(今回のお達者さん)
長野県農水省退職者の会
会長 山田金由さん

 

 月見の名所・姥捨て山伝説で有名な長野県千曲市の姨捨地区に広がる「姨捨(おばすて)の棚田」は、かつて芭蕉や一茶、葛飾北斎などが訪れ、旧国鉄時代には日本三大車窓にも選定された天下に名高い棚田です。しかしその後、荒廃。山田さんは、この「姨捨の棚田」の保全活動に携わっています。

 

Q.「姨捨(おばすて)の棚田」の保全活動に参加されているとのことですが?

 「次の世代に遺そう」という保存会の想いに共感したので参加しました。耕作放棄されていた水田を復元し、代掻き、田植え、稲刈りなどに取り組んでいます。

姨捨地区に広がる1900枚の美しい棚田

Q.棚田は傾斜地にあるので、農作業は大変では?

 畦畔の草刈りには苦労します。全国棚田サミットでも各地から同じ声を聞き
ます。

Q.保存会に参加されたきっかけは?

 現職時代、組合活動で旧知だった県職労委員長と電車で一緒になった時、この活動に誘われました。保存会の想いと全農林での農業再建運動の経験が重なり、その実践活動の場と思って参加しました。

Q.どんな皆さんが参加されているのですか?

 活動の中心は、県の職員やOBの方です。また会社員、学校の先生、建築士、印刷業など多彩で、県外在住の方を含め30人ほどが参加しています。
 田植え、稲刈りには会員の先生が在職している学校の小学生と父兄も参加します。会員のHPを見て参加される方もいます。

Q.活動を進めるには資金も必要でしょう。

 会費(年1.5万円)だけではまかないきれません。農水省の中山間地域等直接支払交付金を受けています。また優秀な事務局長の情報収集のお陰で民間企業などの環境保全支援事業に応募し、それらの助成金を活用させて頂いています。

Q.活動が評価され棚田学会賞を受賞されたとのこと。

 一緒に棚田保存に取り組む名月会、四十八枚田保存会、私たち田毎の月棚田保存同好会の3団体が、2006年に棚田学会賞を受賞しました。当保存会は〝「耕作放棄田における耕作体験活動・耕作請負」を通じて、次代に貴重な文化的景観を継承している〟と評価されました。

Q.棚田保全を進める上での課題は?

 姨捨の棚田は、現在約1900枚あります。農家の皆さんのほか7つの団体が活動をしていますが、どこも後継者確保が最大の問題です。当会も発足して25年。高齢化が悩みです。若い会員の勧誘をしているのですが、農作業がきついこともあり、その確保は大変です。

Q.地域からみて、農水省の政策についてどう感じられますか。

 最近の農業政策は、産業としての農業に重点が置かれているようですが、中山間地の多い長野県では、スケールメリットを追求することは困難です。国土保全を考えた政策も必要で、それを支えるのは小規模農家です。
 また、高齢化が進展する中で、農作業で体を動かすことが健康寿命の延伸に寄与していることに注目すべきです。長野県が長寿県になった要因に減塩運動がありますが、高齢者が自分の体力に合わせた農作業に従事していることも関係していると思います。
農水省の、現場に近い組織が縮小され、農家の皆さんの考えが農政に反映されているかどうか、気がかりです。

Q.長野県退連として政策・制度対県要求交渉が行われ、山田さんも参加されているとのこと。

 政策委員会で県内的な課題を中心に要求項目を検討します。2017年度は、①地域包括ケアシステム・介護保険、②医療制度、③安心して暮らせる居住の場の確保、④健康寿命の増進など21の課題を要請書として提出しました。県からは回答書が示され、関係部局の担当者と質疑応答を行っています。国民健康保険の県移管にともなう保険料算定基準の統一問題や高齢ドライバーの運転免許証返納を踏まえた地域公共交通の確保などの論議が行われました。

Q.ご趣味は?

 下手の横好きで、月2回のマレットゴルフや囲碁、麻雀、ゴルフなど仲間とワイワイと愉しんでいます。読書も乱読ですが、藤沢周平、佐伯泰英の時代小説が好きです。

Q.健康維持で気を遣っていることは?

 体を動かすこと。独居老人になりましたが、食事は毎日自分で作って食べることです。

 

(報告)
農水退
事務局長 花村 靖
<農水OBだより2018.11.15号)「第9回お達者だより」より転載>