題には「一切関与していない」と主張していたが、裁判所の記録が明らかになって、これまた発言を撤回し謝罪した▼4月に入って、今村雅弘復興大臣(比例・九州ブロック)は記者会見の場で、福島第1原発事故の自主避難者の帰還について問われると「どうするかは本人の自己責任」だと答え、それを追求する記者に対して怒りをあらわに「うるさい!」「二度と出てくるな」などと発言。翌日「不適切だった」と発言を撤回・謝罪した▼山本幸三地方創生担当大臣(福岡10区)は滋賀県で開かれた地方創生に関するセミナーで講演。外国からの旅行者に対する文化財の観光案内が不十分だとしたうえで「一番のガンは文化学芸員。この連中を一掃しないと駄目だ」などと発言し、翌日「そういう意味ではなかった」などと言い訳し、謝罪している▼不祥事の極め付きは、中川俊直経済産業大臣政務官(広島4区)。週刊誌に自身の不倫問題が報道される事態となり政務官を辞任したが、妻子ある身でありながら相手の女性ともハワイで結婚式を挙げていた。しかもことの発端は、同党の前川恵衆議院議員(比例東京ブロック)との不適切な関係が相手の女性とのトラブルに発展したことからだというから恐ろしい。世の中をなめきっているこんな大臣や政務官。発言を撤回したり謝罪したり、自民党離党で済まされるような話ではない。それこそ「こんな連中を一掃しないと駄目だ」―。(良穂)[2017/04/21]

茶飲み話[49]

 人手不足といわれながら不安定雇用労働者の数は減らない。労働者が物扱いされ、長時間労働や休日に絡む法令違反が横行し、精神疾患者や過労死、自殺者まで出ている。こんなときだからこそ労働組合の出番なのに、残念ながら労働運動・労働組合の存在感は日々に薄れるばかり。見るに見かねてか、政府・与党が「働き方改革」を主導している▼10年余り前のことだが、知日派で知られるロンドン大学のロナルド・ドーア名誉教授が、その著書「日本型資本主義と市場主義の衝突」で、わが国の労働組合にも触れ「労働組合のリーダーは、企業の中で低い階層に属する人々の労働条件や、生活条件への影響に十分な考慮を払わないような経営陣の決定を阻止したり、引き伸ばしたりするという現実的な機能を果たすことをせず、(中略)株主の主権を回復しようとする動きを脅威と見て反応することもあまりない」と述べている。それを鵜呑みにしたつもりはなかったが、今日の状況を見れば「ほぼ的中していた」といえるだろう▼産業・企業の状態がうまく行き、労働組合がそれほど力まなくても労働条件が向上し雇用が安定していた時代から、いまは様変わりである。世界にその名轟く名門企業が上場廃止の瀬戸際にあり、外国資本に身売りした著名企業もある。職場では長年培ってきた労働・環境条件があたり前のように無視され、精神疾患者が続出し、過労死や自殺者が出ても、労働組合が率先して改革・改善に立ち上がっている姿は見えてこない▼産業構造や就業形態が変化し労働組合運営が難しくなった、高学歴化・個性化が労働者の連帯を阻害している、国際競争や同業他社との競争を口実にした経営側の攻勢に抗しきれないなどなど、労働運動・労働組合が存在感を失っている要因はいろいろあるだろう。しかし何といっても、労働運動・労働組合を業とする人たちから、「権力の不正や理不尽に対する怒りや抵抗の精神」が感じられなくなったことが大きいのではないだろうか。いつの時代でも労働運動は「社会を改革する力」であり、改革の運動は常に少数から始まることを忘れてはならない。(良穂)[2017/04/03]

茶飲み話[48]

 政府は、カジノ賭博設置の実施法策定に向けて、本格的な動きを見せている。多くの国民が最も懸念している「ギャンブル依存症対策」について、本人や家族の申告によって競馬や競艇、競輪などの公営ギャンブルとともに、パチンコ店への入場も制限することを検討している▼すでに国会内には、総務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、産業経済大臣、国土交通大臣、金融特命担当大臣、消費者及び食品安全担当特命大臣、国家公安委員長、内閣官房長官で構成する「ギャンブル依存症対策推進関係閣僚会議」が設置されている。この政府案をもとに論点整理をするのだという▼たしかにシンガポールでは、家族からの申告によってカジノ賭博場への入場制限を行っている。しかし日本政府の考え方は、パチンコを加えることで「依存症対策に本気で取り組んでいるという姿勢」をアピールするだけが狙いのようだ。警察庁所管のパチンコ業界から反発が出て“アワと消える”ことは折り込み済みなのだろう。このほかに、公営競技場内外券売場のATM(自動現金支払機)でクレジットカードで借金をするキャッシング機能の廃止も検討しているらしい▼また、全都道府県や政令市に専門治療・相談拠点を整備し、依存症相談員を配置することや、高校の保健体育で指導するため教科書にもギャンブル依存症について記載することなどを整理し、今年の夏をめどに実行に移すための工程表を策定する方針のようだ。これと並行して自民・公明の両党も、依存症対策の基本法案を協議する与党のプロジェクトチームを設置して、今193通常国会での成立を目指している▼利益が出なければ成り立たないのが商売である。入場制限などをしても、たちまち「背に腹は代えられない」ことになるのは目に見えている。人の不幸の上に成り立つ経済対策など「下の下」、邪道以外の何物でもない。(良穂)[2017/03/31]

茶飲み話[47]

 連合の旗や胸章などは、青地(ライトブルー)に赤(朱)のマークが一般的。この「連合マーク」をつくったのは全民労協である。民間連合の結成準備を進める中で、全民労協は「労働者の力合わせ」をイメージする図案を組合員から公募した。800点ほどの応募作品が寄せられ、日放労を通じて家紋や商標などを専門に扱うデザイナーにお願いし、事務局で審査したが、残念ながらその中に採用作品はなかった▼専門家にお願いしたのは全国の「家紋」、会社や商店の商標登録などとの類似を避けるためであった。応募作品の中から数点を抜き出し、最終的にはその専門家につくっていただいたのが、今日の「三つ揃い金輪」のマークである。地球の上で労働者が腕を組んでいる姿と、総評・同盟・総連合(中立労連と新産別による緩やかな連合組織)の3団体が、スクラムを組んでいる情景をデザイン化したものである▼マークが新聞などで公表されると、日を置かずして京都の住人から「わが家の家紋と同じ」だとクレームがついた。パソコンが発達していなかった頃のこと、写真を送っていただき、先の専門家に見ていただいた。その結果、家紋の方は完全な輪を組み合わせたものであり、「連合マーク」は三つの輪が完全な輪にはなっていない。いわゆる輪が繋がっていないのである。京都の方には、そのことを電話で丁寧に説明し了解していただいた▼また、準備の段階では旗の色について、山岸章副議長と山田精吾事務局長の間で激しいやり取りがあった。「新組織のさわやかなイメージを強調すべし」として「青」を主張する山岸氏、「労働運動の伝統を尊重したい」として「赤」に固執する山田氏が互いに譲らなかったのである。すったもんだの挙句、竪山利文議長の「日常使用の行動旗は青、大会などの公式行事に使う連合本旗は赤を基調にしてはどうか」の折衷案で決着をみることとなった。ちなみに、胸章や名刺などに使用するマークの色は特定しなかった。(良穂)[2017/03/21]

茶飲み話[46]

 ♪泣き虫弱虫あわてん坊 みんな気のいい奴ばかり 働く仲間の希望はひとつ 十人十色の幸福さがし ♪優しさ真心思いやり 冬の衣を吹きちぎり 働く仲間は胡蝶のように 舞って四方に幸福さがしー。民間先行による連合の結成に向けて、全民労協が組合員から公募してつくった「幸福(しあわせ)さがし」である▼200編を超える応募作品のなかから最優秀に選ばれた前川喜美春さん(電機連合所属)の詞を、演歌作詞家の大御所・星野哲郎さんに補作していただき、当時NHK全国のど自慢コンクールでピアノ伴奏をしていた黒河内和夫さんに曲をつけていただいた。♪仲間の愛が輪になって~で始まる「連合歌」とともに官民統一連合の創立大会でも「愛唱歌」として採用され、今日に至っている▼『今日わが国は、21世紀を目前にして政治、経済、社会、文化など、あらゆる領域で大きな変化に直面しています。労働運動もまた、力と政策をもって新しい運動の道を切開いていかなければなりません。連合は、大会スローガンに~平和・幸せ・道ひらく~を掲げました。それは、自由と民主主義に基づく労働運動の基本を示し、国際社会との調和の中で、人間優先の福祉社会づくりを進める決意を明らかにしたものです』―。官民統一大会で連合は、「国民のみなさんへ」と題するメッセージの中で、このように謳いあげている▼しかし、時を同じくして日本列島は、ゼネコンのみならず名のある企業や銀行さえ、何かに憑(つ)かれたかのように土地を買いあさり、カネをつぎ込んでは転がし、金色の泡のなかで舞い上がっていた。やがてバブル経済が破綻し、土地価格が暴落し始めた途端に、企業も労働組合も凍て付いたように萎縮し、連合の「人間優先の福祉社会」に向けた新しい運動も、厚い扉に閉ざされてしまった▼「幸福さがし」の作者にはそんな時代の先が見えていたのだろうか。詞は4番で次のように締めくくっている。♪遠くの白百合ほしがって そばのタンポポ忘れてる 働く仲間の幸福さがし 明日こそはが ララ合い言葉。この歌が生まれて30年、多くの労働者が夢見た「十人十色の幸福さがし」とは何だったのか。もう一度「平和・幸せ・道ひらく」―、そんなロマンあふれる労働運動がほしい。(良穂)[2017/03/13]

茶飲み話[45]

 ♪どこかに故郷の香りを乗せて 入る列車の懐かしさ 上野はおいらの心の駅だ くじけちゃならない人生は あの日ここから始まったー。上野駅の広小路口、山手線ガード下に近い一隅に「あゝ上野駅」の歌碑がある。平成13年7月に建立されたものだが、それには次のような一文が刻まれている▼『高度経済成長期の昭和30年代から40年代、金の卵と呼ばれた若者たちが地方から就職列車に乗って上野駅に降り立った。戦後、日本経済繁栄の原動力となったのがこの集団就職者といっても過言ではない。親元を離れ、夢と不安を胸に抱きながら必死に生きていた少年・少女達。彼らを支えた心の応援歌「あゝ上野駅」は、昭和39年に発表され、多くの人々に感動と勇気を与え、以後も綿々と歌い継がれている』-▼そして碑には、18番線に降り立った少年・少女たちが蒸気機関車の横を一群となって改札口に向かう姿が刻みこまれ、同じ構図の写真が焼き付けられている。詰襟の学生服やセーラー服に身を包んだその顔は、どれもみな幼顔である▼時は流れて半世紀余り。就職列車はなくなり、長野新幹線の開業に伴って18番線も廃止された。中学卒が高校卒や大学卒に、学生服、セーラー服がスーツやカジュアルに、そして幼顔がひねこびた青年の顔に変わったが、若者たちの仕事を取り巻く状況はいっそう悲惨であり深刻である▼あの朝、上野駅から関東一円に散らばっていった少年・少女たちも今では60歳代後半から70歳代。学歴社会の厚い壁に苦悶・苦闘しながらも、「まじめに働いていれば、きっといつかは報われる日が来る」と信じて生き抜いてきたそれぞれの人生▼そんな彼ら、彼女らが長い年月をかけて積み上げてきた“ささやかな幸せ”を、無策な政治の大波が翻弄している。「希望の時代から失望の時代に変わった」と指摘する向きもあるが、まじめに働き続けても“ささやかな幸せ”さえ手にすることができない社会はまともではない。(良穂)[2017/02/20]

茶飲み話[44]

 2月10日は、連合の初代事務局長・山田精吾さんの21回目の命日である。1996年(平成8年)のこの日、山田さんは宮崎市の自宅近くで自転車に乗っていて、交通事故に遭い亡くなった。65才であった。♪今日も見知らぬ町を 歩き歩きつづける 足あといっぱい仲間を訪ね あふれる喜びを抱き  ♪ふるさと離れし乙女 機場(はたば)の灯かりは暗し 救いのオルグ声高けれど 応えなき面(おもて)悲しや ▼昭和30年代の後半から40年代の初期にかけて、全繊同盟(現UAゼンセン)のオルガナイザーの間で盛んにうたわれていた「オルグの歌」である。小林旭のヒット曲「北帰行」の替え歌で、詞は何人かの仲間による合作ともいわれていたが、実際は当時10人ほどの組織オルグの中心にいた山田さんの作というのが真実である。「オルグは酒を飲め、歌をうたえ、自分の“オルグの歌”を持て」が、当時の山田さんの口癖だった▼だからというわけでもないが、そのころのオルグは実によく飲んだし、歌もうたった。全国に散らばって未組織労働者の組織化に苦闘しているオルグ、月末には東京・市ヶ谷の本部事務所に帰ってくる。夕方、情報交換や打ち合わせが終われば、全員で繰り出す先はいつも決まって渋谷か新橋、新宿などのガード下。曲尺(カネジャク)形のカウンターに、椅子の数より多い頭数で押しかけ、頭上を電車が通るたびに体もコップも揺らしながら安酒を酌み交わし、高唱する。カラオケもなければ伴奏もない。はやり歌あり民謡あり、みんなが知っている歌を競い合うようにして声を張り上げる。苦労を共にしている“同志”を実感するひと時である▼やがて誰からともなく肩を組み、「オルグの歌」の全員合唱が繰り返されるころになれば終電の時刻・・・。翌朝、オルグたちは大きなバッグを肩にかけ、再びそれぞれの地に散って行く。今日も見知らぬ町を 歩き歩きつづける 足あといっぱい仲間を訪ね あふれる喜びを抱き~。労働運動が低迷気味の昨今、山田さんの歌声が聞こえてくるような気がする。(良穂)[2017/02/13]

茶飲み話[43]

 「保護なめんなよ」「我々は正義だ」「不当な利益を得るために我々をだまそうとするならば、あえて言おうカスであると」―。暴力団員の啖呵でもなければチンピラの捨て台詞でもない。小田原市の「生活保護悪撲滅チーム」とやらが、こうした内容を英語書きしたジャンパーを着用して生活保護受給家庭などを訪問していた▼10年ほど前、保護を打ち切られた男に、市の職員がカッターナイフで切りつけられたことから、「不正受給を許さない連帯意識向上」のために作ったという。マスコミ報道を受けて小田原市の市長は、「配慮を欠いた不適切な行為であり、許されるものではない」とお詫びのコメントを発表したが、こうした文言が書かれていたのはジャンパーだけではなかった。ボールペンやマグカップ、携帯ストラップやシャツなど8つの関連物品を製作していたことが判明した▼もともと市の担当者たちの頭の中には、「生活保護受給者は社会の落ちこぼれ」という差別意識が潜んではいなかったか。雇用・労働法制が緩和・改悪され、不安定雇用と低賃金労働者が激増し、貧富の格差が拡大しているなかで、「保護費を支給してやる」といった「お上意識」がありはしなかったか。これは単に小田原市だけの問題ではない。報道に接して、なぜか少年のころに読んだ島崎藤村の「破戒」を思い出した▼『被差別村出身の青年・瀬川丑松は、素性を隠せという父親の戒めを守りつつ学校教師になった。しかし、自分の出自を隠さなければ生きていけない社会の不合理に煩悶する。「我は穢多(エタ)なり」と、素性を明かして偏見や差別と闘っていた先輩の猪子蓮太郎が、やがて非業の死を遂げる。それをきっかけに丑松は、生徒たちの前で告白するが、周りの人びとから猜疑の目で見られるようになったことなどから恋人とも別れ、新天地を求めてテキサスに旅立っていく』―。▼昨年度の生活保護受給者は163万5000世帯214万5000人。65歳以上が半数を超えており、受給者はここ10年、毎年記録更新し続けている。貧困は間違いなく政治の責任である。といっても、お上意識の役人や政治家に、日々の暮らしが「破戒」ならぬ「破壊」されて苦しむ人びとの気持など、所詮、分かりはしないか。(良穂)[2017/02/10]

茶飲み話[42]

 浜の真砂(まさご)は尽きるとも 世に盗人(ぬすっと)の 種は尽きまじ――。「たとえ海辺に無数にある砂がなくなるようなことがあったとしても、世の中に泥棒がいなくなるようなことはないだろう」という意味である。文禄3年に豊臣秀吉の手勢によって捕らえられ、京都三条河原で一族もろとも釜茹での刑に処された盗賊の首長・石川五右衛門の辞世の句といわれる▼このほど警察庁がまとめた2016年度の特殊詐欺事件による被害総額は406億3000万円で、前年比75億6800万円、率にして15.7%の減少だったという。「オレオレ詐欺」などの大口被害が5%減の166億円で7年連続の減少。パソコンやスマホをツールにした「架空請求詐欺」も16%、158億円減少している▼これについて警察庁は、「だまされた振り作戦での摘発や宅配便対策などの強化で、犯人側がリスクを回避しての結果ではないか」と分析している。しかし、2014年の565億円余りをピークに2年連続で減少したとはいえ、406億円といえば「とてつもない金額」であり、まだまだ高水準で推移していることに議論の余地はない▼オレオレや架空請求が減っているなかで、急増しているのが市役所などの担当職員になりすましての「還付金詐欺」。税金や医療費など取りすぎた分を払戻すなどの口実で、高齢者をATM(現金自動預払機)に誘導して現金を振り込ませる手口である。還付金詐欺被害は前年比67%、43億円も増え、件数でも55%、3682件も増えている▼相変わらず被害者の多くは65歳以上の高齢者(?)で、400万人増の1万1041件人、全体の8割近くに及んでいる。退職者連合は2013年から警視庁が進めている「特殊詐欺根絶アクションプログラム」に参加し、学習会などを行って啓発運動に取り組んでいる。特殊詐欺や悪質商法を業とする輩は知恵を絞って次つぎと新しい手を打ってくる。こちらも手をこまねいてはいられない。(良穂)[2017/02/02]

茶飲み話[41]

 現政権によって立憲主義の理念が踏みにじられている。立憲主義とは、国家権力の暴走で個人の自由や権利が奪われることがないよう、憲法によって政府の権力を制限する考え方である。そうした憲法の理念が、安倍政権の誕生以来、ことごとくないがしろにされている。昨年末の臨時国会でのカジノ賭博合法化法案を成立させるためだけで国会を再延長したことなどもその一つである。そしていままた政府・与党は、第193通常国会に「共謀罪」を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」を提案するとしている▼03年5月に国際組織犯罪防止条約を締結することが国会で承認されたが、その後国内法の整備が進んでいないため締結には至っておらず、世界187ヵ国が締結し、G8国では日本だけが未締結だという。安倍総理は「このままでは2020年のオリンピック・パラリンピックが開催できない」と言い、1999年に制定された「組織犯罪処罰法」を「テロ等組織犯罪準備罪」と呼称を変えて、何としても成立させると意気込んでいる▼しかし「共謀罪」は「国家権力の暴走によって奪われる国民の権利や自由を侵害する恐れがある」として、かつて3回廃案の憂き目に遭っている。だから政府は、例えば暴力団による組織的な殺傷事犯や悪徳商法のような組織的詐欺事犯、暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯等共謀行為に限り処罰するということであって、国民の一般的な日常生活の行為が対象になることはあり得ないと説明している▼しかし、法律はいったん出来てしまえば、それを執行する者のさじ加減でいくらでも伸縮することをわれわれは多くの経験で知っている。対象をしっかりと限定しなければ特定秘密保護法などとと結びついて捜査権の乱用となり、盗聴や不当な職務尋問など、日本国憲法が保障する思想・信条や表現の自由、基本的人権の侵害にまで拡がるであろうことは目に見えている▼安倍政権は米国のトランプ大統領の虚言・迷言が日本に及ぼす悪影響を懸念しているが、われわれは、安倍政権の政治姿勢がもたらす国民生活への悪影響の方がもっともっと心配でならない。(良穂)[2017/01/16]
 

茶飲み話[40]

 「大山鳴動して鼠一匹」という▼大きな山が音を響かせて揺れ動くので大噴火でも起こるのかと思いきや、小さな鼠が一匹チョロチョロと出てきたという意味で、大騒ぎした割には何のこともなかった場合などに使われる。先ごろ行われた安倍総理とロシアのプーチン大統領による首脳会談、日本側にとってはまさに「大山鳴動して鼠一匹」だった▼安倍総理はプーチン大統領を地元山口県長門市の温泉旅館に招いて会談した。「個人的な信頼関係を築いた」と自負する安倍総理、経済協力をテコに領土問題を動かし、悲願の平和条約締結に道筋をつけたい考えだったのだろう。これについて、長年ロシア(旧ソ連)関係に携わってきた元国会議員の鈴木宗男氏は、あちこちのテレビに出演し、1956年の日ソ共同宣言にある「平和条約締結後に歯舞諸島、色丹島の引き渡しをスタートラインとして具体的な協議に入ることができれば合格だ」とまくしたてていた▼しかし、プーチン大統領は到着予定を2時間40分も遅れたうえ、3時間10分にも及ぶ安倍総理との首脳会談では、肝心の北方領土については何ら譲歩の姿勢は見せなかったようだ。会談後の記者会見で安倍総理は「4島における特別な制度の下での共同経済活動について交渉を開始することに合意した」として、それが「平和条約締結に向けた一歩になる」と強調した。しかし、これについてもプーチン大統領は「ロシアの主権の下での経済協力」を譲らず、「平和条約締結に向けた一歩」になるというのは、どうも安倍総理の「勝手読み」のようである▼結局、日露首脳会談は、功を焦る安倍総理の独りよがりだけが空回りし、経済協力の約束を食い逃げされた形で目新しい成果は何も望めなかったということではなかったのか。それにつけても「ファーストネームで呼び合う仲」を強調していた安倍総理が、記者会見の場で「ウラジミール」と呼びかけるのに対してプーチン大統領は、終始「アベ」をくりかえしていたのは滑稽というほかない。(良穂)[2016/12/21]

茶飲み話[39]

 蟷螂(とうろう)の斧(おの)という。蟷螂とはカマキリのことで、「実力のないものがやたらと憤慨して悔しがり、いきり立つ」ことや、「自分の力量をかえりみず相手に立ち向かっていく」ことなどをいう。カマキリは進むことしか知らず、退くことを知らない。そんなことから、はかない抵抗を意味する言葉として使われることが多い▼いま国会は、自民党と公明党の連立政権で衆議院、参議院ともに圧倒的多数を占めている。加えて日本維新の会などが与党にすり寄り、憲法改正の発議要件である衆・参それぞれの3分の2以上の勢力を占めている。だから政府・与党、とりわけ自民党がその気になれば、民進党などがいくら「慎重審議」を求めても一顧だにしない。カジノ賭博合法化を含むIR法案を巡る一連の動きがその典型といえよう。その結果、関係委員会などでは数人の野党議員が委員長席を取り囲み、「強行採決反対!」などと叫んで乱闘まがいのパフォーマンスを繰り広げる▼蟷螂の斧も、古くは「蟷螂斧を以って降車にあたる」とか「蟷螂車轍に当たる」というように、勇気ある行動の喩(たとえ)として使われていたようだ。しかし今日の与野党の攻防を見る限り、そんな喩にはつながらない。新聞の見出しには「与野党厳しく対立」、「野党が激しく抵抗」などの活字が躍るが、その実態は力量の伴わない「はかない野党の抵抗」でしかなく、それによって国会審議の流れが変わることなどまったくないことを、ほとんどの国民が知っている▼いま安倍政権は、財源不足を理由に各種社会保障給付を限りなく圧縮し、アベノミクスに言う「安心につながる社会保障」どころか、「限りなく不安につながる社会保障」への道を突き進んでいる。強大な自公与党による政治の閉塞を打ち破り、流れを変えるには、蟷螂が力を合わせ、「車轍に当たる」の気概を持って選挙に勝つしかない。(良穂)[2016/12/12]

茶飲み話[38]

 またぞろ超党派のカジノ議連が、この臨時国会でカジノ賭博合法化法案を成立させようと躍起になっている。カジノ合法化を含む「統合型リゾート(IR)推進法案」は、2013年に初提出され、わずか一日審議されたものの、以後1年半にわたって、店晒し状態が続いている。この間、世論調査ではカジノ合法化に反対する人々の数が賛成を圧倒しており、また、新聞各紙も合法化に「反対」、あるいは「慎重に」との社説を掲げるにいたっている▼厚労省研究班の推計によれば、現在でもパチンコなどを含めたギャンブル中毒の疑いのある人は全国で536万人、成人男性の8・7%を占めているという。カジノ合法化となればその数はさらに増え、多重債務による家庭崩壊や資金欲しさに犯罪に走るケースなども懸念され、また、反社会的勢力による闇支配や青少年の健全育成に悪影響を及ぼし、退職者・高齢者がなけなしの預貯金や年金を巻き上げられ、悲しい結果を招くようなことにもなりかねない▼自民党は11月9日から衆議院内閣委員会で審議入りする方針を固めていたが、TPP法案を巡る混乱の影響を受け、9日の審議入りは見送られた。自民党の二階幹事長は8日の記者会見で「自民党内にも、野党の間にも、法案に対する理解が十分に行き届いていると判断するには、少し時期尚早ではないか」と言いつつ、「いずれにしても、もうそろそろ結論を出す段階だろうと思っているが、慎重にやっていきたい」と述べている▼これに対し日本維新の会の馬場幹事長は、「わが党だけでなく、自民党も法案提出者になっているのに、この段階で自民党内がまとまらないのはおかしい。法案提出者としても、最大会派としても、法案の成立に向け、責任をもってリーダーシップを発揮してほしい」と注文を付けている▼自民・公明・民進・維新の会などの国会議員220名を超えるカジノ議連の勢力からすれば、成立必至であった本法案が、店晒しにされてきたのは、多くの国民がこれを求めておらず、また、先にふれたような多くの問題が解消されていないからにほかならない。古来、ご法度とされてきた賭博行為、人々の心を蝕むカジノによる経済振興策などあってはならないことである(良穂)[2016/11/11]

茶飲み話[37]

 安倍政権下で閣僚や準閣僚級議員の不祥事や不適切発言が止まらない。9月29日には、TPP(環太平洋経済連携協定)の承認案と関連法案をめぐって、衆議院TPP特別委員会の理事を務める福井照衆議院議員(四国ブロック選出)が、「この国会ではTPPの委員会で西川先生の思いを強行採決という形で実現するよう頑張らせていただきたい」と宣うた▼西川先生とは、安倍内閣で農水大臣を務めたが不透明な政治資金処理をめぐって辞任した西川公也衆議院議員(北関東ブロック選出)のことである。先の通常国会では衆議院TPP特別委員会の委員長を務めていたが、本人が執筆したといわれるTPP交渉の内幕本をめぐって審議が紛糾し、今国会では委員長を交代させられている。福井議員は釈明会見で「この国会でどうしても採決したいという総理の思いを申しあげたにすぎない」と本音?を吐露している▼さらにお粗末なのが9月1日、台風10号による豪雨被害の視察で岩手県岩泉町を訪れた際、水たまりを現地の自治体職員に「おんぶ」されて渡った務台俊介内閣府大臣政務官兼防災政務官(長野県2区選出・衆議院議員)。長靴を持ってくるのを忘れたという。政府高官が豪雨災害の視察に長靴を忘れるというのもありえない話だが、水たまりをおんぶしてもらってわたるというのもこれまた情けない▼聞けば務台先生、東大法学部から自治省(現総務省)に入り、その後内務省消防庁防災課長などを経て議員になったキャリア組とか。「現地で自分のための長靴くらい用意しているはずだ」という権力者意識がそうさせたのだろうか。消防庁防災課長と言えば防災に関するプロ中のプロのはず。結局、現場に疎い「論語読みの論語知らず」を露呈してしまったようだ▼二人の議員に共通しているのは、「他人への思いやりや気遣い」の精神が完璧なまでに欠落していることであり、権力でしか自分の価値を表せない小人間だということであろう。安倍政権が続く中で自民党議員の質の劣化は目を覆うばかりである。(良穂)[2016/10/11]

茶飲み話[36]

 『長時間労働を是正します。同一労働同一賃金を実現します。非正規という言葉をこの国から一掃します。最低賃金を引き上げ、高齢者の就労機会の提供など課題は山積しています』―。労働組合が太平の眠りから覚めて、ようやく雇用秩序の回復や労働時間の問題などに本格的に取り組む気になったのかと思ったが、よくよく聞けばそうではなかった▼これは8月2日、第2次改造内閣の発足にあたっての記者会見で安倍総理が述べた言葉である。安倍総理はまた、9月2日には内閣官房に設置した「働き方改革実現推進室」の開所式で、「働き方改革にいよいよ着手する。長時間労働を自慢する社会を変え、かつてのモーレツ社員が否定される日本にしたい」とあいさつしている。本気でやる気があるのならやってほしいものだ。しかし安倍総理のいうことは、どれもこれも眉唾に聞こえて仕方がない▼そもそも「日本を企業が世界で一番活動しやすい国にする」として雇用・労働法制の緩和・改悪を推し進め、生涯派遣につながる労働者派遣法の改悪を強行し、残業代ゼロ労働や労働者の金銭解雇を可能にする労働法制の改悪を目ろんでいるのは一体誰なのか。不安定雇用労働者を増やし続けているのは一体誰なのか。働き改革というならば「非正規という言葉を一掃する」ではなく、「非正規雇用を一掃する」と言うべきなのに、わざわざ紛らわしい言い回しにしているのはなぜなのか▼ともあれ、厚労省をはじめ経産省や文科省など、9つの府省庁からの出向者40人に、連合の神津会長も参加する「働き方改革実現推進室」。月1回のペースで開催し、正規・非正規の雇用形態の違いだけで賃金格差をつけない「同一労働同一賃金」などについて、今年度中に「実行計画」をまとめ、来年の通常国会で関連法を改正する考えだという。「大山鳴動して鼠一匹」にならなければいいのだが・・・。(良穂)[2016/09/05]

茶飲み話[35]

 茶飲み話にしては、茶が苦すぎて、口元が歪んでしまいそうな話である。参議院選挙が終わるまで、政府・与党が選挙への影響を恐れて、ひた隠しにしていた2015年度のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金積立金の運用実績は、5兆3098億円の損失であった。事前に察してはいたものの「やはりそうだったのか」と、安倍政権の狡猾さと厚顔無恥にあきれかえるやら、腹が立つやら▼それだけではない。本年度に入ってからも、4―6月期は5兆2491億円の損失を出している。国内株式が2兆2574億円、外国株式が2兆4107億円、外国債券が1兆5193億円のそれぞれマイナスで、収益が増えたのは国内債券の9383億円のみであった。これについてGPIFの高橋則広理事長は、「5月の米国雇用統計が事前予想を大きく下回ったことや、市場予測と異なる英国のEU離脱投票結果を受けて急激に円高が進んだ」などと説明資料で述べている▼GPIFは2014年10月、比較的安定している国内債券中心の運用方針を見直し、多くの反対を押し切って、国内外の株式比率をそれぞれ25%に引き上げるリスク性の高い運用に切り替えた。年金積立金を株式市場に投入することで、株価引き上げを狙った安倍政権の景気対策の一環である。だから政府・与党は、「短期的には損失が出ても、今すぐ年金支給に影響が出るわけでなく、運用は長期的視点で見るべきだ」と繰り返している▼その一方で安倍総理は、本年2月、衆議院予算委員会で民主党(当時)議員の質問に対し、「株価下落で年金(積立金)運用が想定を下回る状況が長期に続いた場合、将来的に給付額を減額する可能性はある」と本音を吐露している。短期的に見れば年金支給には影響しないというが、いまでも支給額はじりじりと引き下げられている。政府・与党がいうように長期的視点で見れば、株価頼みの運用方針を変えない限り、公的年金への不安は弥(いや)が上にも増すばかりである。国民の暮らしを不安に陥れ、置き去りにしているアベノミクス、安倍政権による経済最優先の政策は、明らかに間違っている。(良穂)[2016/08/29]

茶飲み話[34]

 労使関係について興味ある数字が目にとまった。厚労省が民間事業所の組合員30人以上の5189組合(有効回答3215組合)を対象に行った「平成27年労使関係の交渉等に関する実態調査」である▼それによれば「労使関係は安定的に維持している」が49.7%、「おおむね安定的に維持している」の38.1%を合わせると、ほぼ9割の組合が「労使関係は安定している」と答えている。大企業ほどその比率が高く、1000人以上の事業所では9割を超えている▼もちろん、労使関係は安定しているに越したことはない。しかし、雇用労働者の4割近くを不安定雇用にし、仕事内容は同じでも、雇用・労働条件などで正規社員との間に明確な差別化が行われている中で、この数字は一体何を意味するのだろうか▼「過去3年間に団体交渉を行った」組合は67.8%。逆に言えば、3割を超える組合が3年間に1度も団体交渉を行っていないことになる。非正規社員について「労使間で話し合ったことがある」のは半数に近いが、その多くは労働条件について(35.3%)で、「パートの雇い入れ」に関しては23.6%でしかない▼こうした数字から透けて見えてくるのは、「労働組合に入れない労働者」をほとんど無条件で受け入れ、組合員比率が低下し、労使対等の原則が形骸化している労働の現場の姿ではないだろうか。わが国労働組合の推定組織率は17.4%。古くから組織率は労働組合の力をはかるバロメーターといわれているが、連合の頑張りにもかかわらず下落傾向に歯止めがかからない▼国家も企業も、労働者を粗末にしては発展も安定もあり得ない。安定した雇用の確保という一点で「緊張感ある労使関係の維持」を忘れたら、労働運動・労働組合は存在意義を失う・・・。(良穂)[2016/07/29]

茶飲み話[33]

 退職者連合の1年間の活動は、年金・医療・介護を柱とする「社会保障制度等の要求」と、毎年9月に開催する全国高齢者集会が中心である。政策・制度要求では年に1~2回、厚生労働省や支持する政党への要請行動を行い、それをバックアップする形での院内集会などである▼安倍政権はいま、国の財政運営の最大課題は「増大する社会保障費の抑制にある」として、徹底した「給付の抑制」と「負担増」の政策を推し進めている。そのため、われわれが、一片の要求書を関係省庁や政党に持ち込み、院内集会で気勢をあげる程度では、「注文を付けてみる」だけのことで、実効はあまり期待できない▼その意味では、今日の政治状況から、われわれの運動は「社会保障制度の充実を目指す」というより、「これ以上後退させない」ための精一杯の闘いだと言えよう。しかしこのままでは、ずるずると後退させられ、年金・医療・介護を柱とする社会保障制度は先細りし、崩壊にさえ向かっているといっても過言ではない。われわれが生きている間は何とか持ちこたえても、これから退職者・高齢者の仲間入りをする若者たちの将来は限りなく不透明である▼このような状況から反転攻勢するには政治の流れを変え、歴代自民党政権、自・公政権がズタズタにした雇用秩序を回復させ、雇用の安定を図るしかないのだが・・・。しかし、なぜか安倍内閣の支持率は高く、先の参議院選挙でも予想を上回る大勝を許してしまった▼いつの時代でも労働運動は、社会を改革する力であってほしい。連合の奮起に期待するとともに、古き良き時代を歩んできたわれわれ自身が、「子孫に美田を残さず」とはいうものの、子や孫たちが安心して暮らせる社会にするために、もっとしっかりすべきなのだろう。そのためにも「行動する退職者連合」でなければならない。(良穂)[2016/07/19]

茶飲み話[32]

 あまりにも下劣で唾棄したくなるほどである▼舛添東京都知事をめぐる数々の問題、政治資金規正法に抵触するとかしないとかはさておいても、マスメディアの報道で知る限り、立場を利用しての公私混同が甚だしく、公人としてのあり方がまるでわかっていない。そして言行不一致、すさまじいほどの私利私欲の塊で、カネの亡者でもあるようだ。都政について語るために設けられている金曜日の定例記者会見、この頃は「定例釈明会見」さながらである▼しかし、指摘される疑惑や問題について、本人自身は何一つ具体的に語っていない。はじめは「精査してお答えします」と言い逃れていたが、新たな疑惑が次々と浮上し、追及をかわし切れないと見るや、「公正な第三者に厳しく調査していただく」と宣う。そして調査を依頼したとする二人の弁護士の名前も明かさず、「元検事」というだけ。ことばの響きで、あたかも「公正で厳しい第三者」であるかのようなイメージをアピールする狙いなのだろう。その調査とやらも「一日も早く」と言いながら、いつまでかかるのか明らかにしない▼そもそも、そんな調査など必要ないはずだ。あれやこれやの内容については、本人が一番よく分かっているのである。とにかく時間稼ぎ、逃げ切りを図ろうとしていることが見え見えである。この頃では、テレビに映し出される顔も口元が歪み、目だけがぎらぎら光って、狡猾なイタチかムジナを彷彿させる。こんな品性下劣な人物が、日本の首都・東京のトップに座っていると思うと実に情ない。一日も早く辞めてほしい▼1日から始まった都議会で、現職知事の恥ずべき行為と責任を明らかにすることができるのか、都民のみならず全国民が注視している。都議会与党で過半数を占める自民党と公明党は、徹底追及には消極的だという。前回の選挙で舛添支持をした両党にとっては、辞職されたら7月の参議院選挙に響くのと、都知事選挙で勝てる候補者がいないことがその理由だそうな▼公私混同、私利私欲に溺れる知事も酷いが、もしも党利党略でそんな知事に手加減する政党があるなら、それも同じ穴のムジナに等しい。(良穂)[2016/05/30]

茶飲み話[31]

 アベノミクスは成功なのか失敗なのか▼安倍総理が「来年4月の消費税10%への引き上げ」を再延期する方向に傾いていることに関連し、その受け止めをめぐって与野党の見解が割れている▼当然のことながら、与党の自民党と公明党は「景気は徐々に上向いてきており、アベノミクスは道半ばだが成功している」といい、民進党など野党は「実質賃金が下がって消費が低迷している。アベノミクスは失敗だ」と主張している▼自民党・公明党の主張のように、景気が徐々に上向いてきているというのは疑わしいが、「アベノミクスが成功している」というのは間違いない。もともとアベノミクスは、庶民の生活を豊かにすることをめざした政策ではなく、拡大する貧困や格差是正をめざしたものでもない。強い者をより強く、輸出大企業など儲かっている企業をさらに儲けさせるための政策である▼だから安倍総理は、「日本を企業が世界で一番活動しやすい国にする」として、聖域なき規制改革を推し進め、雇用・労働法制を緩和・改悪し、法人税の実効税率を連続して引下げるなど、産業・企業の活動に障害となるものを一つ一つ取り除いているのである▼その結果、庶民の生活、とりわけ高齢者の生活は苦しくなっても、大企業は史上最高益をあげている。まさに、アベノミクスは文句なしの大成功なのである▼ゆえに政党支持率も自民党37%で、民進党の8.2%(NHK5月)とは比較にならないほど高い。内閣支持率も50%を超えている▼社会保障制度が先細りしようが、安定した仕事に就けない若者が増え続け、結婚出来ない若者や、子供を産みたくても産めないご夫婦、終の住処さえ確保できない低所得高齢単身者がどんなに増えようが、そんなことは一向にお構いなし。アベノミクスが成功しているからこそ、安倍政権は高い支持率を得ているのである。(良穂)[2016/05/30]

茶飲み話[30]

 こんな話、茶飲み話にはそぐわないとは思いながらも、どうにも筆を執らずにはいられない▼千葉県内の建設会社とUR(都市再生機構)との間に生じたトラブルで、補償交渉の「口利き」の見返りに、建設会社側から秘書ともども多額の現金を受け取り、接待を受けていたとされる甘利明前経済財政担当大臣の「金銭授受疑惑」である。甘利氏は1月末の記者会見で「2回にわたって100万円の現金を受け取った」ことを認め、大臣を辞任した▼また、この会見では「自ら精査して事実関係を明らかにする」とも述べていたが、その後の週刊誌などの報道によれば、受け取った金額は甘利事務所の2人の秘書を含めて1200万円にも上るという。甘利氏は大臣辞任直後から「睡眠障害」とやらで「自宅療養1ヵ月」の診断書を提出して国会には姿を見せず、5カ月近く経った今なお雲隠れしている。野党の追及から逃れるための安倍政権の「甘利隠し」と指摘する声もあるが、まんざら的外れでなないだろう▼国会議員の歳費(給料)は「労働の対価ではない」との理由で、病気療養中でも服役中でも支払われる。月額130万円余の歳費に期末手当が635万円、あわせて年額2000万円ほど。このほかに「文書交通費」が月額100万円。合計して年に3200万円ほどが議員個人の口座に振り込まれる▼それとは別に、政党交付金が議員一人当たり約4000万円、立法事務費月額65万円。3人まで国費で賄われる公設秘書の給料は勤務年数によって異なるが、おおよそ一人当たり年収600万円から1000万円。なんだかんだで、議員一人当たり年間1億円ほどの税金がつぎ込まれている▼年金・医療・介護・生活保護などの給付は減額され、税金と保険料は値上げが続く。高齢者や社会的弱者は息も絶え絶えだというのに、重要政策を担当する大臣のスキャンダル。安倍総理の任命責任を含め、閣僚を辞任しただけで済む話ではない。(良穂)[2016/05/09]

茶飲み話[29]

 1980年代は、わが国の労働運動が最後の輝きを見せていた時代だったと言えるかもしれない▼連合の源流ともいえる全民労協が結成されたのが1982年。その土台作りを行ったのが、80年9月に設置された「民間先行による労働戦線統一推進会(統一推進会)」である▼「共通の認識に立つ民間労組を先行統一させる」との4団体合意(総評・同盟・中立労連・新産別)によって、それぞれのナショナルセンターを代表する6人の民間単産の会長・委員長が、翌81年6月までに13回の会合を開き、「民間先行による労働戦線統一のための基本構想」をまとめ上げた▼そして、81年12月には極左などの妨害を排除しながら「統一準備会」を結成し、翌年の全民労協の結成を経て87年には民間先行による「連合」へとつながっていく▼毎回、侃々諤々(かんかんがくがく)の激論を交わしていた「統一推進会」は、会合が終われば事務方を担当していたそれぞれの単産の書記長・事務局長などを含め、近くの小料理屋で「ちょっと一杯」が常だった▼そこで、会の使い走りをさせられていた一人の若きオルガナイザーの出番が回ってくる。12人の“親分衆”の前で労働歌をうたわされるのである▼♪踏みしめる大地に若草萌え いま生まれる希望の五月 五月の土の上で肩を組もう さぁー君と心熱く 団結の旗高く掲げ 友よ五月の道を行こう―。唄い出しはいつも決まってこの歌、「友よ五月の道を行こう」から。わが国メーデー50周年を記念し、メーデー実行委員会が公募して作った歌で、一つの詞に曲は二つ付けられている。ちなみに、♪きらめく光 青空のもと 団結の旗 高く掲げ進め~、ではじまる「国のすみずみから」も50周年記念の公募入選作である▼労働戦線の再編・統一から四半世紀。労働者の暮らしはどう変わっただろうか。もうすぐメーデーである。労使関係が成熟(?)したからなのか、それとも労働運動が変質したからなのか。いつしかメーデーも形だけの式典と化し、労働者の連帯や団結を確認しあう場ではなくなったとの声もある▼「労働運動にもう一度輝きを」と願うのは、老いたオルガナイザーの繰り言でしかないのだろうか。(良穂)[2016/04/07]

茶飲み話[28]

 日本に駐留する米軍人は、陸・海・空・海兵の4軍を合わせ約36,000人である。そのうちの約70%の軍人と家族、軍属を含む約45,000人が沖縄に駐留している。また、沖縄に駐留する軍人のほとんどは海兵隊だと言われている▼名護市の資料によると海兵隊は敗戦間もない頃から本州に駐留していたが、米軍の演習場や基地問題への反発が強まり沖縄に移駐させたと言う。当時の沖縄は1952(昭和27)年のサンフランシスコ講和条約により日本本土から切り離され、琉球政府としてアメリカ軍政下に置かれていたので、海兵隊の沖縄への移駐は容易であったと思われる。こうして海兵隊は現在の普天間飛行場に居座ることとなった▼いま沖縄県民は政府の名護市辺野古の代替え基地建設に反対し、翁長知事を中心に島ぐるみ闘争を展開している▼去る3月16日、九州ブロックの総会が那覇市内で開催された。翌17日は朝から新基地反対の座り込み行動を激励するため、建設予定地の第一ゲートへ向かった。沖縄県自治退副会長の平良亀之助さんから車内で反対闘争の現状報告を受けたが、平良さんは「新基地反対の運動は第3の琉球処分に対する闘いだ」と説明してくれた▼第1の琉球処分(注)は明治政府が琉球王国を強権的に日本の国の一部としたこと。第2はサンフランスシスコ講和条約により沖縄を日本から切り離したこと。そして100年もの耐用年数をもつ新基地建設は第3の琉球処分だと言う。更に、平良さんは「沖縄ではいま日本からの独立の声が高まりつつある」と言い、経済的にも米軍基地跡地の再開発で現在の何十倍もの収益を上げることができるとも言う。安倍政権が新基地建設を強行しようとすればするほど、沖縄県民の日本からの独立の声が強まるかも知れない▼第一ゲート前で私が挨拶した直後、座り込みテントの奥から私の名を呼びながら出てきた女性がいた。北海道国有林勤務時代の同僚の荒井(旧性米田)さんだった。荒井さんは私よりはるかに若い全林野労組女性部の幹部であつた。北海道十勝の仲間とともに新基地反対闘争の応援に来ていたのである。偶然とはいえ20余年ぶりの再会がゲート前であったことに私は大いに感激したが、平良さんは「平和運動が沖縄から北海道まで繋がっているからこそ再会できたのだ」と一言。軍事基地に立ち向かう沖縄県民の島ぐるみ闘争を共に闘う決意を新たにしたブロック総会であった。(阿部)

(注)琉球処分とは、明治政府が1872(明治5)年それまでの琉球国を廃止して琉球藩を設置。しかし次の廃藩置県に琉球藩が強く抵抗したため、1879(明治12)年政府の「処分官」が警官と兵隊を従えて首里城に乗り込み、実力で琉球藩を廃止して沖縄県を設置した。これにより約500年の歴史を持つ琉球王国は滅び、同年4月4日、日本の一部として沖縄県となった。琉球王国から琉球藩、そして沖縄県を経て日本の一部とした政府の一連の措置を琉球処分と言う。(琉球新報)

[2016/03/30]

茶飲み話[27]

 「口は禍(わざわい)の門(もん)」という。一般的には「口は災いのもと」といわれている。「善意で言ったことでも思わぬ誤解をうけて災いになることがある。まして、うっかり口にしたり、悪意による言葉にはそれ相応の反応があるものと思わなければならない」という先人の戒めである。このところ、安倍内閣の内側から、そんな諺を彷彿させる発言が相次いでいる▼丸川環境大臣は、福島原発事故による放射能除染に関する国の基準が「年間1ミリシ-ベルト」であることについて、「1ミリシーベルトには何の科学的根拠もない」と発言し、その後陳謝・撤回した。高市総務大臣は衆議院予算委員会で「放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合には、電波停止を命じる可能性もある」との恫喝発言である▼お粗末なのは島尻安伊子沖縄北方担当大臣。記者会見で「歯舞」という字が読めず秘書に助けを求める始末。また、閣僚ではないが丸山和也参議員も負けてはいない。参議院憲法調査会でアメリカのオバマ大統領を「奴隷の血を引く黒人が大統領になった」と、外交問題にも発展しかねない差別発言をやらかした。このほかにも、キリがないほどの不祥事・不適切発言のオンパレードである。これら不祥事・不適切発言は、閣僚や国会議員としての自覚や責任感が欠如し、国会での絶対多数に慢心してのことだろう▼しかし、何といっても極め付きはこの人。年金積立金運用に関する民主党議員の質問に対し、安倍総理は「株価下落で想定を下回る状況が長期に続いた場合、給付額を減額する可能性がある」と宣うた。年金積立金は国民のものである。安倍政権は株価を高値維持させるために、積立金の50%をリスク性の高い株式投資に振り向けることにした。多くの国民が運用損失による目減りを心配し反対しているが、やはり失敗しても責任は取らず「年金を減額する」と、語るに落ちたのである▼そういえば『口利き疑惑』で大臣を辞任した甘利前経済財政担当大臣。睡眠障害とやらで、1月末から国会に姿を見せていない。安倍総理の「甘利隠し」とも囁かれているが・・・。(良穂)[2016/03/14]

茶飲み話[26]

 「貧すれば鈍する」という喩え(たとえ)がある。貧乏すると日頃は利口な人でも才覚が効かなくなり、カネ欲しさ、モノ欲しさのあまり、みみっちいこともしかねないという意味である。もともとは「貧すれば貪する」で、貪る(むさぼる)という字をあてていた。近頃、そんな喩えを彷彿(ほうふつ)させるような出来事がやたらと目につく▼日本列島が疑心暗鬼に陥った「耐震偽装建築設計」の事件から10年、今度はマンション建築の基礎にかかる「くい打ち偽装」が世間を騒がし、廃棄処理したはずのトンカツやコロッケが息を吹き返し、普通の鶏肉が高級ブランドに厚化粧して店頭に並んでいる。まさに「どうせ消費者にはわかるものか」と高をくくり、信用を笠に着て金儲けに走る卑劣な行為、消費者に対する裏切り以外の何ものでもない▼しかも、そうした不正を行っていたのは、それなりに世間に名の通った企業であり、いずれもかなり以前から行なっていたようだという。事件発覚後の記者会見などで、それら経営陣から出てくる言葉は「二度と起こらないよう指導を徹底する」とかで、「トップは知らなかった」ふりをする。さらに追求が進むと、「企業としての順法精神にかけていた」とくる。これでは、いくら経営陣が居並んで慇懃無礼に頭を下げて見せても開き直りとしか映らない。不祥事を起こしてしまったときに、経営陣居並んでの頭の下げ方を指導するコンサルタントがいるという噂さえ、まんざらジョークとはいえなくなってくる▼「内を省みて賤(いや)しからず」、経営陣は消費者と従業員のために、社会の公器としての企業に誇りを持ち、まじめにやってほしいものだ。とはいうものの、安倍総理の片腕ともいわれる大臣の「口利き疑惑」や、頻発する自民党国会議員の絶対多数にあぐらをかいての傲慢さや知識・認識不足からくる不規則発言、道徳を無視した行い等々、政権末期を暗示しているようなあれやこれやを見せつけられれば、「とてもじゃないが、まじめになんかやってられないよ」と開き直りたくなるのも無理ないか。(良穂)[2016/02/19]

茶飲み話[25]

 参議院選挙まで残すところ半年余り。安倍自公政権に対抗するため、「野党の力合わせを」との声は聞こえるものの、具体化の気配すら感じられない▼古い話で恐縮だが、参議院で与野党が逆転したのは1989年。当時、野党であった公明党が、与野党逆転を実現するため、参議院全国区(現在の比例区)に社会党、民社党との統一名簿方式で臨むことを提唱していた。しかし当時の社・民両党の関係からすれば、それは実現不可能なこと▼そこで、公明党の矢野絢也書記長が話を持ち掛けたのは、連合(民間)の山田精吾事務局長であった。両氏は極秘裏に何回かの会談を重ね、連合が呼びかける形で「社会・公明・民社・社民連の4党と協議し、自民党独占区に統一候補を立て、当選後はどの政党にも属さない新会派をつくる。それを懸け橋に新しい政治の流れをつくろう」との構想を取りまとめた。当初は社会党や民社党、連合の内部からさえ数カ所で候補者を擁立できれば上々といった程度で受け止められていた▼しかし、89年2月に行われた参議院福岡選挙区の補欠選挙で社会党公認の連合候補が自民党に圧勝したことで状況は一変した。以降、7月の本番に向けて急ピッチで統一候補者づくりを行うこととなり、山田が中心となって4党の書記長、選対委員長などとの協議を繰り返し、候補者擁立が目される現地に足を運んで関係者の意見を聴くなど、丁寧に準備を進めた。その過程で山田が腐心したのは、「社会的に広く支持が得られる候補者を立てることができるかどうか」であった▼その結果、11選挙区で4党統一候補の擁立に成功、岡山は社会党が独自候補擁立を譲らなかったため、3党統一候補となった。12人のうち労働組合出身者は一人だけ。結果は、4党統一の11選挙区で完勝し、与野党逆転の一角を担うことができたのである。今度の選挙でも、野党それぞれが「違い」を強調するあまり、大きな目標を見失わないでほしいのだが・・・。(良穂)[2016/01/12]

茶飲み話[24]

 ▼昔々、獣族と鳥族が戦争をしていました。蝙蝠(こうもり)は、獣族が優勢になると「私は全身に毛が生えているので獣の仲間だ]といい、そちらに味方します。鳥族が優勢になると、今度は「私は翼があるので、鳥の仲間だ」といい、鳥族に味方します。やがて獣族と鳥族が和解し平和が訪れると、そのことが獣族にも鳥族にもバレてしまいました。こうして蝙蝠は獣族からも鳥族からも仲間外れにされてしまい、誰もいない夜しか行動することができなくなってしまいました。▼そんなイソップ物語を彷彿させる出来事が国会で演じられた。1月7日、与野党は衆議院予算委員会の平成27年度補正予算案審議に先だち、昨年末に結成された「おおさか維新の会と改革結集の会」に対する質問時間の配分をめぐって協議した。自民党などは「おおさか維新の会と改革結集の会は野党」だとして野党の時間配分の中での調整を求めた。これに対し民主党は、与野党どちらでもない「や党とよ党の中間の『ゆ党』だ」と主張し、協議は紛糾したという▼最後は、質問時間が野党に多く配分されていることから今回に限り与党が7分、野党が26分を譲ることで決着した。おおさか維新の会、改革結集の会は「自分たちは野党だ」と主張し、今後は民主党の質問時間を減らして融通するよう求めていくという▼これまでも、大阪を中心とする維新の会は労働組合を極端に敵視し、不当労働行為を平然と犯すなどの暴挙を繰り返してきた。また、自民党と同調し憲法改正を主張してはばからない。しかし夏の参議院選挙を思えば、数を頼んでの強権・横暴の限りを尽くしている安倍政権ベッタリでは不利だと判断したのだろう。与党になったり野党になったりの蝙蝠のような動きに、『ゆ党』とは、まさに言い得て妙である。(良穂)[2016/01/08]

茶飲み話[24]

 いささか旧聞に属するが、11月3日は「文化の日」▼1946年11月3日に「平和と文化」を基調とする日本国憲法が公布されたことから、48年に「国民の祝日に関する法律」によって「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日として祝日と定められた▼とはいうものの、この日は戦前から「明治節(その前は天長節)」として国民の祝日になっていた。それは、11月3日が明治天皇の誕生日であったことから、その聖徳を敬い、国民の心に深く刻み、長く称えようとの趣旨で1927年(昭和2年)に制定された▼「文化の日」は、それとは無関係に定められたといわれているが、「明治節に憲法公布の日をあわせた」との説もある。それについて、小説家や劇作家として著名な参議院議員・山本有三(本名は勇造)は回想録で、「憲法発布は11月1日の予定であったが、施行日がメーデーと重なるため11月3日に変更された」と記し、(日本政府は)11月3日を憲法記念日にしたいと強く主張したが、GHQが11月3日は絶対にだめだとして譲らず、「憲法記念日という呼称以外ならOK」ということになったと記している▼日本国憲法の基本は「平和主義・国民主権・基本的人権」であることは改めていうまでもない。しかし、その憲法の真柱がいま、大きく揺らいでいる。それも憲法改正を目ろむ安倍総理の思惑通り、筋書き通りなのだろうか。なぜならば、2012年に公表された自民党の憲法改正草案。第9条に「国防軍の保持」を明記し、衆・参両院議員の3分の2以上としている96条の憲法改正発議要件を過半数に緩めている▼加えて「表現の自由」を保障した21条では、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは認められない」としている。つまり、時の権力者の判断次第で表現の自由はたちまち否定されかねないのである。このような安倍総理の一連の政治手法によってもたらされる日本の進路に、限りない不安と不気味さを禁じ得ない。(良穂)[2015/11/27]

茶飲み話[23]

 東京新聞夕刊のコラム「紙つぶて」は、連合の神津事務局長が毎週金曜日に連載しているものです。
9月11日のコラムの中で退職者連合についてふれられたものを掲載しました。
(コラムは、12月までです。)[2015/10/01]

kamitsubute

茶飲み話[22]

 ♪モンテンルパの夜は更けて/つのる思いにやるせない/遠い故郷しのびつつ/涙に曇る月影に/やさしい母の夢を見る―。渡辺はま子と宇都美清が歌って大ヒットさせた「モンテンルパの夜は更けて」という歌である。▼1952年、フィリッピン・モンテンルパのニュービリビット刑務所に多数の元日本兵が収監されていた。B・C級戦犯の判決を下された元日本兵たちで、すでに死刑に処された者もあり、執行を待つばかりの者もいた。それは、終戦から7年、サンフランシスコ講和条約の締結から1年も過ぎてのことであった。▼そんな中で、元兵士たちの帰国を訴えながら教誨師(きょうかいし)として同所で活動していた真言宗僧侶・加賀尾秀忍師が、日本国内の世論喚起のためにと提案し、収容所内で作られた歌である。作詞は代田銀太郎(長野県出身)、作曲は伊藤正康(愛知県出身)の元将校で、二人ともB級戦犯として死刑の判決を受けていた。▼秀忍師からの郵便で楽譜と詞を送られた渡辺はま子は、それを持ち歌に加え、その年12月、国交正常化前のフィリッピンに苦労して渡り、収容者たちの前で歌った。そこには作者の代田、伊藤もいて、いつしか全員で涙ながらの大合唱になっていたという。♪ツバメはまたも来たけれど/恋し吾が子はいつ帰る/母のこころはひとすじに/南の空へ飛んで行く/さだめは悲し呼子鳥-。▼翌年(1953年)5月、キリノ大統領との面会にこぎつけた秀忍師は、渡辺はま子から届いたオルゴールを大統領にプレゼント。日本軍と米軍との市街戦で妻と娘を失くしているキリノ大統領は、「戦争を離れれば、こんなに優しい、悲しい歌をつくる人たちなのか。戦争が悪いのだ。愛と寛容が必要だ」として、7月17日のフィリッピン独立記念日の特赦で全員を釈放した。▼終戦から8年を経て、処刑された日本軍元兵士17柱と108名の元日本兵は1953年7月22日の朝、帰国船「白山丸」で家族が待つ横浜港に接岸し、ようやく祖国の土を踏むことができたのである。♪モンテンルパに朝が来りゃ/昇るこころの太陽を/胸に抱いて今日もまた/強く生きよう倒れまい/日本の土を踏むまでは-。安倍総理、一度この歌を聴いてみてください。そして、こんな悲劇を二度と繰り返さないようにしてください。(良穂)[2015/09/07]

茶飲み話[21]

 1945年8月15日、わが家に近所の大人達が集まり、雑音のひどいラジオ放送を深刻な面持ちで聴いていた▼私には何のことか理解できなかったが、父は「戦争をやめたと云う天皇陛下のお言葉だ」と教えてくれた。「耐え難きを耐え・・」で知られるあの「玉音放送」であった▼私は戦争に負けたとはとても信じられなかった。学校では毎日のように「君たちはお国を守るために立派な軍人になれ」と叩き込まれ、「日本は必ず勝つ」とも教えられていたからだ。また、長兄は近衛兵、次兄は予科練の通信兵、姉は陸軍病院の看護婦として3人も「軍に奉仕」していたので、父からは戦争に勝つまでは頑張れと云われ、広くて気の遠くなるような3町歩の水田にも入った▼「日本は神の国だから必ず勝つ」と信じていた戦争に負け悔しい思いもしたが、近くの飛行場を標的にしたB29の空襲がなくなり灯火管制もなくなった。安心して通学もできるようにもなったが、兄たちが帰ってくることが何よりも嬉しかった▼最初に近衛兵の長兄が東京から帰還し、姉もまもなく帰った。しかし、次兄は上海に配属された後は音信不通であった。ところが敗戦から1ヵ月ほどして突然帰還した。次兄は父の前に手をつき「戦争に負けて申し訳けない」と、涙を浮かべて頭を下げていた姿を今も記憶している。次兄は上海から本土防衛のため沖縄へ転属されたが、通信兵であったため米軍の沖縄総攻撃の直前に奄美大島へ「疎開」していたのである▼戦争はようやく終わったが食料はじめ生活物資が極端に不足し、国民の暮らしは暗くて貧しいものであった。しかし国民はこうした苦しい暮らしに耐えながら、戦争をしない平和国家として世界の信頼を回復し、荒廃した国土と経済を復興させ現在の豊かな暮らしを築いてきたのである▼敗戦から70年後の今日、安倍内閣の暴走で日本は再び戦争のできる国へ組み込まれようとしている。7月15日、衆議院安全保障特別委員会は、政府が提出した安保関連法案を民主党など野党の反対を押し切り採決を強行したのである。明らかに憲法違反の法律である。2015年7月15日は敗戦の日とともに忘れてはならない日となった▼安倍首相はアメリカの世界戦略に従属し海外で武力行使を可能にすることが国際貢献だと強弁するが、それは逆に日本国民の生命や財産の危機を呼び込むことになるのは明白である。安保関連法案の国会論争で垣間見たように、品位のない野次将軍のような安倍首相、数の驕りと劣化が進む現政権は早々に退陣してもらいたい。(私の戦争体験より:阿部)[2015/07/21]

茶飲み話[20]

 月日の経つのは早いもの。「東日本大震災」のあった2011年の退職者連合第15回定期総会で専従役員としてお世話になってから4年が過ぎた▼この7月15日の第19回総会で専従役員を辞めることにした。思えば、随分長いこと働かせてもらった▼1958年3月、千葉県館山市にある某高校を平凡な成績で卒業。同年4月に東京で、当時の電電公社に入社してから、今日まで切れ目なく、約57年間、労働運動に関わって働くことができた▼これまでに、お世話になったすべての皆様に心より感謝申し上げたい▼小生、1939年生まれの76歳。1946年、戦後初めての小学1年生。軍国教育から一変して民主教育に代わり、教える側も混乱していた▼新制中学ができたが校舎がないので、小学校の理科室とか今まで特別教室としていた教室に生徒が溢れていた記憶がある。直接戦争に関わってはいないが、敗戦後の物不足や食糧難の時代を体験している年代である▼60年安保闘争、70年安保闘争、三井三池闘争も経験している。東京オリンピックも体験している。経済の右肩上がりの時代も、バブルの時代も体験してきた▼だが、今の安倍政権のように憲法第9条を蔑ろにし、世論を無視して、この国を「戦争のできる国」にしようとする政権は初めてである▼これからの日本はどうなってしまうのか大変心配である。平和でなければ社会保障の充実などありえない。現役世代の奮起を期待したい▼小生、これからは、教養(今日用)と教育(今日行く)に心掛け、運動を継続して、健康寿命を延ばし、死ぬまで元気でいたい。謝謝。(羽山)[2015/07/06]

茶飲み話[19]

  「誰かが私を笑っている/向こうでもこっちでも/私をあざ笑っている/でもかまわないさ/私は自分の道を行く/笑っている連中もやはり/各々の道を行くだろう/よく云うじゃないか/『最後に笑うものが最もよく笑うものだ』と/でも私は/いつまでも笑わないだろう/いつまでも笑えないだろう/それでもいいのだ/ただ許されるものなら/最後に人知れず微笑みたいものだ/」。(樺美智子遺稿集「人知れず微笑まん」より)▼樺美智子さん。いまや彼女の名を記憶しているのは70歳代以降の人たちだろう。1960年6月15日、東京大学文学部の4年生だった彼女は急進的な学生運動組織の活動家として、日米安保条約改定阻止を叫んで4000人の全学連のデモ隊とともに国会に突入し、警官隊と激しく衝突が繰り返されるなかで死亡した▼マスコミ・世論は警官隊の暴走・暴行を強く非難し、家族の希望で解剖を行った医師は「眼のひどいうっ血、これは首を強くしめつけられたため。ひどいすい臓出血は上から踏みつけられたもの」と警官隊の暴行による死亡を示唆したが、結局は胸部圧迫死という曖昧な形で彼女の死は歴史のかなたに葬り去られてしまった。▼この日、全国各地で580万人の労働組合員らが決起し、彼女が亡くなったこの衝突による負傷者は重症43人を含め589人、逮捕者は182人にのぼった。彼女が事件に巻き込まれる数時間前には右翼の児玉誉士夫配下の「維新行動隊」が、女性デモ隊員らを集中的に襲い暴虐の限りを尽くしていたが、警官隊はそれを放置していたという。歌人の故土屋文明は、彼女の死を悼んで「一ついのち/億のいのちに代わるとも/涙はながる/われも親なれば」と詠んでいる▼半世紀を経たいま、労働組合は世の中の不正・理不尽とたたかう心を忘れ、若者たちの多くは政治への関心を失っている▼特定秘密保護法の強行可決、武器輸出三原則の転換、国家統制にもつながりかねないNHK人事への介入、憲法解釈を捻じ曲げてまでの集団的自衛権行使へのこだわりなどは、安倍総理が描く「美しい国、自信と誇りを持てる日本」にするための揺るぎない信念によるものなのだろうか。しかし一方でそれは、危険極まりない「権力者の信念」であり、立法府における絶対的優位による権力の暴走でもある。(良穂)[2015/06/19]

茶飲み話[18]

 主要な駅周辺で、A4版の30ページ位の雑誌を黙って掲げて、販売している人を見かけたことがあると思う。掲げている雑誌の名前は、THE BIG ISSUE「ビュグイシュー日本語版」という▼ホームレスの仕事をつくり自立を応援するもので、雑誌の販売者は、現在ホームレスか、あるいは自分の住まいを持たない人々である▼ビュグイシューは、ホームレスの人々に収入を得る機会を提供する事業として、1991年に英国ロンドンで、創設された国際的な組織である。最初、販売者は、この雑誌10冊を無料で受け取り、その売り上げ3,500円を元手に、以後は170円で仕入れ、350円で販売し、差額180円が彼らの収入となる。販売者全員が8項目からなる行動規範に同意し、顔写真つきの販売者番号の入った身分証明書を身につけて雑誌を販売している。▼2003年9月創刊以来、2014年8月末までで「ビュグイシュー日本語版」の実売数は約651万冊となり、ホームレスである販売者の人々に9億3,256万円の収入を与えている。▼私は、JRお茶の水駅聖橋口の販売員から10冊ほど購入、顔見知りなっている。彼の話によると波があるが、平均すると一日15冊位販売しているとのこと。かなり厳しいがやり甲斐があると誇らしげであった▼わが国では2015年4月1日、「生活困窮者自立支援法」が施行された。この新制度は、わが国の経済社会の構造的変化を踏まえ、生活保護手前の生活困窮者の自立を支援する仕組み。この法律において「生活困窮者」とは、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのあるものをいう▼「生活困窮者自立支援法」が施行されたが、緒についたばかりであり、ホームレスの人々がすぐに、支援を受けられるわけではない。これからも街角で販売員を見かけたら、「ビュグイシュー日本語版」350円のご支援をお願いしたい。(羽)

<参考>
ビッグイシュー行動規範
ビッグイシューの販売者は「ビッグイシュー」の販売のプロとして、雑誌販売中は行動規範を守ることについて同意しています。真面目に働いているビッグイシューの販売者の生活を守るために、ルールを守らない人から買わないようにご協力をお願いします。ビッグイシューの販売者は以下の行動規範を守ります。

  1. 割り当てられた場所で販売します。
  2. ビッグイシューIDカードを提示して販売します。
  3. ビッグイシューの販売者として働いている期間中、攻撃的または脅迫的な態度や言葉を使いません。
  4. 酒や薬物の影響を受けたまま、「ビッグイシュー」をうりません。
  5. 他の市民の邪魔や通行を妨害しません。このため、特に道路上では割り当て場所の周辺を随時移動し販売します。
  6. 街角で生活費を稼ぐほかの人々と売り場について争いません。
  7. ビッグイシューのIDカードをつけて「ビッグイシュー」の販売中に、金品などの無心をしません。
  8. どのような状況であろうと、ビッグイシューとその販売者の信頼を落とすような行為はしません。

以上8つの行動規範に反した行為をする販売者を見かけたときは、下記へお電話ください。
(大阪) 06-6344-2260
(東京) 03-6802-6073
[2015/04/03]

茶飲み話[17]

 米軍B‐29から投下された焼夷弾(しょういだん)32万発、焼失家屋27万戸、被災者100万人、死亡者10万人、これは1945年3月10日の東京大空襲の記録である▼住宅密集地を標的にした米軍の無差別爆撃は、空爆史上最多の人命を奪い東京の下町一帯を一夜にして焦土に変えた。絶え間なく投下される焼夷弾で道路という道路は炎の通り道となり、熱さで逃げ惑う人々は川に飛び込み力尽きたと云う▼日本の敗戦が濃厚だったこのころ東京は、数次にわたり米軍の空襲に見舞われたが、犠牲になったのは一般市民と子ども達である。親を失った東京の戦争孤児は3万人以上と云われ、住む家も食べるものもない実に悲惨なものだった▼東京大空襲から70年目の3月10日、JP労組東京退職者の会は「忘れてはならない東京大空襲!2015東京平和集会」を開催した。両国の横網公園内にある東京慰霊堂で献花をした後、退職者の会員とJP労組の組合員180余名による全体集会が開催された▼参加者からは猛火に怯えながら逃げ回った体験や、戦争の愚かさと平和の尊さなどの発言が相次ぎ戦後70年に相応しい集会であった▼安倍首相は過去の侵略戦争を忘れたかのように積極的平和主義を強調し、海外で武力行使を容認するための法制化を急いでいるが、武力を行使する積極的平和主義などはありえない。戦後日本の不戦の誓いは戦争で犠牲となった全ての人々の願いであったことを忘れてはならないと思う。(阿部)[2015/03/23]

茶飲み話[16]

 安倍総理は「日本を世界で最も企業が活動しやすい国にする」と巧言し、企業減税を推し進めている▼2015年度には25.5%から23.9%に引き下げ(国税・地方税の合計では34.62%から32.11%に)、その後さらに段階的に引き下げ、数年で国税・地方税合わせた法人実効税率を20%台にするという▼ちなみに、1984年には法人の実効税率は国税分のみで43.3%であったが、88年には42.0%に、3%の消費税が導入された89年には40.0%に引き下げられ、90年には37.5%、消費税が5%になった翌年の98年には34.5%%になり、99年には30.0%、そして2012年に現在の25.5%になった▼国会で審議中の2015年度一般会計予算、その歳入比率は消費税が17.8%、所得税17.1%、法人税11.4%、その他10.4%で、残りは特例公債と建設公債となっており、消費税が法人税を抜いて国税収入のトップである。これを見れば、政府・与党がどんなに「消費税は社会保障財源に充てる」と喧伝しても、その実、消費税増税が企業減税の穴埋め財源になっているのは明らかだ▼税制問題の権威者・富岡幸雄商学博士(中央大学名誉教授)は、「大儲けしている巨大企業がグローバル化し、無国籍化して税制の欠陥や抜け道を巧みに活用、節税をし、ときには地球的スケールでの課税逃れをしている」と喝破し、「巨大企業が正しく納税すれば消費税増税は必要ない」と言い切っている▼近々、心ある弁護士や消費者団体などが「公正な税制を求める市民連絡会」を立ち上げる。年金・医療・介護などの社会保障制度が揺らいでいる今、われわれも無関心ではいられない。(良穂)[2015/03/16]

茶飲み話[15]

 「カジノ賭博合法化」に向けた安倍総理を頂点とする推進派議員らの動きは尋常ではない。何としても今国会で成立させようと、議員立法より審議が優先される内閣法(閣法)での法案提出を画策しているという▼都市の国際競争力を高め、国内外のヒト・モノ・カネを呼び込むためにカジノ賭博を合法化し、経済再生の起爆剤としてアベノミクスの経済成長戦略の柱にするのだという▼しかし、賭博が価値あるものを何も生み出さないことは誰もが知っている。一獲千金を夢見てギャンブル依存症になり、まともな市民生活ができなくなる、そんな人間が増えれば増えるほど儲かるビジネス▼人を不幸にすることでカネを儲ける方法は、古くから、麻薬、売春、賭博であった。それらは、常に反社会的団体と深く結び付いてきた。どんなに美辞麗句をならべたてようと、わが国でカジノが開禁されれば、表か裏かは別にして、やがてはその道のプロである暴力団など、反社会的勢力が仕切るようになるだろう▼政治家がなすべきことは民の安寧を守ることであって、テラ銭稼ぎやそのおこぼれを漁ることではない。カジノがなければ招致出来ない国際会議や観光などは本末転倒であり、麻薬・売春・賭博に頼らない経済再生、観光産業振興を図るべきである▼古来、賭博が社会にとって害のないものであったなら、日本の法律はそれを禁じてこなかったはずだ。長い歴史の教訓から悪とし罪としてきたのである。その教訓をないがしろにして「経済再生の起爆剤」とは、欲に憑かれた愚者の妄想としか言いようがない。(良穂)[2015/03/02]

茶飲み話[14]

 いつのころからか、日常の暮らしの中で労働組合の情報に接することがほとんどなくなった。春のこの時期には新聞やテレビにちょっぴり登場するが、ふだんは何をしているのかまったく分からない▼人生の多くを労働運動に関わってきた者でさえ、こんな状態だから、会社勤めの労働者、パートや派遣労働者にとっては皆無といえよう▼連合をはじめ各級組織の運動方針には、「社会的共感の得られる運動」などの記述はあっても、具体的な運動がほとんどない。運動とは身体を動かすことであり、肉体や神経に多少の無理を加え続けることである。それによって機能維持も回復も可能になるのである。▼いつ頃だったか、「あなたの職場に労働組合が効く!」という車内広告を目にしたことがある。栄養ドリンクに模したイラストで、〝効能〟には、有給休暇がとりやすくなる\職場の風通しがよくなる\残業代が払われるようになる\男女の処遇の格差がなくなる\会社で健康診断を受ける機会ができる\正社員への道が広がる\とあった▼連合の組織化キャンペーンであったが、労働運動・労働組合の体力低下を防ぐ妙薬はない。各級リーダーが内にこもらず、感性と決断をもって運動に挑戦して行くことこそ特効薬である。(良穂)[2015/02/09]

茶飲み話[13]

 今年は羊年▼「羊頭狗肉」とは、羊の頭を看板にして狗肉(犬の肉)を売ること。見かけが立派で実質がこれに伴わないこと(広辞苑)▼「通販生活」という、カタログハウス社が年に3回発行している,通販商品のカタログ雑誌をご存じだろうか?掲載されている商品も面白いが、何より関心があるのは特集記事▼ペシャワール会代表の中村哲さんが最近の日本について、巻頭言に寄稿している。勝手に引用させてもらう。▼戦争の実態を知らない指導者たちが、勇ましく吠え、心ないものが排外的な憎悪を煽る。「経済成長」が信仰まで高められ、そのためなら何でもする。武器を売り、原発を復活し、いつでも戦ができるよう準備するのだという。それが愛国的で積極的な平和だとすれば、これを「羊頭狗肉」という。アフガニスタンへの軍事介入そのものが、欧米諸国による「集団的自衛権」の行使そのものであり、惨憺たる結果をわれわれはみてきた。危機が身近に、祖国が遠くなってきた。実のない世界である▼明快な指摘に感動。読者諸兄姉の感想如何に。(羽)
註・ペシャワール会は1983年9月中村医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で結成された国際NGO(NPO)団体。アフガニスタンの灌漑用の井戸13本、飲料用の井戸1600本掘削。「緑の大地計画」を進めている。[2015/02/03]

茶飲み話[12]

 読書が好きだ。特に電車の中で読むのが唯一の楽しみ▼昨年読んだ本が40冊余り▼そのなかでベストスリーを選ぶと、「沈黙の人」小池真理子著書、「望郷」森瑤子著書、「自分の中で考える」外山滋比古著書だ▼本の内容までは触れないが「沈黙の人」は小池真理子さんの自父をモデルにしたもの▼「望郷」は今NHKの朝ドラ「マッサン」のニッカウヰスキー創業者、竹鶴正孝とその妻リタの生涯の物語だ▼英文学者外山滋比古さんの本はこの他にも「思考の整理学」など愛読している。91歳になられるが、今もお元気でいろいろな散歩を楽しんでいる。例えば頭の散歩と称して朝、目が覚めてもすぐに起きないで寝床の中で30分くらい何か楽しいこと、面白いことはないか――あれこれ空想して「頭を散歩させる」そうだ▼若い人たちの活字離れが進んでいるが、本を読んでいると夢心地の気分にもなり、読み終えた時は読み始めた時と少し違う場所に立った気持ちになる。(那)[2015/01/15]

茶飲み話[11]

 すべて水に流す─ケンカを収める庶民の知恵であり、日本人の寛容さのひとつである▼今、マスコミでは1964年の東京オリンピック開催や新幹線開業から“50年”でにぎわっている。だがもうひとつの50年もある▼1964年12月7日、アメリカ合衆国空軍大将のカーチス・ルメイ氏に日本政府が勲一等旭日大綬章を贈った日だ。日本の航空自衛隊の育成に功績があったからという。航空自衛隊入間基地で浦茂航空幕僚長から本人に手渡された▼ルメイ氏は、太平洋戦争末期、東京大空襲など日本焦土化作戦や広島・長崎への原爆投下を指揮した人物。ベトナム戦争では「石器時代に戻してやる」と豪語し、北爆を推進したことでも知られる▼多くの市民を無差別に殺戮することは、人道に反する罪であり、国際法違反である▼国民の批判に対し、当時の佐藤栄作首相は「過去は過去。功績に報いる」と叙勲の理由を語り、小泉純也防衛庁長官も「功績と戦争当時の事情は別」と水に流してしまった。本来、勲一等旭日大綬章や文化勲章の“親授”は、天皇が直接手渡すのが通例だ。昭和天皇にどのような思いがあったのか、知る由もない▼来年で戦後70年。今なお多くの方が原爆症や戦争の惨禍が残した傷に苦しめられている。水に流してはいけない歴史だ。(道)[2014/11/07]

茶飲み話[10]

 原爆体験を描いた漫画「はだしのゲン」の作者中沢敬治さんは、小学1年のとき広島で被爆した▼小学校のコンクリート塀のそばで奇跡的に助かったが、お姉さんは倒壊した自宅で即死、お父さんと弟さんも倒壊した自宅の下敷きになり、お父さんは「この柱をどかしてくれ」と助けを求め、弟さんは「熱いよ、助けて!」と叫びながら周囲から迫った炎の中で二人とも焼死したと云う▼なんと悲惨なことか▼その惨さが目に浮かび怒りがこみ上げてくる▼これは郵政退協(現・JP労組退職者の会)の広島平和集会で語った中沢さんの原爆体験である▼中沢さんは73歳で亡くなられたが、その後3ヶ月ほどして書店から「はだしのゲン」全10巻が届いた▼これを見た小学生の孫に「それ学校で見ているよ」と云われ何となくほっとした▼松江市教委が小中学校に「はだしのゲン」を生徒に貸さないよう要請し問題になっていた時期である▼松江市教委はその後これを撤回したが、子供たちにはこの漫画を読み継ぎ戦争の悲惨さを知ってほしい。(阿部)[2014/11/04]

茶飲み話[9]

 自民・維新・生活の党など超党派の議員連盟による「統合型リゾート(IR)推進法案」が、今臨時国会の焦点の一つになっている▼一般にはわかりにくい糖衣錠にしているが、実態は「カジノ賭博合法化法案」であり、臨時国会では骨格だけを成立させ、詳細な制度設計は政府に任せ、1年以内に法整備を図るという▼安倍総理はこれを「経済対策の目玉」と位置付け喧伝している。しかし厚労省研究班の推計によれば、パチンコなどを含めたギャンブル依存症の疑いのある人は全国で536万人にも上り、成人男性では8・7%を占めている。▼カジノ解禁となれば、さらに依存症に陥る人が増え、多重債務や家庭崩壊、資金欲しさに犯罪に走ったりするケースも増えるだろう。闇支配が横行することも懸念されるし、青少年の健全育成にも悪影響を及ぼす▼何とも「筋の悪い経済対策」である。比較的時間を持て余し気味の高齢者が乏しい年金を巻き上げられ、地獄の苦しみに落ち込むようなカジノ解禁など絶対に許してはなるまい。[2014/10/21]

茶飲み話[8]

 一部の産業・業種では人手不足が深刻で、操業に支障をきたしているという▼ここ十数年来、雇用・労働法制を改悪し、将来に繋がらない雇用形態が多くなってしまったことのツケが回ってきたというべきか。このままでは、少子化にかかわらず安定した仕事に就けない若者はまだまだ増え続けるだろう▼雇用が安定しない、賃金が上がらない、だから先の見通しが立たない。そんなこんなで結婚したくてもできない若者、子供を産みたくても産めないご夫婦、終の棲家さえ確保できない低所得単身高齢者が増え続けている。わが国は世界一の長寿国だなどと威張ってみても、親の長寿さえ素直に喜べない、そんな悲しい国になりつつある▼働き続けて一つの社会的役割を果たした高齢者の生きる姿、それは人間としての尊厳の問題である。国がなすべきことは、ズタズタにしてしまった雇用秩序を回復し、誰もが生き生きと安心して老年期を迎えることのできる国づくりなのだが・・。[2014/09/20]

茶飲み話[7]

 2014年8月20日(水)未明、広島県の北部に平年の8月1カ月分の降雨量を上回る217.5ミリを超える雨が、僅か3時間で降ったという▼最初の救助要請は午前3時21分。広島市安佐南区で「男の子2人が生き埋めになった」との通報だった。その後も要請が相次いだ▼要請は安佐南区と安佐北区を中心に48カ所にのぼり、救助を求めた人は計71人にのぼった。死者39人、不明7人と、新聞が報じている▼亡くなられた方々と被害に遭われた皆さんに心よりお悔やみとお見舞いを申し上げたい。合掌▼2011年3月11日の「東日本大震災」から僅か3年5カ月でこの大災害。福島第一原発の事故現場では、安倍総理が世界に公約した、高度に汚染された水のブロックが未だ終わっていない▼そればかりか、地下水を遮断する凍土壁の工事は、3200億円の税金を投入して行われているが、完成のめどが立っていない▼この国では、「天災は忘れなくともやってくる」今日この頃である▼各位、ご自愛を。[2014/08/21]

茶飲み話[6]

 1998年「私たちは微力だが無力ではない」と核兵器の廃絶を訴え長崎の高校生平和大使が誕生した▼この年インドとパキスタンが核実験を強行したことに危機感を募らせた平和団体が、未来を担う「高校生平和大使」を設立し国連へ派遣することにした▼爾来、高校生平和大使は毎年国連を訪問し、1万人の署名を提出のうえ核兵器廃絶と世界平和を訴えている。帰国後は各地で報告集会も開催している▼私が高校生平和大使と出合ったのは、7・8年前の郵政退協(現JP労組退職者の会)の長崎平和集会である▼女子高校生達の報告を聞き、郵政退協のかつての闘士も私も大いに感動し皆でカンパを行ったが、その後私は毎年ささやかなカンパを送っている。こうした支援活動は全国に広まり北海道退連は全組織的に取りくんでいる▼先般、長崎県退連の集会でこの話をしたところ女性会員から拍手を頂いた。この拍手はそのまま郵政退協と北海道退連の皆さんに届けたい。(阿部)[2014/06/30]

茶飲み話[5]

 沖縄県西表島で多くみられるマングローブは、オヒルギ・メヒルギ・ヤエヤマヒルギなどと呼ばれるヒルギ科の植物の総称だが、主に亜熱帯地方に自生する常緑樹で防風、防潮、水質浄化の役割を果たしている▼森林の少ない沖縄本島では労働組合が主体となり、本土復帰20年を記念する「ヒルギの里づくり」運動として、那覇市と豊見城市に接する漫湖に6000本のオヒルギとメヒルギを植栽した▼これには私も参加したが、地元では労働組合員のほか市民や小中学生など約1100名が参加した▼東南アジアではエビ養殖のためマングローブ林を伐採し批判されていた時だけに、マスコミも大きく取り上げ県民も高く評価していた▼数年前の沖縄県高退連の総会出席後に、黒島会長と上原林退会支部長に植栽地を案内してもらったが、私の背丈ほどに成長していた。[2014/03/13]

(ふれあい情報NO150号)

茶飲み話[4]

 日本語は、文字にすれば違いがはっきりするが、聞いただけでは全く異なる意味になる言葉が多い▼ある人がレストランで注文したステーキが冷たかったので、ボーイを呼んで「これ冷たい」と言ったら,分かりましたと料理を下げて、間もなく発砲スチールの容器に料理を「詰めて」お待たせしましたと持ってきたとのこと▼近頃、総会あいさつで、退職者にとって大切なキーワードを2つ。それは「教養」と「教育」です▼教養とは「今日用」がある。教育とは「今日行く」ところがあると読替える▼仕事から解放されて、家に引きこもってばかりいると、肉体的にも精神的にもおかしくなる▼「今日用」と「今日行く」に留意してがんばろうと結んでいる。[2014/03/13]

(ふれあい情報NO149号)

茶飲み話[3]

 ヒト科・人類が、霊長類の頂点の座を、他のサル目(霊長類)に明け渡す日も近いのかもしれない。もとより文化・文明に限っていうなら、まだまだチンパンジーやオラウータンの追随を許してはいない▼がしかし、近年の世相をみれば、ヒトとしての知性に欠け、弱い者へのいたわりの心をもたず、物事の判断基準の中心には常に自分しかない「ヒトらしからぬ人」がやたらに多くなったようだ▼倫理観なき経済活動に日本人の心が麻痺させられたのだと説く者もあれば、権利だけを強調しすぎた戦後教育のせいだと力説する向きもある▼いずれにしても、似て非なるものを「もどき」という。ならば、姿かたちは完ぺきに人であっても、ヒトとしての知性や心を持たないそれらは、さしづめ「ヒトもどき」とでもいうべきだろう▼もしも日本人がいま、そんな新種のサル目への分化の途を辿っているのなら、由々しき事態である。[2014/03/13]

(ふれあい情報NO147号)

茶飲み話[2]

 最近「アメリカに潰された政治家たち」という本を読んだ。著者は、元イラン大使や外務省国際情報局長等を歴任された孫崎享氏だ▼とにかく面白い。ぜひ一読をお勧めしたい。▼60年安保のときの岸信介首相に対する評価などで認識を一変させられるくらいであった。終戦直後、日本の軍国主義への反省から親米路線を求めたことは理解できる。しかし、気が付いたらいつの間にかアメリカ従属路線が日本の政・官・財を支配していた▼アメリカは日本を守らない。アメリカの利害に関する「虎の尾」を踏んだ政治家は必ず何らかの形で政治生命を断たれるそうで、鳩山一郎、岸信介、石橋湛山、佐藤栄作、田中角栄、鳩山由紀夫、小沢一郎等▼一方、対米従属派で長期政権となったのが吉田茂、池田勇人、中曽根康弘、小泉純一郎だ▼「親米自主路線派」の政治家が欲しいが、当分無理だろうか。[2014/03/13]

(ふれあい情報NO146号)

茶飲み話[1]

 話は24年前の1988年5月、私はストックホルムで開催された国際建設林業労組連盟の環境会議に出席した▼この会議でスウェーデンの環境・エネルギー大臣B・ダール女史が「わが国は2000年までに原発を全廃する」と挨拶。チェルノブイリ原発事故2年後のことでもあり私は何となく納得して帰国▼その5年後の1993年、連合が「財・社経国」の依頼で国際エネルギー事情調査団を欧州に派遣することになり固辞していた私も参加。ベルギーで欧州の原発事情を聞いたが、スウェーデンは原発容認に変わったとのこと▼福島原発事故でドイツなどが原発ゼロに転換、日本もゼロにするには原発に代わるエネルギー(再生エネ)の推進が不可欠となる。[2014/03/13]

(ふれあい情報NO145号)

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