発足から5期15年を経過した介護保険制度は、総費用では約3倍約10兆円になり、要介護認定者数では2.7倍の588万人になるなど国民生活の巨大な制度になっていますが、様々の矛盾と問題を内包しています。

武蔵野市健康福祉部長・笹井肇氏

武蔵野市健康福祉部長・笹井肇氏

 介護保険の問題点について改めて学習するため、東京高退連は、2月12日(金)田町交通ビル会議室で、講師に武蔵野市の健康福祉部長・笹井肇氏をむかえ、『社会保障制度と介護保険制度の現状と課題』と題して全体学習会を行いました。会場は、各退職者会からの参加者120名で満杯となりました。

 笹井部長は、介護保険制度の立ち上げから携わり、その豊富な行政経験を踏まえて社会保障制度の現状について説明をされ、国の施策展開の問題点を鋭く指摘されました。武蔵野市の地域包括ケアシステムが目指すものは、「町ぐるみの支え合いの仕組み」づくりです。

 以下は、講演の要旨です。

大きく変わる社会保障制度の時代背景

 65歳以上の高齢者人口は2025年には3,657万人に。高齢化率33%になる。そして団塊の世代が75歳を超える。60代と70代では医療・介護との関係が大きく変わる。家族構成が大きく変化した。昔は3世代同居が普通だったが、いま65歳以上者がいる世帯で、高齢者単独は23.3%、夫婦のみ世帯は30.3%になっている。家庭の「介護力」が低下している。

 1965年の日本は、20歳から64歳までの9.1人が65歳以上の1人を支える『胴上げ型』社会だったが、2012年には2.4人が支える『騎馬戦型』社会になり、2050年には1.2人による『肩車型』社会が訪れる。

当面、医療と介護の費用抑制をはかる

 日本の社会保障(年金・医療・介護)給付費が100兆円を超えている。そして2025年には、年金は60.4兆円、医療は54.0兆円、介護は19.8兆円の給付と見通しされている。国家財政が破たんすると声高に叫ばれている。医療と介護の給付費「抑制」が改革の重点にされている。安倍政権になり、2013年8月に出た社会保障制度国民会議報告書に注目しなければならない。その方向性が社会保障制度それぞれに落とし込められている。

 方向性の第一は、1970年代モデルから、2025年モデルへという変化。現役世代の「雇用」や「子育て支援」、「低所得者・格差の問題」、「住まいの問題」が社会保障の大きな課題になる。

 第二は、地域づくりとしての医療・介護・福祉・子育て。各地域の事情を分析し、地域包括システムの構築。第三は、「医療から介護へ」「病院・施設から地域・在宅へ」。

 そして医療では、病院、病床が、方向性に沿って整理される。病床も区分けされて10年後1割削減される。そのため、住み慣れた地域で在宅を基本とした生活の継続を支援する「地域包括ケアシステム」が必要となる。地域には介護保険サービスだけでなく、医療保険サービス、住民主体のサービスやボランティア活動等多くの資源があるーそれを有機的に連動して提供されるシステム構築が検討される。

介護保険制度『改正』の主な内容

 そして介護保険制度は次の通り改正される。その第一は地域包括ケアシステムの構築で、全国一律の予防給付(訪問介護・通所介護)を市町村が取り組む地域支援事業に移行し多様化するというもの。これはプロのサービスをアマチュアに変えるようなものだ。さらに特別養護老人ホームの新規入所者を原則要介護3以上に限定すること。必要な人が入れないことがある。いろいろのケース、矛盾がある。第二は、費用負担の公平化。一定以上の所得のある利用者の自己負担の引き上げであり、2割負担とする所得水準が65歳以上高齢者の所得上位20%とされた。(合計所得金額160万円)これはあまりに乱暴に過ぎるのではないか。医療保険と同様に『現役並み所得に相当』にすべき。そして低所得の施設利用者の食費・居住費の「補足給付」にも資産要件が追加される。

地域包括ケアシステム 武蔵野市におけるとりくみ

 武蔵野市は2014年人口14万人、65歳以上3万人。高齢化率21.4%。介護保険政策評価分析システムによる給付分析では、武蔵野市の介護サービスは全国並びに東京都の平均を上回っている。

 武蔵野市は、2000年3月に介護保険条例とともに「高齢者福祉総合条例」を制定した。それは介護保険制度だけでは高齢者介護の一部しか担えないから。市の地域包括ケアシステムはその総合条例による施策体系を基礎としている。そして以下のような様々な取組みが進められている。

  • 市役所に基幹型地域包括支援センター、中学校区ごとに在宅介護支援センター・地域包括支援センター設置。
  • いつまでもいきいきと健康に=「不老体操」、空き家対策を兼ねて「テンミリオンハウス」、地域の足として「ムーバス」その特徴は高齢者仕様、バス停の間隔は200m、車いすで乗れる「レモンキャブ」。
  • ひとり暮らしの安心を守る=「高齢者安心コール」「高齢者なんでも電話相談」
  • 独自の認知症高齢者・家族へのサービス、脳卒中ネットワーク、など。

(東京高退連ニュースNO101号より。文責編集部)

会場を埋めた参加者は、笹井氏の講演を熱心に聴いた。(2月12日田町交通ビル)

会場を埋めた参加者は、笹井氏の講演を熱心に聴いた。(2月12日田町交通ビル)