全国退職女性教職員の会
会長 上田 京子

 全国退職女性教職員の会は、各県の組織作りが進んだことを受けて、1968年2月に運動体としてスタートしました。「自分たちの暮らしは自らの運動で守ろう。人権・平和・平等・教育を守ろう」などの思いを共有した女性退職者たちは、体験を語る運動や戦争体験記を発刊して、学校や地域の会員に贈るなどしてきました。
 元日教組女性部長・退女教副会長だった千葉千代世さんが提案した「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを今も高く掲げて、平和運動を展開しています。

 退女教の歌は、1976年に結成から10周年を迎えるにあたって、全国会員から応募してきた中から、群馬県の岩崎千枝子さんの詩と、山崎キヌ子さんの曲が選ばれ決定しました。以来、諸行事や総会などで、「平和の道を開きつつ広く輪になる退女教」・「心豊かに美しく世界の友と手を結び未来を拓く退女教」と謳い続けています。また、「うすむらさきに咲きにおう命の花よわが花よ」で始まっている花の学名はオオアラセイトウ、日本では花大根・諸葛草等と呼ばれています。

 清楚で可憐・極寒の地でも力強く咲くこの花を、退女教では「命の花」・花言葉は「不戦の誓い」と名付けて、シンボルフラワーとし、総会会場で種子を配るなどして、全国各地で咲かせるようになりました。25周年を記念して作った退女教バッチは平和を象徴する鳩と、命の花をモチーフにしました。全国退女教や各県の旗などにもデザインされている命の花は、毎年総会会場のステージに飾られて参加者の心を和ませてくれています。

 各県退女教では、30年以上朗読会や体験を語り継ぐ活動や自作の紙芝居を上演し続けている県、戦争と平和展を開催している県、80歳を超えても8月と12月には地域の学校で戦時中の体験を語りつつ、平和の大切さを訴えている人など、たくさんの実践がありますが、今回は静岡県の実践の一例を報告します。

静岡県退女教「平和活動」の取り組み報告
「むらさき花だいこん」の話

(報 告)
静岡県退女教富士支部
杉山 恵美子

荒んだ兵士の心を癒す

 「むらさき花だいこん」のお話は、戦争で、中国に出征した兵士が、傷つき入院し、目覚めたある朝、病院の窓から外を見ると、懐かしいふるさとの山に似た風景が広がっていました。兵士は外に散歩にでました。そこには名前も知らないやさしい花が咲き乱れていました。すると、ひとりの小さな女の子が黙ってその花を一輪兵士に差出しました。兵士は驚きましたが、その子の何とも言えない優しい姿に、思わず手を出し、その花をおし頂くように手にしました。清楚で可憐なその花は少女そのもののようでした。戦争であれ荒んでいた兵士の心に、何とも言えない優しさが湧き上がってきました。兵士は日本に帰国する時、その花の種を持ち帰り、土だんごにしてあちらこちらに黙々とその種を蒔きました。「平和」への願いをこめて。

描かれた迫力ある絵に感動

 静岡県のとりくみの一環として、私たち富士支部でもこのお話をぜひ紙芝居にして多くの人に発信したいと願いました。すぐに賛同する多くのお仲間が集まり、早速制作にかかりました。作られた紙芝居は、縦55cm 横80cmという大判のボール紙で、色は4人がかりで何日もかけて塗ったそうです。大きい上に迫力ある絵が描かれているので見る人の目を釘づけにし、感動もより深まります。有難いことに大きな木の枠まで用意してくれました。

紙芝居を見つめる真剣な目、目

 この紙芝居は現場の教師と退職した元教師との交流のとき、若い教師やお母さんたちに見てもらったり、富士市で毎年開催する「戦争展」のときには一般の人や子供たちにも見てもらったりしています。また、地域の長寿会やお年寄りサロンなどでも行っています。
 今年は憲法改悪の年でもあり、富士支部退女教の総会で、読むのではなく、「語り」で紙芝居を演じてほしいとお話がありました。幸い私は暗唱で物語を語るという勉強を少しばかりした経験があったので喜んで受けさせていただきました。
 富士支部総会当日は、紙芝居を見つめるみなさんの真剣な目が痛い程で、戦争の惨さ、平和を育てる大切さが伝えられたのではと有難く思いました。それと同時に、心を込めて紙芝居を作ってくれた多くの人たちの思いも大切に活用していきたいと思いました。
 富士地区退職者連合にも「富士地区の退連総会で、平和への思いを込めた紙芝居を発表させてほしい」旨を申し入れ、紙芝居の発表が実現しました。多くの男性たちも、みなさん熱心な面持ちで見てくださり、見てからの感想にも深いものがあり感激しました。「やっぱりあの戦争はひどかったよ」と言った人の言葉に皆さんが大きくうなずいていました。その他「絵がよく描けていたよ」「語りが立ったり座ったり動きがあって一層心に響くものがあったよ」など励みになりました。
 その後、お年寄りのサロンに3回行きましたが、戦争経験のある人たちから、空襲で恐ろしかったことや赤紙が来るとおめでとうなんて心にもないことを言ったことや、戦争の時は人間の命なんて鉄くずより軽かったなどと言うことが出て、若い人達は驚いていました。今、お年寄りの集まりでは、戦中世代と戦後世代が混ざり合っていて、この紙芝居が戦争について話す良い機会になると思いました。

事実は事実として伝えていく

 ところが、若い人たちに戦争に対する関心が薄く、教育現場も忙しさの中、戦争教材や平和について考える機会もあまりないようです。そこで、できるだけ現退一致の場を設定して、若い人たちと戦時体験を語る場を増やしていきたいと思いました。
 その他に、紙芝居をして気になることが2,3あります。その1つは、「この話は、少し中国の肩を持ちすぎじゃあない」と言ったおばあさんがいました。今、日中の関係があまり良くないので、雰囲気的にやりにくいところがあります。でも、事実は事実として伝えていかなければと思っています。
 次に、むらさき花だいこんがピースフラワーだという「言葉」の裏付けが欲しいと思うのです。読んでいけば分かることなのですが、中には首を傾げる人もいます。そこで、私は、「むらさき花だいこん」の「この花を咲かせよう。戦争で亡くなった人たちにたむけ、中国の人たちに心からおわびがしたいと思いました。」のあとに、「そして、二度と戦争など起こさないやさしい心を育てようと思いました。」と付け加えて読んでみました。
 静岡退女教でもむらさき花だいこんの種を県下へ広げようと、あらゆる機会をとらえて配布してきました。この花を全国、世界へと広げたいと願っています。
 2016年12月1日、あさひテレビ18時40分、静岡市役所で行っている「戦争展」のニュースが放映されました。日中戦争の様子を撮った写真を提供した故・村瀬守保さんが「戦争という狂気が人間を野獣に変えてしまう。戦争は絶対してはならない」と訴えていると伝えていました。「むらさき花だいこん」の心と全く同じだと心強く思いました。「人間が人間として生きるには、忘れられないことがあります。忘れてはならないことがあるのです。」こういった思いを、さらに多くの人々に、この紙芝居を通して伝えていけることを有り難いと思います。

平和への思いを込めた紙芝居に熱心な面持ちで見る参加者のみなさん。(2016年9月3日、富士市)

平和への思いを込めた紙芝居に熱心な面持ちで見る参加者のみなさん。(2016年9月3日、富士市)

ねばり強く“戦時体験を後世に語り継ぐ運動”に

静岡県退職女性教職員の会
会長 浜崎 さだ江

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 花だいこんは華やかな花ではありません。でも、種を取り、配布し、花で道行く人に語りかけ、会員から地域の人々へこの花は「ピースフラワー。いのちの花」であると言う謂れが語り継がれます。この花は花束にして、押し花にして、写真でといろいろな形で人の手に渡り、話題にすることができます。
 むらさき花だいこん・紙芝居・コーラス・県退女教作成の戦時体験記「いのちの花」等から生まれた“戦時体験を語り継ぐ運動”を現退一致で更に継続し、積極的に進めていかなくてはなりません。
 戦時体験者が減っていく中、戦時体験集「いのちの花」の活用や紙芝居「むらさき花だいこん」・「わたしのおひなさま」、青い目の人形等創作童話を活用し、後世に語り継いでいくことが重要だと考えます。また教育ボランティアを通して、地域活動やサークル活動、趣味の会等の中で、平和への願いを広めていきたいと思います。特に高齢者のみならず、若い層や子ども、保護者等に平和活動をどう広げていくかが今後の活動の大きな課題です。さらに男女共同参画の面から考えても、これらの活動が他団体との連携を今以上に大切にしていく一助になればと思います。