退職者連合とは
1.労働組合と退職者が力をあわせて
社会的共感を得られる運動のためには、社会の多数を構成する高齢者・退職者とともに手を携えていくことが重要です。
このため我が国を代表する中央労働団体・連合は、1989年11月21日の連合結成大会で退職者の組織化方針を決定、これを受けて五団体(総評センター、友愛会議、中立労連、全国高退協、友愛OBクラブ)に呼び掛けて、団体間協議をスタートさせました。
2.連合の旗のもとに結成された退職者連合
1991年6月20日、連合は、第5回中央委員会で「高齢者組織結成準備委員会」を設置。さらに同年10月17日に開かれた第25回中央執行委員会で退職者組織の名称、運動方針、組織方針、規約、予算及び結成総会日時・場所、総会次第などを決めました。
こうして1991年11月20日、「日本高齢・退職者団体連合」(略称:退職者連合)は発足しました。
その後、2015年7月15日、「日本退職者連合」へ名称を変更しました。
3.退職者を取り巻く状況
わが国は今、世界に類をみない速さで少子・高齢化が進み、65歳以上の高齢者人口が37年後の2050年には全人口の約4割を占めるといわれています(国立社会保障・人口問題研究所、2013年1月推計)。
その中で人生90年時代を迎えて元気な高齢者が増えています。長年培った経験や知識、技能を生かし、「生涯現役」として「社会に役立つ仕事」をボランティア活動として取り組んでいる退職者の方がたくさんいます。
また、退職後の生活の場である地域の中で、趣味やスポーツの交流・親睦、文化的で健康的な充実した余暇活動を楽しんでいる方もたくさんいます。
4.揺らぐ社会保障制度
今、大きく社会保障制度が揺らいでいます。2013年夏に発表された「社会保障制度改革国民会議」の報告書は、その最大の原因は「少子・高齢化」にあるとしました。しかしその背景にはもうひとつ、見落としてならないことがあります。
それは、労働法制の緩和・改悪による雇用秩序の崩壊と、それによって低賃金労働者が激増していることです。むしろそのことこそが少子・高齢化を急伸させ、社会保障財政のみならず、国と地方の税収をも圧迫している最大の要因といっても過言ではありません。
人口の高齢化が進めば、年金・医療・介護などの費用がかさむのは当然です。しかし政府・与党は、雇用秩序の回復をなおざりにしたまま、各種保障給付の切り下げと、高齢者への負担増によって収支のバランスをとることに腐心しています。
このままでは、安定した仕事に就けない若者はさらに増え続け、税金や社会保険料は上がっても、それに見合うだけの賃金の上昇は見込めない。雇用が安定しない、賃金が上がらない、だから将来の見通しが立たない。そのため結婚出来ない若者や、子供を産みたくても産めない世帯、住む家さえままならない人たちが増え続けています。 その結果、行き着く先は社会に参加できない人、排除される層が構造的に再生産される社会です。これでは世界一の長寿国などと威張ってみても、多くの勤労国民にとっては、親の長寿も自分の長寿も素直に喜べません。
働くことを通して一つの大きな社会的役割を終えた退職者の姿は、人間としての尊厳にかかわる問題です。国の政策運営の誤りで今日ほど労働者が粗末に扱われ、高齢者が不安にさらされている時代はありません。
国が今なすべきことは、確かな社会保障を将来世代に伝えるために、何よりもまずズタズタにされた雇用秩序を回復し、すべての国民が安心して老年期を迎えることのできる国づくりです。
5.安心できる社会保障を求める政策・制度要求
高齢者が安心して生きいきとした生活を送るためには、年金、医療・介護などの改善、充実の取り組みが重要です。とくに年金は、高齢者世帯の平均年間所得のうち、その7割近くを公的年金が占め、61.5%の世帯が年金収入だけで生活しており、年金制度のあり方は、高齢者の暮らしに大きな影響を与えています。
また地方や地域では、医療や介護、まちづくりなど地方行政に高齢者の声を積極的に意見反映させていくことが求められています。
6.退職者連合の役割
退職者連合は、連合や連携している政党などとともに「働くことを軸とする安心社会」の実現を目指しています。高齢者が、安心・安全で持続性のある福祉社会を目指すことは当然です。退職者が集う一番の目的は、住み慣れた地域でのお互いの趣味やスポーツを通じた親睦と交流、文化的で健康的な充実した余暇活動などです。また、命のネットワークづくりや暮らしの充実活動、ボランティア活動などもあります。退職者組織では、“4つのお達者づくり”を提案しています。それは生きがいづくり、健康(寿命)づくり、仲間づくり、地域づくりです。こうした活動のベースになるのは、地域に居住する会員のみなさんの参加です。
政府や自治体に対して年金や医療・介護などの政策要求をすることにプラスして、暮らしと生きがい、支え合いのために社会参加の場をつくることは、退職者連合の社会的使命といえます。いいかえれば信頼される社会的な勢力として民主的国家が兼ね備えていなければならない社会的機能のひとつとなのです。退職者連合はこのために結成されたのです。
こうした社会貢献活動、ボランティア活動は、労福協や労金、こくみん共済 coopなど労働者自主福祉団体と連携して取り組んでいくことが重要です。これらの活動を通じて連合が取り組む「地域に根ざした顔の見える運動」の一翼をしっかりと担っていきます。退職者連合は、そのために仲間を増やし、運動の輪を広げ、連合と手を携えて取り組んで行きます。
7.現退一致、現退一貫の取り組み
退職者連合の運動を推進していく上で大事なことは、連合をはじめ各構成組織、地方連合会と退職者組織の連携です。退職者連合の結成総会では、連合との関係について「連合の運動を積極的に支持し、密接な連携と支持・協力関係の下に、自らの運動を地域社会に広く定着させる」としました。連合と退職者連合が「現退一致」で運動を取り組み、その関係をさらに発展・強化させていくことが求められています。さらに「生涯組合員」として連合組合員がリタイアした後も、継続して退職者連合会員になるよう組織強化・拡大に取り組みます。