わら細工を通じて「わらの文化」伝える

(今回のお達者さん)
大阪農水省退職者の会
佐保庚生(さほつぐお)さん

 
 農水省退職者の会の佐保庚生さん(大阪)と麻田昇さん(京都)は共に〝わら細工〟の名人。2人の作品(写真)が、「農水OBだより」2019年新年号の巻頭を飾りました。
佐保さんにインタビューしました。
 


 
Q.わら細工はいつ頃からはじめたのですか?
現役時代です。農民団体などが参加する「市民まつり」で「ぞうりづくり」コーナーの手伝いをしてからです。はじめは「わらすぐり」(下葉をとる)や「わら打ち」などの下準備をしていましたが、参加者が増えると縄づくりや「ぞうり」も教えられるようになりました。定年の数年前から始まった「食農教育」で、小学校に出前授業に出かけたこともあります。定年後は「わらぞうり教室」を開いています。

わらぞうり作りを通して「わらの文化」を教える「わらぞうり教室」。

Q.どんな思いで続けておられるのですか?
 「わぁ、できた!」と参加者の皆さんが喜んでくれると嬉しいものです。手作業にゆとりがでれば、年齢に応じて、わらがコメのできる植物であること、霧吹きで湿らせてわらを打つ理由、ヨリをかけ縄ができる原理などを伝えます。また、わらを編む(紐をつなぎ面にする)こと、履き物だけにとどまらず布・衣類などにつながっていることなど、昔の祭りや暮らしに関わる「わらの文化」をできるだけ伝えるようにしています。

Q.当会の会員でご一緒されている方がおられるとのこと。
京都の交流会で出会った麻田昇さんです。農業に関わっておられて感性が豊か。熱心に工夫をされる人で率先して講師になって頂きました。「亀」「しめ飾り」「ぞうり」などが得意で、私のよきパートナーです。
Q.カンボジアの青年にも教えたことがあるとのこと。
数年前、日本語学校研修生の青年に「わらぞうり」を教えました。彼の話ですと、「カンボジアの農家の子どもたちは、家が貧しいので裸足で遊びよく足にけがをする。カンボジアでも稲は作っているが〝わら〟は活用されていない。わらぞうりがあれば足をけがする心配がなくなる。また、わらぞうりを作って売れば少しでも農家の暮らしに役立つ」とのことでした。帰国直前だったのですが、自分の仕事の予定を変更し特訓しました。別れる時には、「わらぞうり」とともに、失敗した作りかけの縄なども一緒にザックに詰め、駅までの道をふりかっては「ありがとう~」を繰りかえし、何度も頭を下げ、喜びに満ちた顔で帰っていったことを今も鮮明に覚えています。
Q.そのほかのご趣味は。
一つは「釣り」。ぼ~っと波や海を眺め、釣れたときの感触は何ともいえません。二つに「山歩き」。近くの生駒山系の山には年に2度ほど行くようにしています。三つに「汽車の旅」。窓の外を眺めながらのあまり計画性のない旅ですが。
Q.農政に対してひと言。
農業は自然条件に制約される〝いのちの産業〟です。食料自給率向上を柱に据え、中山間地域の再生をはじめ、担い手が希望をもって続けられる農政確立を望みます。また、現役の皆さんが誇りとやりがいがもてる仕事、私たち退職者が気軽に立ち寄れる職場をと願っています。
Q.今年の抱負は?
演劇を見る時間をもちたいです。また、釣りや山歩き、旅を少しでも重ねたいですね。
Q.健康維持で気を遣っておられることは?
一日をサイクルとした生活習慣、年齢に向き合って無理をしないで暮らすことです。
 

(報告)
農水退
事務局長 花村 靖
<農水OBだより2019.1.15号)「第10回お達者だより」より転載>